2018年の気になる本のリスト

2018年発刊の、わたしが関心を惹かれた本の一覧です。

気になる本のリストですので、内容を確認していないものも多分に含まれます。新しい情報を見つけ次第、リストを更新・追加していきます。

昨2017年のリストはこちら。

2017年の気になる本のリスト
2017年発刊の、わたしが関心を惹かれた本の一覧です。 気になる本のリストですので、内容を確認していないものも多分に含まれます。新しい情報を見つけ次第、リストを更新・追加していき

■8/21意識の川をゆく: 脳神経科医が探る「心」の起源
…まさかの故オリヴァー・サックスの新刊。亡くなる直前に書いた心や意識についてのエッセイ集らしい。

■6/28 疲労と回復の科学 (おもしろサイエンス)
…日本の最新の疲労研究についての本

■6/28 WORK DESIGN:行動経済学でジェンダー格差を克服する
…男女格差に関する無意識のバイアスに気づき克服するための行動経済学

■6/11 意識と自己
…自己の意識は身体の感覚から生まれるという理論で知られるダマシオの本

以前のダマシオの著書が文庫化されるに伴い、タイトルも改題された本です。読みやすい文庫になったとはいえ、内容は厖大で、細かい専門的解説が400ページ超にわたって続きます。興味深い内容ではあるものの、意識という掴みどころがない概念を扱っている以上、かなり難解に感じられます。

簡単にいえば、ダマシオは、意識の源は体の内部からの感覚(体性感覚)にあるという「ソマティック・マーカー仮説」を提唱しています。意識や心というと、デカルトの時代から今にいたるまで体とは別個の霊的領域の何かであるかのように思われていますが、体なしに心は存在しえないことが、具体的な実験と豊富な神経科学の知識を通して丁寧に解き明かされていきます。

とくに興味深いのは、病態失認、相貌失認、身体失認などの、意識と身体の解離現象についての部分です。これらの失認状態に陷った人たちは、自分の病気の症状を認知できなかったり、他の人の顔を見分けられなかったりしますが、生理的状態を計測すると、身体はしっかりと反応しているのに、意識のレベルでだけ認知できていないことが明らかになります。わたしたちの意識は身体から生じていますが、身体からの信号を読み取れなくなると、意識が欠けて認知が損なわれてしまう、ということです。

わたしも、専門的な知識と理解が乏しいので、この本の要旨全体を把握するには程遠いですが、今の時点ではたとえ部分的にしか把握できないとしても、自己とは何か、意識とは何か、というテーマと向き合うとき、多数の発見をもたらしてくれる洞察に満ちた本であることには間違いないでしょう。

心は脳だけでなく身体全体から作られる―神経学者ダマシオの自己意識の研究を読み解く
心は身体を土台として生まれるという神経学者アントニオ・ダマシオのソマティック・マーカー仮説について、「意識と自己」という本から整理してまとめてみました。

■6/2 細菌が人をつくる (TEDブックス)
…体内に100兆個いる細菌が、人間の真の宿主であるというマイクロバイオーム研究のTEDをもとにした本。

近年のマイクロバイオーム(体内の細菌群集)をめぐる発見を、これまで読んだどの本よりもシンプルに、しかし科学的発見に忠実に噛み砕いてくれている良書でした。マイクロバイオームについて知りたい人は、国内で粗製乱造されている腸内フローラに関する自己啓発寄りの本ではなく、まずはこの本を読むことをおすすめします。

まず、わたしたちは、細胞の比率や遺伝子の総数から見れば、一人の人間である以前にほとんどが細菌からなる一つの生態系であることが明かされます。蚊にさされやすい人とそうでない人があるのはなぜか、といった素朴な疑問から、近年、増えている自閉症、アレルギー、自己免疫疾患、うつ病などのメカニズムに至るまで、科学の進歩によってようやく見えてきた微細な生物たちの世界が手がかりを握っていることがイラストや日常的な例を通して生き生きと説明されます。

しばしば国内では、腸内フローラが引き起こしている問題は、プロバイオティクスを含んだ食品などで改善できるというとても短絡的な健康食品ビジネスが展開されていますが、この本ではそうした流行にもしっかり警鐘が鳴らされています。マスメディアはプロバイオティクスならなんでも健康にいいかのように宣伝するかもしれませんが、特定の病気に対してどんな薬を飲んでも効くということがありえないように、実際には複雑極まりない相互作用を無視しているからです。

そのほか、マイクロバイオームの研究の歴史や、今後の治療法の展望など、知っておきたい知識はあらかた概観されているので、これからこの分野を学びたい人にも、すでに知っていることをわかりやすく整理したい人にも役立つ本でした。

■5/31 腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか(仮)
…腸内マイクロバイオームが腸管神経系(ENS)を通して、どのように脳と緊密な連絡を取っているかについての研究。慢性疼痛、過敏性腸症候群(IBS)、うつ病、不安障害、自閉症スペクトラム障害や、パーキンソン病などの神経変性疾患に結びつくメカニズムについても扱われているらしい。

■4/4知ってるつもり――無知の科学
…人はなぜ自らの理解度を過大評価してしまうのかについての認知心理学。

■3/1 ねこすけくんなんじにねたん?
…三池輝久先生監修の睡育の絵本

■2/18 小児期トラウマがもたらす病 ACEの実態と対策 (フェニックスシリーズ)
発達性トラウマ障害の研究の土台になっているACE(Adverse Childhood Experiences:逆境的小児期体験)研究の本

あのACE研究の本ということで衝動買いしました。トラウマについての本は数あれど、表題にACE研究を持ってくる本が良書でないはずがありません。机上の空論や精神論ではないことが保証されているようなものだからです。

