「不器用な子どもたち」発達性協調運動障害(DCD)とは何か―NHKによる子どもの睡眠と発達医療センターの取材


「ボールをキャッチできない」
「靴の紐が結べない」
「字が汚い」
「スプーンやフォークが使えない」
「階段の上り下りが苦手」

NHKのハートネットTVのブログで、兵庫県リハビリテーション中央病院「子どもの睡眠と発達医療センター」の発達性協調運動障害(Developmental coordination disorder:DCD)、あるいはディスプラクシア(Dyspraxia)の子どもたちの取材記事が載せられていました。

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発達性協調運動障害(DCD)は注意欠如多動性障害(ADHD)や自閉スペクラトラム症(ASD)の子どもに見られることもある「不器用さ」のことで、だれもが無意識にできるはずの簡単な作業がうまくできない脳の発達障害の一種だと考えられています。

発達性協調運動障害にはどんな特徴があるのでしょうか。どんな困りごとを抱えているのでしょうか。

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不器用な子どもたち

兵庫県リハビリテーション中央病院「子どもの睡眠と発達医療センター」の小児科医である中井昭夫先生は、発達性協調運動障害の専門家として、啓発活動を続けておられるそうです。

子どもの睡眠と発達医療センター | 兵庫県立リハビリテーション中央病院 はてなブックマーク - 子どもの睡眠と発達医療センター | 兵庫県立リハビリテーション中央病院

発達性協調運動障害の子どもは、たとえば幼児期には、次のような不器用さが見られるといいます。(スライドから引用)

幼児期の問題(保育所/幼稚園のころ)

不器用さの問題について

■言葉が不明瞭で聞き取りにくい
■塗り絵で線にそってきれいに塗れない
■スプーン、コップなどがうまく使えない
■はさみがうまく使えない
■のりなどで手がべとべと
■着替えが遅い、難しい
■階段の昇り降りが下手、何となくおかしい
■うんちがうまく拭けない
■3輪車に乗るのが下手
■公園の遊具でうまく遊べない

こうした不器用さは、過保護や運動不足、練習不足が原因と思われがちですが、そうではありません。

発達性協調運動障害は子ども全体の6~10%に見られ、ADHD(注意欠如多動症)、LD(限局性学習症)の子どもの約50%に併存するそうです。

発達障害の特徴である、「空気が読めない」「落ち着きがない」といった傾向とも深く関連していて、運動療法によって、社会性の障害や学習能力が改善することもあるといいます。

どちらも脳の働きの偏りによる不器用さであるため、一概に精神的な症状、身体的な症状と分けることができるものではないということなのでしょう。

この記事で初めて知ったのですが、映画ハリー・ポッターでハリーを演じたダニエル・ラドクリフは、発達性協調運動障害で、学校時代に苦労していて、字をきれいに書いたり、ひもを結んだりするのが今も苦手なのだそうです。華麗にクィディッチをしている映画内の姿からは想像もつきませんが…。

しかし協調性が求められる学校時代に居場所がなくて苦しんだことで、個性が重視される映画の世界に飛び込むことを決め、才能を開花させたといいます。

「ハリポタ」ダニエル・ラドクリフ、運動障害で靴ひもが結べないと衝撃告白 - シネマトゥデイ はてなブックマーク - 「ハリポタ」ダニエル・ラドクリフ、運動障害で靴ひもが結べないと衝撃告白 - シネマトゥデイ

こうしたエピソードから、発達性協調運動障害などの発達障害は、環境によって短所とも長所ともなりうることがわかります。

DAMP症候群という概念

すでに述べたとおり、DCDはADHDと深いかかわりを持っています。

いま、小児科医に必要な実践臨床小児睡眠医学という本によると、Gillbergらによって、ADHDとDCDを併せ持つDAMP症候群(Deficit of Attention.Motor control and Perception)という概念が提唱されています。

スウェーデンでは、人口の約1.7%が重症DAMP症候群、つまりADHDとひどい不器用さとが併存した状態にあると見積もられているそうです。

DCDは自閉スペクトラム症(ASD)とも関連があり、日本での調査では、高機能広汎性発達障害の子どもの約40%にかなりの程度の不器用さが見られたとのことです。

前述の重症DAMP症候群の人たちもやはり、アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症の診断基準を同時に満たすと言われています。

ADHD単独群と、ADHDに加えてDCDを併存するDAMP症候群とでは、脳血流や薬の効き方に違いが見られるという報告もあるそうです。(p83)

医療現場での発達性協調運動障害(DCD)

「別に問題ないです。お母さんの心配しすぎじゃないですか?」

ある親子は、子どもの不器用さに悩んで医療機関を受診したとき、医師からこう言われました。

発達障害について詳しい医師は今でも少なく、発達性協調運動障害に理解のある医師はさらに少数です。

中井先生によると、日本の小児科医の間で発達性協調運動障害がよく知られるようになったのは、ほんの2年前、2013年の日本小児精神神経学会のメインテーマになったときだそうです。

子どもの不器用さは軽く見られていて、努力不足や怠けととらえられ、指導者の中には、叱咤激励して厳しい練習を課する人も少なくないようです。

しかし、練習不足のために不器用なわけではないので、いくら練習してもできないという悪循環に陥り、自信喪失やコンプレックス、いじめにつながることもあるといいます。

こうした無理解による悪影響は、同じ発達障害である、学習障がい、限局性学習症(LD/SLD)の置かれた状況とよく似ています。

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LDが学習面で周りに合わせられないのに対し、DCDは運動面で歩調が合わない問題だといえるでしょう。

