性虐待・性暴力の7つの後遺症―「一次視覚野」が18%小さくなる脳の萎縮など

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暴力の被害に関連して、子ども虐待の研究をしておられる福井大学の友田明美先生の研究が取り上げられていました。

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ニュースでは、子ども時代に親族や見知らぬ人から性暴力を受けた人たちの実体験をもとに、さまざまな後遺症の存在が明らかにされています。

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性虐待・性暴力の7つの破壊的な後遺症

性暴力・性虐待の破壊的な影響はさまざまですが、ここでは特にニュースに基づいて、7つの点にまとめてみました。

1.大人になっても残る「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)

記事によると、米国の研究では、PTSDの発症率は自然災害を体験した女性では5%程度ですが、強姦被害に遭った場合は46%にも上るそうです。

PTSDは常に神経が緊張して警戒状態にあるため、心身が過度に興奮し、休まらない、眠れないといった症状が現れます。また、フラッシュバックなどのトラウマ関連の恐怖やパニック、精神的苦痛に悩まされます。

成人してからも、両手が腫れ上がるまで部屋の壁を殴ることがあった。酒や買い物に依存したこともある。

結婚して夫のサポートを受けて症状が出る頻度は減ったが、時折、事件が脳裏をよぎり、パニックになった。

トラウマの強い影響や治療についてはこちらもご覧ください。

【NHK ETV特集まとめ】慢性的な難病の裏にある「トラウマからの解放」
NHK ETV特集「トラウマからの解放」の内容をまとめました。さまざまな難治性の病気の裏にトラウマが関係しているという内容で、治療法としてEMDRが紹介されています。

2.大量服薬「オーバードーズ」(OD)による自殺未遂

自殺目的でのオーバードーズはさまざまな精神疾患と関係していますが、虐待の後遺症となる解離性障害や境界性パーソナリティ障害でも見られるようです。

被害後も通った学校では、次第に勉強が手につかなくなった。約1年後、公園で大量服薬して自殺未遂をした。

オーバードーズとも関係する境界性パーソナリティ障害(BPD)についてはこちらをご覧ください。

見捨てられ不安に敏感な「境界性パーソナリティ障害」とは?―白と黒の世界を揺れ動く両極端な人たち
他の人を白か黒かでしか判断できなくなってしまい、グレーゾーンがわからない。最初尊敬して、どこまでもついていきたいと思うのに、ちょっとしたことで裏切られたと感じ、幻滅してしまう。そん

3.記憶が飛ぶ・現実感が失われる「解離性障害」(DD)

辛くて耐えがたい記憶を切り離して封印したり、自分の心を飛ばして痛みを感じなくしたりする心の働きを「解離」といいます。虐待やトラウマの経験者は、自分の心を守り、生き延びるための一種の適応戦略として、強い解離状態に陥ることが多いようです。

マリさんは「当時、事件の記憶が抜け落ちていた」という。思い出したのは、入院した精神科病院で治療を受けているときだった。

4.複数の人格を持つようになる「解離性同一性障害」

解離状態のうち、特に程度の重いものが、いわゆる多重人格、つまり解離性同一性障害だとされます。記憶を分割するだけでなく、複数の異なる人格がそれぞれの記憶を受け持つようになります。

マリさんも人格が二つあると感じている。「2人の私が同時に自己主張するので、頭の中がよくぐしゃぐしゃになる。感情が制御できない」。

被害のことは、家族に話せていない。後遺症は消えない。

解離性同一性障害について詳しくはこちらをご覧ください。

多重人格の原因がよくわかる7つのたとえ話と治療法―解離性同一性障害(DID)とは何か
解離性同一性障害(DID)、つまり多重人格について、さまざまな専門家の本から、原因やメカニズムについて理解が深まる七つのたとえ話と治療法についてまとめました。

5.適切な対人関係を結べない「愛着障害」(RAD)

子どものころに虐待されると、人との適度なコミュニケーションの仕方や、人と接することによる自然な安心感を学ぶことができず、だれにも心を開かなくなったり、逆にだれとでも馴れ馴れしくするようになったりします。

精神科医である久留米大医学部の大江美佐里講師ら専門家によると、幼少期に身内から性虐待に遭うと人格形成が妨害され、対人関係がうまく築けなくなる。

虐待の後遺症として現れる反応性愛着障害についてはこちらをご覧ください。

本当に脳を変えてしまう「子ども虐待という第四の発達障害」
杉山登志郎先生の本「子ども虐待という第四の発達障害」のまとめです。虐待の影響は発達障害とどう似ているのか、また独特な問題である解離とは何なのかをまとめています。

6.「健全な家族像」を思い描けない

愛着障害とも関連する点として、特に親や親族から虐待されると、安心できる家庭というイメージを持つことができなくなります。そのため、結婚したり、子どもを持ったりすることに、強い恐怖や嫌悪感を抱く場合があります。

「家族なんかいらない」。投げやりなアイさんを見て、カズコさんは思う。「せめて安心できる家庭のイメージだけでも抱けるようにしてあげたい」

そのトラウマから「健全な家族像」を描けず、結婚や出産はしないと決めて、40代まで生きてきた。

家族といることでさえ安心感を得られない対人過敏症状についてはこちらをご覧ください。

他人が怖い,信頼できない,人といると疲れるなどの理由―解離と対人過敏
人が怖い、だれにも気持ちを打ち明けられない、だれも信じられない…そう感じるのは、子どものころの「安心できる居場所の喪失」が影響しているのかもしれまらせん。「解離の構造」ほか7冊の本