届いてみて驚いたのが、過去に著書を読ませてもらったドナ・ジャクソン・ナカザワの本だったこと。ご自身の病気の原因を調べて、過去に化学物質が自己免疫疾患を発症されるメカニズムについて専門的な本を書かれていました。

化学物質について調べていた以上、当然マイクロバイオームの研究はよく知っておられると思います。この本でもちらっと話題が出ています。

以前の著書の時点では、まだマイクロバイオームの研究が今ほど知られていなかったため、化学物質が自己免疫疾患の発症につながるという筋書きでしたが、実際には化学物質がマイクロバイオームを撹乱し、その結果自己免疫疾患につながる、というのがただしかったのだろう、と思います。

その意味では、今頃彼女はマイクロバイオームの専門家になっていても不思議ではないのですが、そうではなく発達性トラウマの本を書かれたことに驚きました。

内容は前著にも劣らぬ徹底的な調査のもと書かれていて、わたしがここ数年でたどりついた話題をほとんどすべて網羅しつつ、一般読者にもわかりやすくまとめられていました。今後わたしはだれかに発達性トラウマについて説明したかったら、自分のブログではなくこの本を勧めます。

国内のトラウマの本は、専門医の本も含めて、虐待や毒親の話題に偏り、セラピストや医師の印象で書かれているものが多いですが、この本は事故や医療などのトラウマ経験もしっかり取り上げ、最新の研究を幅広く網羅しているので信用が置けます。

解離についての話題はかなり少なめですが、おそらく著者は解離現象を経験しやすいタイプではないので仕方ないでしょう。解離の話題は当事者でしか書けない内容が多いです。それでも、凍りつきやシャットダウンといった生物学的観点からみた解離の説明はしっかり網羅していて、解離の専門家であるヴァン・デア・コークやピーター・ラヴィーンの研究からもしっかり引用しているあたり、十分すぎるほどです。

難点を挙げるとすれば、幅広い研究を網羅していながら、分野間のつながりを整理しきれていないことです。たとえば、潜在記憶と顕在記憶の話題や、愛着の話題があまり脈絡なく配置されていますが、愛着が生物学的な身体記憶であることを知っていればもう少し整理できたのではないかと思います。

後半の治療法についての部分も、さまざまな治療法をあまり整理せずに並べただけ、という印象を受けました。このあたりは今後もう少し煮詰めて次回作に反映してほしいところです。

そのほか、巻末に参考文献リストがないので、より詳しく調べたい人には不向きです。しかし、一般読者向けのわかりやすい発達性トラウマの本、という位置づけであれば、これに勝る本は今のところありません。

ACE研究が明らかにした「小児期逆境後症候群」ーなぜ子ども時代の体験が脳の炎症や慢性疾患を引き起こすのか
17000人以上のデータから子ども時代の逆境体験と成人後の体調不良の関連性を導き出した画期的なACE研究の取り組みをもとに、幼少期の経験がわたしたちの一生にわたり、心身の健康にどん

■2/15 私はすでに死んでいる――ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳(仮)
…コタール症候群や離人症など、「自己感覚」が損なわれる珍しい精神疾患を抱える当事者や家族へのインタビュー本。

ニュー・サイエンティスト誌の編集者である著者が、「自己」の異常を抱えるさまざまな形態の疾患や障害の当事者に直接インタビューし、神経科学の最新の発見なども混じえて、自己とは何かを解き明かしていく本です。

扱われているのは、自分の身体が死んでいるように感じるコタール症候群、自己が失われていく恐怖を抱える認知症、自分の足が自分の物ではないように思える苦痛から切断したいと願う身体完全同一性障害(BIID)、自分の行動が自分の意図だと思えない統合失調症、夢の中にいるかのように感覚が麻痺する離人症と解離、体外離脱と自己像幻視、さらには自己の確立に苦労するアスペルガー症候群や てんかん発作など。

いずれの章も、当事者の主観的な感じ方と、専門家による脳科学的な分析とが両方織り込まれていて、故オリヴァー・サックスの著書に似た雰囲気があります。しっかり参考文献リストや索引もあります。(さすがにサックスの本みたいな興味をそそる膨大な脚注はありませんが笑)

前半から中盤にかけては、どうにも中途半端なイメージがつきまとって消化不良でしたが、終盤の章でこれまでの章の発見が「予測する脳」という概念を中心にして、うまくまとめられていくところは興味深く読めました。オリヴァー・サックスの本だと章ごとに完結するエッセイが多いですが、この本はあくまで最後まで読んで一つの物語、という印象でした。

冒頭には『「手ばなして自由になれ」とかいうけど、誰が何を手ばなすのかと考えこんでしまう人たちに捧げる』というメッセージが掲げられていて、この一言に共感できる人は読んで損はありません。逆にピンとこない人は読んでもよくわからないかもしれません。

デカルトは有名な「我思う故に我あり」(コギト・エルゴ・スム)という言葉を述べましたが、そんな常識がまったく通用しない世界に生きる、自己そのものがはっきりしない、あるいは歪んでいる人たち、アイデンティティそのものの問題を抱えている人たちは、読んでみれば必ず共感できる点や何らかのヒントがあるでしょう。

自分の身体が感じられない生ける屍になった人たちー感覚鈍麻とアイデンティティ喪失の神経科学
感覚過敏に比べて、あまり注目されず、深刻さが理解されにくい、感覚の鈍麻や麻痺、解離が引き起こすアイデンティティの障害について考察しました。

■1/16 BRAIN AND NERVE (ブレイン・アンド・ナーヴ) - 神経研究の進歩 2018年 01月号 [雑誌]
…「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の今」の特集号