2017年の気になる本のリスト

2017年発刊の、わたしが関心を惹かれた本の一覧です。

気になる本のリストですので、内容を確認していないものも多分に含まれます。新しい情報を見つけ次第、リストを更新・追加していきます。

昨2016年のリストはこちら。

2016年の気になる本のリスト
2016年発刊の、わたしが関心を惹かれた本の一覧です。 気になる本のリストですので、内容を確認していないものも多分に含まれます。翌2017年のリストはこちら。 2016年の

2017年の気になる本

■11/15 幼児期における空想世界に対する認識の発達
…発達心理学から幼児の空想の友だちなどを研究しておられる富田先生の本。サンタクロースとICの研究で有名な方。

大学のサイトからPDFで読めます。ひととおり拝読しましたが、幼児の空想の友だちを中心に、幅広い調査結果が載せられています。今まで読んだ本の中でも随一の情報量と深い洞察がこもっていて、さすが第一人者だと感動しました。

児童期の空想の友だちは、幼児の空想の友だちと、成人の解離性障害の別人間の間のいまだ未開拓な領域と感じていましたが、かなり具体的な論考がまとまっていて、幼児の空想の友だちとは質的に異なるものであることが説明されています。

児童期にICを持つ人は、愛着対象不在の孤独感を抱えていること、創作に親しむ傾向があること、日記の習慣(書くこと)と相関関係があること、会話が上手なことなど、わたしが考察してきたこととも重なっていて、非常に参考になりました。

幼児の空想の友だちが、病的ではない健全な現象であるどころか、かえってポジティブな捉え方がされていることには、著者の研究領域に対する愛情も感じられました。学問的でありながら、どこか心温まる論考となっています。

発達心理学方面からのICの研究を知るにはり、この一冊だけ読んでおけば事足りるレベルですが、精神医学方面からの研究にはほぼまったく触れておらず非常に浅くしか調べていないようなので、両分野の溝の部分はまだまだ研究の余地があることも再認識しました。

■10/25 トラウマと記憶: 脳・身体に刻まれた過去からの回復
…ピーター・ラヴィーン(リヴァイン)によるトラウマ治療についての新刊。記憶に焦点を当てている。

わたしに大きな転機を与えてくれたピーター・ラヴィーンの本ということで早速買って読みました。前著身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアのあとがきで、トラウマと記憶についての本を書くつもりだと書かれていたのですが、まさかこんなに早く読めるとは思わず、訳者の方に感謝しています。

まず、序文をヴァン・デア・コークが担当していて、いつもながら温かみのある巧みな文章で否が応でも期待を高めてくれます。彼によれば、ラヴィーンは、あのフェルデンクライス・メソッドの創始者モーシェ・フェルデンクライスをほうふつとさせるのだとか。

また、自律神経のポリヴェーガル理論の提唱者、ステファン・ポージェス(スティーヴン・ボージズ)も推薦の辞を寄せていて、帯にメッセージが書かれています。

本文のほうは、タイトルどおり、トラウマ記憶についての正確な説明がテーマとなっています。わたしは、ラヴィーンやヴァン・デア・コークの著書をすでに何冊も読んでいたので理解していた部分ですが、一般の人のほぼすべて、そして医師やセラピスのほとんどさえもが、完全に誤解している分野です。

まず記憶の二重性。トラウマ記憶とは、わたしたちが意識的に思い出して言葉で話せる宣言的記憶(顕在記憶)ではなく、無意識のうちに身体の反応として実行されてしまう手続き記憶(潜在記憶)です。この大前提からして、ほとんどの人は、トラウマ記憶とは前者の思い出せる記憶のことだと誤解しています。

これにはフロイトの根深い影響があります。もともとトラウマ記憶の研究の先駆者であるピエール・ジャネは、記憶の二重性を理解しており、トラウマ記憶が身体的な記憶であることも著書に書いていました。しかし影響力の大きなフロイトの声に覆い隠されてしまい、フロイトに源を発するカウンセリングや認知行動療法は、限られた効果しかないのに今なお主流とされています。

さらに、現在、持続的エクスポージャー療法(曝露療法)が日本でもトラウマ治療に用いられていますが、これは危険であり有害でさえある根拠が挙げられています。これは従来、単一の対象への恐怖症(クモ恐怖症など)には効果が確認されていますが、それをトラウマ治療に導入するのはひどく浅はかで、たいていの場合、トラウマを増強させてしますと書かれています。

曝露療法をはじめとするカタルシスを優先するトラウマ治療がまかりとおっているのは、トラウマとは除去すべき腫瘍のようなものである、といういわば外科手術的考えが浸透しているためです。記憶のシステムについて理解していれば、サバイバーの自然な回復力を引き出して、トラウマ記憶を適応的なものへと修正していく、より自然な方法のほうがよほど安全で効果的であることがわかります。