7.はっきり分かる「脳の萎縮」

こうしたさまざまな後遺症は、単なる心の中の葛藤ではなく、脳の萎縮という現実の問題である、ということを示したのが、このブログで何度も繰り返し取り上げている、友田明美先生らの研究です。

福井大の友田明美教授(小児発達学)を中心とした研究によると、子どものころに性虐待を受けた女子大学生の脳は萎縮し、空間認知などをつかさどる「一次視覚野」の容積が平均して18%小さかった。

特に11歳までに性虐待を受けた人の萎縮の割合がひどかったという。注意力や視覚的な記憶力の低下などが懸念されるという。

友田教授は「残酷な体験のイメージを見ないように脳が適応したためではないか」と分析する。

友田明美先生の研究のまとめは、こちらをご覧ください。

だれも知らなかった「いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳」(2011年新版)
子どもの虐待は、近年注目を浴びるようになって来ました。しかし、虐待が脳という“器質”にいやされない傷を残すことを知っている人はどれだけいるでしょうか。友田明美先生の著書「いやされな
愛着障害の子どもの脳の2つの特徴―左脳の視覚野が減少,ADHDより線条体が働かない

子ども時代の性暴力をはじめとする虐待は、のちに慢性疲労症候群(CFS)など深刻な病気を発症するリスク要因になるというヘイム博士の研究もあります。

幼少期の虐待経験が慢性疲労症候群の原因に、米大学研究報告 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News はてなブックマーク - 幼少期の虐待経験が慢性疲労症候群の原因に、米大学研究報告 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

幼少期に性的虐待、精神的虐待、ニグレクトなど、トラウマとなるような経験をすると、成人になって慢性疲労症候群になるリスクが6倍高くなる。

米エモリー大学医学部(Emory University School of Medicine)によるこうした研究結果が、5日の医学誌「Archives of General Psychiatry」に発表された。

発達性トラウマ障害(DTD)の10の特徴―難治性で多重診断される発達障害,睡眠障害,慢性疲労,双極II型などの正体
子ども時代のトラウマは従来の発達障害よりもさらに深刻な影響を生涯にわたってもたらす…。トラウマ研究の世界的権威ヴァン・デア・コーク博士が提唱した「発達性トラウマ障害」(DTD)とい

人生を台無しにし破壊する

性暴力・性虐待は、いつ生じるとしても非常に破壊的なものですが、特に、子どものころに生じた場合、その人のその後の人生全体に破壊的な影響を及ぼすものです。

ここで挙げた「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)、「愛着障害」(RAD)、「解離性障害」(DD)、「解離性同一性障害」(DID)といった障害は、どれも、、健全な生活や人間関係を台無しにするほど、人間を根底から変えてしまうものです。

日常生活、友人関係、家庭生活、仕事など、あらゆる分野で問題を生じさせ、人生そのものを狂わせ、苦痛の多いものとしてしまいます。

しかも、これらには有効な治療法はとても少なく、薬物治療では興奮性は抑えられても、根底の問題となっている愛着や解離を治療することはできません。

トラウマ治療や愛着の再形成、多重人格の解きほぐしには、EMDRや暴露療法、自我状態療法をはじめ、さまざまな心理療法や訓練が必要であり、回復には年単位の時間を必要とします。完全には回復せず、生涯、悩まされることも少なくありません。

こうした非道な犯罪行為が無くなるとともに、今苦しんでいる人たちに対する効果的な治療法の研究が進むことを心から願っています。このブログでも、愛着障害カテゴリで、引き続き、役に立つ情報をお届けできたらと思います。

また、今回冒頭で紹介した西日本新聞の元記事には、司法制度に関することなど、このまとめに取り上げていないさまざまな情報も書かれているので、ぜひ直接お読みください。

こうした問題への薬物治療については、子ども虐待が専門の杉山登志郎先生による、下記の本の処方を参考にしてください。今年(2015年)に発刊された本です。

精神科の薬の大量処方・薬漬けで悪化しないために知っておきたい誤診例&少量処方の大切さ
杉山登志郎先生の「発達障害の薬物療法」に基づき、統合失調症・うつ病・双極性障害と誤診されやすい発達障害とトラウマ関連障害の治療と少量処方の意義についてまとめています。

 

また虐待の後遺症に対するさまざまな治療法については、友田明美先生が、こちらの著書で解説しておられます。

だれも知らなかった「いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳」(2011年新版)
子どもの虐待は、近年注目を浴びるようになって来ました。しかし、虐待が脳という“器質”にいやされない傷を残すことを知っている人はどれだけいるでしょうか。友田明美先生の著書「いやされな

 

親から受けた虐待のトラウマに対する心理的な葛藤については、ベストセラーの以下の本がお勧めです。

10種類の「毒になる親」から人生を取り戻すためにできること
スーザン・フォワードのベストセラー「毒になる親」にもとづき、子どもを精神的に虐げる、気づかれにくい10のタイプの親について書いています。また、その親の支配から逃れる方法についても簡

解離性障害や解離性同一性障害に対する理解と治療については、こちらがお勧めです。

解離性障害をもっとよく知る10のポイント―発達障害や愛着障害,空想の友だちとの関係など
解離性障害は深刻なトラウマ経験がなくても発症することがあり、ADHDやアスペルガーのような発達障害、愛着障害とも関係していると言われています。解離性障害の専門家の本から、役立つ10
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