LDの子どもが、自分の認知特性に合ったふさわしい教育を受ければ、学習面ですくすく伸びるように、DCDの子どもも、適切なリハビリテーションを受ければ、運動機能が改善します。

兵庫県立リハビリテーション中央病院では、DCDの子どもを対象にリハビリを行っているそうで、その様子が記事に書かれています。

中井先生は次のように述べています。

発達障害の子どもは“発達しない”などと思っている人もいますが、発達障害の子どもたちも、ゆっくりであったり、道筋はいろいろですが、ちゃんと発達していきます。

ひとつひとつ教えられなくても何となく自然にできるようになっていく定型発達の子どもとは違っていますが、やったことは、徐々に、確実に上達していきます。

ある日、何かが劇的に上手になることだってあります。

きちんとした評価に基づき、その子に合わせた療育や支援の方法を見つけ、一緒に取り組んであげることが大切です。

わたしの経験―ミシンで手を縫った人

じつはわたしも医師から発達性協調運動障害(DCD)だと言われています。

子どものころから今に至るまで、こぼさずに食事をすることができないと家族から言われるほど不器用で、コップに飲み物を注ぐと、なぜか必ずこぼれます。

学生時代には、ミシンで手を縫ったり、彫刻刀で手を彫ったり、折りたたみナイフで指を切断しかけたりしたので、今や刃物は触るなと言われています。

体育は、マラソンなどの持久力が求められる個人競技は得意だったのですが、チームワークや仲間との協調運動が求められるバスケットボールなどは手足の動きがこんがらがっていました。

趣味で絵を描いていますが、まっすぐ線を引くのが難しいので、あえて手書き風の手ブレが味になる(ごまかせる)スタイルの絵を描いています。

そんなわけで、発達性協調運動障害(DCD)には以前から興味があったのですが、なかなか詳しい資料を読む機会がなく、今回のNHKの記事は勉強になりました。

中井先生の次のような意見に全面的に同意します。

私たちの社会に期待されるのは、子どもに同質であることを求め、弱点の克服を強いるのではなく、それぞれの長所に目を向け適切な支援で伸ばしていくこと、多様な子どもがいることを前提とした「共生社会」を作っていくことだ

朝起きできない子どもは怠け、不器用な子どもは運動不足、勉強ができない子どもはサボり。

そんな努力と根性論がまかり通っていた時代の禍根は今でも残っています。

発達障害、整わぬ支援態勢 苦慮する学校、親は不信感:暮らし:中日新聞(CHUNICHI Web)

 二年生の時に担任の教諭に相談したら、「他にもそういう子はいます。様子を見ましょう」と取り合ってもらえなかった。

専門機関で正式にLDと判明し、学校はようやく、テスト時間の延長などの支援をしてくれるようになった。女性は「学校はこういう所なんだ」と感じたという。

 障害児のデイサービスを開設しているNPO法人「じゃんぐるじむ」(愛知県日進市)理事長の竹内由美子さん(50)は「以前より学校の理解は進んできているが、対応に不満を持つ親はいる」と話す。

個別支援を求めたら、「特別扱いはできないと言われた」などの相談が寄せられている。

一方で、近年では、子ども一人ひとりの発達の違いに配慮した教育の場も徐々に増えてきているようです。

「発達障害」受け入れ特化 通信制高校、開校へ - 大阪日日新聞

学習は明蓬館高によるインターネット授業で受け、3年間で日本の高卒資格74単位を取得。登校は週1~5日、それぞれのペースで設定する。

成績はテストではなく、絵や詩、リポートなどそれぞれが興味を持つ分野での物を“学習成果物”として絶対評価する。

…06年から児童デイサービス、4年前から放課後サービス事業を運営する真田学院長は「発達障害の言葉は広がっている」との実感はあるが、同時に「本質がかすんでいる。遅れているのは教育機関だ」と指摘する。

 「こんな教育があるということを知ってほしい。各自の特性を否定せず、小さな成功体験を積み重ねる中で、その先に見えてくるものがある」と話す。

少しずつでも子どもの多様性、人間一人一人の長所の違いが理解される世の中になってほしいと望むばかりです。

▼NHKによるDCDの記事の続編
今回参考にしたNHKによるDCDの特集記事の続編が更新されています。

楽しさを重視するスポーツ価値の意識改革 | Connect-“多様性”の現場から | ハートネットTVブログ:NHK  (2016/03/15)

発達性協調運動障害 第1回 不器用な子どもは発達障害の可能性が | Connect-“多様性”の現場から | ハートネットTVブログ:NHK  (2016/08/18)

発達性協調運動障害 第2回 身体から発達障害を解明する | Connect-“多様性”の現場から | ハートネットTVブログ:NHK  (2016/08/19)

発達性協調運動障害 第3回 運動と認知発達 | Connect-“多様性”の現場から | ハートネットTVブログ:NHK  (2016/08/22)

発達性協調運動障害 第4回 どうやって支えるのか | Connect-“多様性”の現場から | ハートネットTVブログ:NHK  (2016/08/23)

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LD・ディスレクシア / 少数派の文化と多様性