また、ちまたのトラウマ書籍では、なにかにつけて、虐待や親の愛情不足といったセンセーショナルな事例ばかり取り上げますが、この本をはじめ、ピーター・ラヴィーンとヴァン・デア・コークの各書はもっと公平に、出産時のトラブルや、医療手術など、親が最善を尽くしていても子どもの愛着が損なわれてしまう事例を載せており、平衡の取れた内容となっています。

本書でも触れられていますが、虐待や機能不全家庭が多く存在することは事実ではあれど、それを強調しすぎるなら、本来そうでない理由によってトラウマ症状を抱えている人たちに虚偽記憶を植え付けかねません。ソマティック・エクスペリエンスではトラウマ記憶の原因については過度に探らず、それはいったん脇において、身体的症状に対する気づきを手がかりにトラウマ記憶を修正していきます。

トラウマ記憶は潜在的な手続き記憶であるがゆえに、意識からは解離されていて、おおもとの原因が何であったのか、というエピソードが欠落していることが少なくありません。そんな状態で医師やセラピスト、果ては警察関係者などが誘導尋問すると、偽りのエピソードが虚偽記憶として形成されてしまいます。しかし実際はまったく別の理由でトラウマが生じていることも多いようです。

特に、最後に紹介されるラットの研究では、トラウマ記憶が世代を越えて受け継がれるという信じられないような事実が示されています。親ラットだけがトラウマを経験して症状を抱えたはずなのに、何も経験していないはずの子ラットが、五世代にもわたって同様の症状を示すという研究結果です。これは、トラウマの手続き記憶が遺伝で受け継がれていることを物語っています。

人間を対象にした研究でも、ホロコースト生存者の子どもは、自身はそれを経験していないはずなのに、親と似た反応を示すというデータがあるようです。この事例は養育など他の問題によって起こっている可能性もありますが、ラットと同様に手続き記憶が受け継がれていることを示しているのかもしれません。これはつまり、自分の身に起こっているトラウマ症状の原因は、思い出す思い出せない以前に、そもそも自分が経験したものでさえないかもしれないということです。

また最後のあたりでは、近年研究され、今や実用化に近づいている記憶消去薬のリスクが説明されています。記憶消去薬は、エピソード記憶だけ消すにしても、手続き記憶も消せるにしても、かえって重大な問題を引き起こす危険があり、短絡的な解決策でしかありません。それよりも、当人の回復力を引き出し、創造的に乗り越える手助けをするほうが、よほど安全であり、自信を取り戻させることができます。

これまでのラヴィーンの本は訳が難しめでしたが、この本は訳者の方の試行錯誤もあり非常に明快で、ボリュームも少なめなので、比較的読みやすくなっています。前述のようにほとんどの人が誤解しているテーマについての本なので、どんな立場の人も読めば必ず発見がある良書だといえます。

原因不明の身体症状に苦しむ人のための「記憶」の科学の10の考察
全身に散らばる原因不明の身体症状の謎を、記憶の科学から読み解きます

■10/14 疲れとりストレッチバレックス 1日10秒! 朝起きたらどんな重く硬い体もすっきり変わる!
…疲労研究の倉恒先生が監修しているストレッチ本

■10/12 ハイパーアクティブ:ADHDの歴史はどう動いたか
…ストラスクライド大学のマシュー・スミスによるADHDの歴史を読み解く本

■10/10 そだちの科学 29号 特集:発達障害とトラウマ (こころの科学)
…発達障害、愛着障害、トラウマの特集号

■10/5 トラウマ関連疾患心理療法ガイドブック: 事例で見る多様性と共通性
…トラウマ心理療法の事例を集めた学術書

■9/29 私の中のわたしたち――解離性同一性障害を生きのびて
…NHKでも放送されたことのあるオルガ・トゥルヒーヨさんのDIDの闘病記

■9/14 心がつながるのが怖い 愛と自己防衛
…HSPの本がベストセラーになったデンマークのセラピスト イルセ・サンの二冊目

■9/7 快の錬金術―報酬系から見た心 (脳と心のライブラリー)
…精神科医 岡野憲一郎先生による報酬系の「快-不快」に着目した論考

■8/29 動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか
…人間中心の科学から脱却し、動物の認知とは何かを見つめなおす本

