筑波大学内に、睡眠研究の新たな拠点となる世界トップクラスの施設、「国際統合睡眠医科学研究機構」(IIIS)が2015年9月29日にオープンしました。
機構長は、ナルコレプシーの原因物質であるオレキシンを発見したことで世界的に有名な柳沢正史博士です。
睡眠医科学研究棟 筑波大に完成 : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
睡眠の謎を解明するため、世界トップレベルの研究者が集結 筑波大学に新施設オープン : Aging Style(エイジングスタイル)
未踏の世界へ:眠りの正体に迫る 筑波大国際統合睡眠医科学研究機構長・柳沢正史さん - 毎日新聞
睡眠・覚醒の謎の解明に挑む (柳沢正史さん=筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長) - メディカル朝日 - アピタル(医療・健康)
IIISとは何か
「国際統合睡眠医科学研究機構」(International Institute for Integrative Sleep Medicine:IIIS)は、文部科学省が行う「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)のひとつで、世界各国の優秀な研究者を集め、睡眠の謎を解明することを目的とした研究機関です。
公式ウェブサイトによると、
■「睡眠をめぐる謎」の解明
■睡眠障害および関連疾患への新規治療法開発
■グローバル・ヘルスへの貢献
を目的としており、高齢化社会の健康増進を成し遂げたいという抱負が書かれています。
機構長の柳沢博士は、大学院生時代、血管を収縮させて高血圧を起こすたんぱく質「エンドセリン」を発見し、1998年には脳内の覚醒物質「オレキシン」も発見しました。
2010年には、トップ研究者30人に総額1000億円を配分する「最先端研究開発支援プログラム」にも選ばれました。
現在は、7000匹以上のマウスを用いて睡眠の謎の研究を進めているほか、オレキシンの代わりになる薬の開発を目指しておられます。新薬ができれば、ナルコレプシーなどの過眠症の画期的な治療薬となる可能性があります。
睡眠障害の治療に期待…神経伝達物質「オレキシン」て何? : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
オレキシンを増やせば眠気が吹き飛ぶ。だが、オレキシンの分子は大きいため、そのまま投与しても血管から脳に入らない。
国際統合睡眠医科学研究機構の長瀬博教授(68)らは15年、オレキシンと同じ働きをする小さな分子を見つけ、マウスでナルコレプシーの症状改善に成功したと発表した。
ナルコレプシーの患者の割合は1000~2000人に1人。長瀬教授は、「世界中の患者さんたちから、創薬を待ち望むメールが来た。一日も早く特効薬として世に出したい」と話している。
柳沢博士のTED
最近、別の記事で柳沢博士のTEDも紹介されていました。(記事中でメレクのオレキシン受容体拮抗薬が来年発売とされているので、去年のTED?)
■睡眠の本質はまだほとんどわかっておらずブラックボックス
■なぜ3-4時間しか寝ない動物もいれば、20時間も眠るものもいるのか
■そもそもなぜ眠りという無防備な状態が必要なのか
■オレキシンの役割の発見エピソード
■ナルコレプシーとはどんな病気か
■7000匹のマウスを使った睡眠の謎の解明
というような話が書かれているので、興味のある方はお読みください。
今後のIIISの研究や創薬に期待したいですね。
▼その後の研究成果について
ノンレム睡眠とレム睡眠の切り替え機構の解明の手がかりが得られたとのこと。
睡眠メカニズムの解明に前進:制御する2遺伝子を発見—筑波大の柳沢教授ら | nippon.com