■8/21 「みんいく」ハンドブック 小学校1・2・3年―すいみんのひみつ~すいみんについてしろう~「みんいく」ハンドブック 小学校4・5・6年―すいみんのひみつ~すいみんについて考えよう~「みんいく」ハンドブック 中学校―睡眠のひみつ~よい睡眠を実践しよう~
…不登校の専門家 三池輝久先生による子ども向けの睡眠について教育する本

■8/18 微生物の驚異 マイクロバイオームから多剤耐性菌まで (別冊日経サイエンス)
…日経サイエンスのマイクロバイオーム特集号

■8/15 過去をきちんと過去にする:EMDRのテクニックでトラウマから自由になる方法
…EMDRの開発者フランシーン・シャピロによる最新の解説本

■8/10 子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)
…子ども虐待の専門家の友田明美先生の新刊。マルトリートメント(不適切な養育)実態を紹介し、親子の愛着の大切さを説く。

■8/3 私の中のすべての色たち: 解離について最初に出会う本
自我状態療法の本も書いているサンドラ・ポールセンが挿絵を担当する解離についてのオールカラー絵本。

…なのですが、発売日時点ではAmazonの商品ページがエラー状態で購入できず。

その後、購入して読みました。解離した子どもたちのポジティブな側面を強調して励ましつつ、解離のさまざまな兆候に気づき、対処していけるよう「色」の比喩を用いて解離の概念を教える良書でした。

解離が学べる絵本「私の中のすべての色たち」―逆境を生き抜く勇敢で創造的な子どもたち
解離につい学べる絵本「私の中のすべての色たち」から、解離した子どもたちが勇敢で強いというるのはなぜか、解離と創造性はどうつながっているのか考えました。

■8月 精神療法 Vol.43No.4(2017) 特集愛着障害 
…愛着障害の特集号( 精神療法 第43巻第4号で目次を確認できます)

■7/28 過敏で傷つきやすい人たち (幻冬舎新書)
…愛着障害の専門家の岡田尊司先生によるHSPの本

■7/26 僕には世界がふたつある
…思春期の統合失調症など幻覚や妄想を経験する子の体験世界を描いた物語。

■7/25 NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方
…自然界に触れることが創造性にどんな影響をもたらすかについての研究

■7/25 自閉症の哲学――構想力と自閉症から見たわたしの成立
…自閉症当事者の体験世界の哲学的な分析

■7/20 アタッチメント・スタイル面接の理論と実践―家族の見立て・ケア・介入
…成人の愛着スタイル判別方法についての研究

■7/14 かくて行動経済学は生まれり
…行動経済学の基礎を作ったダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの物語

ベストセラー作家のマイケル・ルイスが、以前書いたマネーボールについての著書に寄せられた行動経済学者たちの批評をきっかけに、行動経済学の成り立ちに興味を持って書いた本でした。

スポーツ界の巨額のマネーボールについて調べていくと、おかしなバイアスによって不合理な決定をしてしまっていることがわかってきた、という出だしから、そうした直感に基づく決定の不合理さについて先進的な研究を成し遂げたダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーの物語へと続いていきます。

内容のうち、行動経済学的な側面は、カーネマンのファスト&スローとかぶっているので、あまり新鮮味はありません。けれども、この本は、カーネマンとトヴェルスキーの生い立ちや人柄といった、これまであまり語られなかった人間的側面を知るエピソードが豊富です。

話題は時系列順になっていて、二人の出会いから、幸福な共同研究と華々しい成功、成功がもたらした嫉妬心、それでも変わらなかった互いへの尊敬の念、病床のエイモスとダニエルの最後の交友の日々、そして残されたダニエルがノーベル経済学賞を受けるまでが物語として語られます。

ダニエルがエイモスの成功を妬んで、二人の研究が「離婚」してしまうあたりの話は、初めて知った部分でしたが、なにぶん、著者はベストセラー作家で、感動させるような物語作りがうまいことが気になります。

本書の中でもカーネマンが指摘しているとおり、心理学者も歴史学者も、手持ちのいくつかの証拠からもっともらしいストーリーをひねり出しているにすぎません。考え出した物語は事実とどおりとは限りません。当然ベストセラー作家もそうです。

けれども、本書はたぶん、それをよく承知した上で、あえて確信犯的に物語の形に落とし込んでいるのでしょう。たとえ脚色や後知恵バイアスが入っているにしても、そのほうが大衆に好まれるのは確かですから。

■7/11 解離――若年期における病理と治療 【新装版】
…フランク・パトナムの解離についての本の新装版

■7/6 アリエリー教授の「行動経済学」入門
…ダン・アリエリーの「お金と感情と意思決定の白熱教室のを改題・文庫化

■6/26 IRIS GRACE 小さなモネ 自閉症の少女と子猫の奇跡(仮)
…すてきな絵を描くことで一躍有名になったASDのアイリスちゃんについての本

■5/30 やってはいけない眠り方 (青春新書プレイブックス)
…睡眠の専門家の三島和夫先生の一般向け新刊。

今までの三島先生の本の中では、一番平易に書かれています。クイズ形式で睡眠の常識を学べる工夫がされているので、まったく予備知識のない人でも楽しく読めます。

噛み砕いて書かれているので、一見内容も薄いように見えがちですが、そこはさすが第一人者の本。すでに睡眠の知識がある程度ある人でも、日常のこんな場面にこの知識を生かせるのか、という発見があります。

わりと短時間で読み通せる本ですから、睡眠の基礎知識を強化しておくために、どんな人にもおすすめできる一冊です。

■5/26 自閉症のうた
…自閉スペクトラム症の当事者また作家である東田直樹さんの新作。

以前の東田直樹さんの著作を海外向けに翻訳してくれた作家デイヴィッド・ミッチェルさんと、東田直樹さんご自身の短編小説「自閉症のうた」、「旅」からなる本です。

ミッチェルさんとの書簡では、さまざまな質問に答えて、ご自身の自閉症の感覚世界を言葉にしていて、定型発達者とは異なる視点や独創的な考え方がとても興味深いです。世の中の大多数の人よりはるかに深い志向をめぐらせていることが言葉の端々から伝わってきます。

言葉を教えられることで表現力が広がる反面、「いくつかの発語と引き換えに、話せない以上の不自由さに縛られる人もいる」というくだりは、支援者にとっても考えさせられる点でしょう。(p31)

ひとつめの小説のタイトル「自閉症のうた」は、本書のタイトルにもなっています。ご自身を投影したと思われる自閉症の女の子、加奈子ちゃんの感覚世界を描きながら、肢体不自由の男の子高雄くんとのお互いに言葉を交わせない交流を生き生きとつづります。

ふたつめの「旅」は、非常に奇妙で断片的な感覚世界の描写からはじまり、謎が謎を呼ぶうちに、予想だにしない結末を迎え、読者は真実を知らされます。あまりに見事な構成でびっくりしました。

東田直樹さんは書簡のなかで、「今の僕には作家としての実力が伴っていない」などと謙遜していますがとんでもない、この二作はじゅうぶんにご自身の体験を織り交ぜて、文学へと昇華していると感じました。(p39)

■5/25 保健室 2017年6月号 NO.190
…「思春期のうつ」特集。友田先生による「子どものPTSD ストレス・トラウマ・うつ・虐待など」ほか収録

■5/22 愛着関係とメンタライジングによるトラウマ治療: 素朴で古い療法のすすめ
…愛着トラウマとPTSD・解離性障害などトラウマ障害についての最新の治験や治療についての本

■5/20 必ず眠れるとっておきの秘訣! 最新の睡眠科学が証明する~今までの睡眠本では眠れない人へ
…オレキシンの発見者であり、国際統合睡眠医科学研究所の櫻井武先生の新刊

■5/20 不眠症治療のパラダイムシフト―ライフスタイル改善と効果的な薬物療法
…睡眠研究の三島和夫先生の新刊

■5/17 自閉症の世界 多様性に満ちた内面の真実 (ブルーバックス)
…「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラーなどを受賞した自閉症についてのノンフィクション。序文で故オリヴァー・サックスが推薦しているのだとか。

(誤訳問題が指摘されていました。スティーブ・シルバーマン『自閉症の世界』の翻訳について - サイコドクターにょろり旅 )

自閉症の発見から今日にいたねまでの「歴史」を詳細にたどった興味深い本でした。過去の歴史という内容のため、最新の自閉症の考察や、具体的な対処方法を知りたい人には向いていません。

今日では自閉症は、さまざまな程度の多様性というスペクトラムをなしていて、障害ではなく個性とする見方が広まっていますが、そこに至るまでのあまりにも壮絶な経緯を知ることができます。

有名な話として、自閉症スペクトラムは、レオ・カナーとハンス・アスペルガーがほぼ同時期に別々に発見したカナー型自閉症とアスペルガー症候群を統合した概念だと説明されることが多いですが、じつはそれは作られた話であることが発覚。

レオ・カナーはハンス・アスペルガーの同僚の助けを得て自閉症についての初期の研究をしたので、両者の研究が似通っていることは当然であったこと、それなのに、名誉への欲に駆られ、自分一人の手柄であるかのように見せかけたことなどが当時の記録をもとに明るみに出されています。

またハンス・アスペルガーは、早くも自閉症はスペクトラムだと気づいていて、今日の特別支援教育のようなものをすでに提唱していたのに、レオ・カナーはそうした考えに興味がなく、自閉症を重度の子どもに限定し、特殊な事例として世に広め、さらには悪名高い冷蔵庫マザー仮説の提唱者でもあったという衝撃的な話が書かれています。

その後、自閉症の親たちの奮闘や、応用行動分析(ABA)の登場、ワクチン騒動などの紆余曲折を経て、つてにテンプル・グランディンなどの自閉症の当事者たちが自分たちのことを語りだし、ようやく始めにハンス・アスペルガーが考えていた自閉症の解釈に帰ってきたらしいことがわかりました。

内容がかなり冗長なので、じっくり読むというよりかは、概観するような読み方が向いている本ですが、あまり知られていない自閉症研究の歴史をたどるには、資料的価値の高そうな一冊でした。

自閉症研究の暗黒時代に埋もれてしまった、知られざるアスペルガーの歴史
あまり知られていない自閉症の発見者ハンス・アスペルガーの人となりや、時代を先取りした先見の明のある洞察について考え、自閉症研究の歴史を再考してみました。

■5/8 子どもの敏感さに困ったら読む本: 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方
…長沼先生のHSC(人いちばい敏感な子ども)の本

アーロン先生の「ひといちばい敏感な子」をベースに、症例を中心に組み立てられています。去年書いたうちのブログの記事とかなり引用部分がかぶっています。

ASDとHSPの感覚過敏は別物であるという理解を前提にした上で、両者の併存について論じ、さらに解離、発達性トラウマなどの話題も簡潔ながらしっかり扱われています。

残念な部分は、裏付けとなるデータや研究がほとんど参照されていないため、著者の経験に頼る部分が大きいこと。また、共感覚や幻覚などが、安易にスピリチュアルな領域と結び付けられていること。

わたしとしては、人知の及ばない超常的なものを否定はしませんが、科学的に説明し得るものを短絡的に霊的なものとみなすのは望ましい態度とは思えません。

どの話題をとっても、掘り下げが甘く、物足りなさがあります。HSPの読者は深く考えるので、もっと踏み込んだ研究を知りたいと感じるでしょう。とはいえ、一般向けの本にするためにあえて浅くしているのかもしれません。

それでも、国内の本ではあまり扱われない話題を広範に扱い、参考になる着眼点の多い良書であることは間違いありません。

HSPの人が知っておきたい右脳の役割―無意識に影響している愛着,解離,失われた記憶
HSPの子は右脳が活発、という知見にもとづき、右脳と左脳の役割や二つの記憶システム、愛着、解離など、HSPの人が知っておくと役立つ話題をまとめました。

■5/1 慢性疼痛とオピオイド依存症の患者マネジメント

■4/19 寝ても寝ても疲れがとれない人のための スッキリした朝に変わる睡眠の本
…東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身先生による睡眠の質の向上についての本

■4/15 心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで
…微生物が脳の神経系に及ぼす影響についての神経寄生生物学の研究

とにもかくにも面白すぎる本でした。なかなか突飛なタイトルに惹かれて読みましたが、内容も相当突飛。しかし、ちゃんとした科学的裏付けがあることを書いていて、巻末に参考文献や論文もしっかり載せられているので、眉唾とは思えません。

神経寄生生物学という新たな学問の分野の発見を概観しており、動物や人間は、知らず知らずのうちに微生物の生存闘争に巻き込まれ、利用されていることが、さまざまな衝撃的かつ奇天烈な事例を通して、生き生きと語られます。

自然界の捕食関係は、じつは見かけどおりのものではなく、寄生生物によってコントロールされた結果であること、人間の医学なんかよりよっぽど巧みに宿主を操っていること、人間の場合も統合失調症や自殺、交通事故にトキソプラズマが関係していそうなこと、腸内細菌によって人格まで作られていること、果ては宗教や文化の違いは、じつは寄生生物ストレスの違いで生じてきたのではないか、という説など、読めば読むほど、世の中の事象への見方が180度変わってしまいます。

特に「操作か病変か」をめぐる議論は、今までわたしたちが「病気」だと思っていたものに、じつは知られていない寄生生物の「操作」が関わっているのではないか、という天と地がひっくり返るような可能性を秘めているので、これからの医学でどう進展していくのかが楽しみな部分でした。

愛着やトラウマをめぐる物語の主役は腸内細菌かもしれないという意外すぎる話
神経寄生生物学の知見かに、愛着やトラウマの問題を腸内細菌を中心に読み直してみました。

■4/12 アスピーガールの心と体を守る性のルール
…アスペルガー女性が性被害から身を守るためのアドバイス

自身も女性のアスペルガー当事者である著者が、とても丁寧に性の知識を解説した本。

難しい表現はいっさい使わず、そんなことわかっていて当たり前、と言われて人に聞けないような初歩的な知識から、問題に直面したときのアドバイスに至るまで段階的に説明されています。

性について疎い、でも今さら人に聞くことができない、というような人には、恋愛をする前にあらかじめ読んでおくようおすすめできる本だと思います。

4/8 自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く
…自閉症の子どもは方言をしゃべらないという噂の真偽を調査した本

自閉症の子は津軽弁を話さないという奥さんの指摘をきっかけに10年にわたり調査をした結果がまとめられたユニークな本。

自閉症が方言を話さないというのは本当なのか?という調査から始まり、自閉症の人は全国的に方言を話さないという驚くべき事実が明らかになり、その理由を考察していきます。

単なる言葉の問題にとどまらず、自閉症特有の脳機能が明らかにされていく過程が読んでいてわくわくする一冊でした。

自閉症はなぜ方言ではなく共通語を話すのかーHSPの脳機能との違いを考察する
自閉症は津軽弁を話さない、という興味深い研究を通して、自閉症とHSPの脳の特性を比較してみました。

■4/7 解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (電子版)
2012年の本の電子版

宮沢賢治の創造性の源? 「解離性障害―『うしろに誰かいる』の精神病理」
「後ろに誰かいる」「現実感がない」「いつも空想している」。こうした心の働きは「解離」と呼ばれています。『解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 』という本にもとづいて、解離と創

■4/6 睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッド
…睡眠障害の第一人者アリゾナ・プレスコットバレー睡眠障害センターのロバート・ローゼンバーグによる解説。

PTSDの睡眠障害と、ADHDの睡眠障害についての部分が非常に興味深かったです。PTSDでは、睡眠時無呼吸症候群によってREM睡眠が中断し、トラウマ処理に失敗していることが多く、CPAP治療で不安や悪夢が改善するそうです。

またADHDではこのブログでも書いていたことですが、睡眠不足との区別がつきにくく、大人になってからのADHDの多くは睡眠障害の誤診だとされていました。多い睡眠障害としては睡眠時無呼吸症候群のほか、ナルコレプシー、レストレスレッグスなどだそうです。近年ではそもそも睡眠障害がADHDの兆候だとする説もあるとのこと。

興味深いことに、不眠症の疾病素質のところで、遺伝的な敏感さが挙げられていて、エレイン・アーロンの『ささいなことでもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』が推奨されています。これからの睡眠専門医には、発達障害の理解だけでなくHSPの知識も必要だと言えそうです。(p80)

■3/25 閉じこめられた僕 難病ALSが教えてくれた生きる勇気
…50歳でALSと診断された著者が眼の動きによって書いた闘病記。発売一週間後の3/31に逝去された。

ALS当事者としての、壮絶な、壮絶すぎる、しかし等身大の日常がつづられた本でした。ALSと宣告された人にしかわからない衝撃、ALS当事者でないと知ることもないだろう尊厳のかけらもない世界が生の感情とともに語られます。

たとえばかゆみの辛さ。自分では動くこともできないので、単なる虫刺されが拷問のようになる。また常に誰かが付き添っていないといけないので、家族の心労が尋常ではなく、あえて24時間他人介護を求めるようになったこと、排泄の自由も利かず尊厳を奪われること、何よりも刻一刻と身体機能が奪われていくことへの恐怖など。数ある難病の中でも想像もできないほどの熾烈な体験がこれでもかと続きます。

それでも、著者がユーモアを交えて、ひたむきに現実を乗り越えていく姿には励まされます。人が持つ強さとはこれほどのものなのかと。試練がふりかかるごとにかき乱され、絶望するのですがそれでも現実に向き合い続ける強さ。ご本人はそう言われると違和感があり、「前以外にどこを向くのだろう」とおっしゃっていますが、まさしく自分ではどうにもできない、ただ受け入れて辛抱するしか選択肢がない苦痛ほど残酷なものはないでしょう。

どんな人間であれ、いずれは解決できない、逃げるという選択肢のない状況に直面する。何かしらの病気になって、あるいは年齢とともに衰えて、苦痛を受容して希望のない未来へと進まないといけないときが来る。そんなとき、たとえほかに選択肢がないとしても、ただ前へと進んでいくときに人は何を感じ、何を受け入れるのか。そんな究極の問いの答えがつまった一冊でした。

これほど壮絶な本を読んだ今、唯一の慰めは、著者が今はもう苦しみから解き放たれていることだと言うほかありません。著者は壮絶な日々を強くしなやかに最後まで生き抜いて、もう苦しみは終わったのだと。

■3/24 コミックエッセイ 敏感過ぎる自分に困っています
…長沼先生によるHSPのコミックエッセイ

■3/15 改訂 起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応改訂 起立性調節障害の子どもの日常生活サポートブック
…起立性調節障害(OD)の第一人者田中英高先生の著書の改訂版

■3/15 情動とトラウマ: ―制御の仕組みと治療・対応―
…児童思春期~成人期におけるトラウマ治療についての解説

■3/14 ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 女性の発達障害: 女性の悩みと問題行動をサポートする本
…近年、女性のADHDやアスペルガーにスポットライトを当てている宮尾益知先生の本。

よくも悪くも、以前の著書と似た内容。しかし一冊で女性の発達障害3種をすべて網羅しているので、生きづらいけれどアスペルガーかADHDか学習障害なのか何なのかわからない、という人にとって最初に読めば自分の特性を特定しやすいと思われます。

それぞれの違いを丁寧に説明してあるので、最初にこれを読んで自分が何なのかわかったら、その後女性のADHDであれ女性のアスペルガーであれ、関連する情報を探っていけるスタート地点に使えます。

またさまざまな臨床例や具体的な対策を載せてあるので、自分と似たケースを見つけて、生活に工夫を取り入れ見るきっかけにも役立ちそうです。

■3/10 難病患者の恋愛・結婚・出産・子育て: 若年性パーキンソン病を生きる患者と家族の物語
…秋山先生がまとめた若年性パーキンソン病の人たちの実体験第二弾

■3/1 新版 よくわかる境界性パーソナリティ障害 (こころのクスリBOOKS)
…帝京大学医学部附属病院メンタルヘルス科の林直樹教授によるBPDの本

イラスト入りの大判でたいへん読みやすく、本人や家族が境界性パーソナリティ障害の特徴を把握するのにうってつけの本です。

境界性パーソナリティ障害の人がいわゆる「人格」の障害を負っているのではなく、さまざまな理由から認知が歪んでしまって、周囲を困らせるような行動を取ってしまうのだ、ということが筋道立てて説明されています。

ダイアナ元王妃やマリリン・モンロー、作家のスザンナ・ケイセンや太宰治など、境界性パーソナリティ障害と闘った著名人の例も紹介されていて、ときには深刻な結果になる反面、うまく乗り越えて繊細さを活かしていくこともできる、という生きた事例を学べます。

近年 境界性パーソナリティ障害を専門に扱う治療法として注目されている弁証法的行動療法(DBT)やメンタライゼーション療法(MBT)がしっかり紹介されているほか、リストカットへの家族の対応など詳しく説明されていて、実践的な内容に感じました。

見捨てられ不安に敏感な「境界性パーソナリティ障害」とは?―白と黒の世界を揺れ動く両極端な人たち
他の人を白か黒かでしか判断できなくなってしまい、グレーゾーンがわからない。最初尊敬して、どこまでもついていきたいと思うのに、ちょっとしたことで裏切られたと感じ、幻滅してしまう。そん

■2/28 線維筋痛症を自分で治す本
…ハートメディカル代表による中医学をベースとした線維筋痛症へのアプローチ

■2/25 ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)
…SNSの炎上などで悪い評判がネット上に刻まれ、トラウマを負った人たちの実情と、救済策を取材した本

ものすごく恐ろしくて、生生しくてショックで、しかしあまりに身近で考えさせられる本でした。最近 読んだ本の中でも特に現実味があって価値があると感じました。事例の中には、このブログで紹介した本の著者もいて、他人事とは思えません。

ごく普通にSNSをやっていただけの人が、ちょっと悪趣味なジョークを飛ばしただけで、またたく間に公開羞恥刑にされ、人生が破壊される。Google検索などの上位が埋められるので、検索されるとすぐわかって、リアル社会でも仕事がなくなる。何より罵詈雑言を浴びせられて深刻なPTSDになる。

なぜその人だったのかもよくわからず、運の悪い事故や通り魔的なものかもしれない。しかし、その公開羞恥刑に加わるのはごく普通の人たちで、SNSは同じような層が寄り合いやすいせいで、炎上が拡大しやすい、という話です。

心理学的な話題としても、フィリップ・ジンバルドーの有名すぎる「スタンフォード監獄実験」は、実は結果を読み違えている、という洞察や、なぜ炎上した女性がこれほど性暴力的な憎しみを向けられるのか、終わりのほうの「公に恥をかかせる」というのがどれほど人間を打ちのめし、再起不能にさせてしまうかといった部分はハッとさせられました。

特に恥の病理については凶悪犯罪のおおもとには、幼少期の耐えきれない恥による感情のシャットダウン(つまり解離)があり、そうしてゾンビのようになった犯罪者たちは刑務所でさらに非人道的な扱いを受ける、というこの世の地獄のような状況を垣間見ました。また現代の裁判所でリアルに公開羞恥刑のような尋問が行われていて、それによって性犯罪の被害者が自殺した例などは思わず絶句します。

あとがきによると、この本の原題は「だから君は公開羞恥刑に遭った」であり、もともとは単に「恥」というタイトルにしようかとも考えていたそうです。解離は恥と非常に関わりが深く、耐えきれない恥が感情をシャットダウンするともいえるので、意外にもこのブログと大変関わりの深い本でした。

最後は、「忘れられる権利」の必要性と、すでにそれを実行してGoogleの検索結果を操作しようとするエキスパートたちの取り組みが紹介されています。Amazonレビューで、「全ネットユーザーの必読書」と書いている方がいましたが、たしかにそうかもしれません。

「ツイッターは、かつては何気なく、深く考えずに自分の考えをつぶやくことのできる場所だった。ところが今では、常に不安を感じながら、慎重に物を言わねばならない場に変わってしまった」という言葉が印象的でした。

著者のTEDもありました。

ジョン・ロンソン: ネット炎上が起きるとき | TED Talk | TED.com

なぜ耐えがたい恥は人を生ける屍にしてしまうのか―「公開羞恥刑」と解離の深いつながり
公衆の面前で恥をかかせるという刑罰「公開羞恥刑」。現代のいじめやSNSの炎上、子ども虐待などが、いかに公開羞恥刑のようにして人を辱め、その結果、被害者の心を殺害し、解離させてしまう

■1/27 COCORA 自閉症を生きた少女 1 小学校 篇COCORA 自閉症を生きた少女 2 思春期 篇
…自閉症スペクトラム障害の著者による自伝的小説。杉山登志郎先生推薦。

■1/25 自閉症と感覚過敏―特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?
…福井大学の熊谷高幸先生による自閉症の感覚世界の考察

感想:自閉症のさまざまな症状の根本にあるのが感覚過敏である、という最近の理解を、当事者の自伝やアンケート結果からわかりやすく説明した本。

注意の切り替えの難しさ、こだわり、コミュニケーションの苦手さ、自己刺激的行動など、一見つながりがわかりにくい自閉スペクトラム症の症状が、感覚過敏というひとつのキーワードによってどう結びつくかが丁寧に説明されています。

とても読みやすくわかりやすい反面、裏づけ実験などへの言及がほとんどなく、主観に基づいているので、専門家の本というより、ネットの個人ブログの考察のような印象も。感覚過敏にまつわる様々な話題をおおまかに把握するのに良い本でした。

■1/24 親に壊された心の治し方 「育ちの傷」を癒やす方法がわかる本 (こころライブラリー)
…自らも虐待のサバイバーであり博士号も持つ著者による自尊感情回復プログラム「SEP」の本

■1/20 新装版 不安でたまらない人たちへ: やっかいで病的な癖を治す
…強迫性障害(OCDの専門家シュウォーツ教授による行動療法「四段階方式」についての本の新装版

■1/19 うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち
…自身の体験やうつ病からの脱出した人たちへの取材から書かれた、うつ病のドキュメンタリーコミック。

■1/21 解離の舞台―症状構造と治療
…解離の専門家、柴山雅俊先生による、解離の症状や自閉スペクトラム症との鑑別、治療方法などを解説した本。(出版社による目次)

感想:「解離の構造」と似ている部分も多いですが、近年の話題を取り入れて、より具体的になっているように思います。 ■解離の自己イメージと色 ■解離型自閉スペクトラム症 ■無秩序型愛着と過剰同調性、解離人格のつながり などは新しく興味深い内容でした

定型発達の解離性障害と、解離型ASDの類似点や違いについて詳しく書かれていて参考になりました。 ASDの人のICは、定型発達のICと幾分異なっていて、身につける仮面のような役割を持っていることが多い、という部分は、前にブログで考察したとおりで安心しました。

テーブルテクニック(自我状態療法)やブラインドテクニック、マインドフルネス、グラウンディングなどの技法も簡単に紹介されていて、具体的にどんな場面で役立つのか理解が深まった気がします。特に過剰同調性と色の考察が面白かったです。

「解離型自閉症スペクトラム障害」の7つの特徴―究極の少数派としての居場所のなさ
解離症状が強く出る解離型自閉症スペクトラム障害(解離型ASD)の人たちの7つの症状と、社会の少数派として生きることから来る安心できる居場所のなさという原因について書いています。