ネガティブシンキング恐怖症―何でもポジティブに!と考える人の落とし穴

■怒りや恐怖を感じるのは健康に悪い
■人前で悲しみを見せるのは恥ずかしいことだ
■何でもポジティブに受け流せるようにならなければならない
■ネガティブ思考は百害あって一利なし!

向きに、ポジティブに、積極的に。

このようなアドバイスは、テレビを見ていても、本を読んでいても、呪文のように繰り返し唱えられているのを目にします。

怒り、悲しみ、恐怖といったネガティブな思考は、いつも悪者にされ、病気の原因、ストレスのもとと言われて槍玉に挙げられています。

しかし、近年の心理学研究によると、そのような「ポジティブシンキング」礼賛には、大きな落とし穴があります。むしろそれは「ネガティブシンキング恐怖症」とも呼ぶべき心の病理です。

なぜ何でもポジティブに対処しようとする態度は危険なのでしょうか。ネガティブシンキングは万病の元ではないのでしょうか。 脳科学は人格を変えられるか?などの本から考えたいと思います。

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「共依存」の悪友、「安全基地」の親友、あなたの友情はどちらですか

情や親しさは、支配することや支配されることではない。本来、支配とは正反対のところにあるのが、愛情や友情なのだから。(p303)

たしたちは誰しも、友情関係を大切に思っています。友情関係は、単なる友だち同士だけでなく、親子や夫婦の絆の一部でもあります。良い親子や夫婦は、親友でもあることが少なくありません。

しかしすべての友だちが、良い友情関係にあるわけではありません。中には、足を引っ張る悪友という、互いが互いを縛っている泥沼関係もあります。

そのような益にならない友情は、実際には「共依存」と呼ばれる破壊的関係だといえます。それに対し、互いを強める友情は、このブログで何度か書いてきた「安全基地」の役割を果たしているといえるでしょう。

「共依存」の友情は、二人三脚のように、片方が倒れれば共倒れになります。「安全基地」の友情は並んで歩く人のように、片方がつまずけばもう一人が手を差し伸べて起き上がらせます。

「共依存」と「安全基地」を分ける要素はどこにあるのでしょうか。いくつかの本を参考に考えてみたいと思います。

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任天堂の岩田社長、亡くなる直前まで自分の病気を徹底的に研究して対策を練っていた

年7月11日、胆管がんのため、若くして亡くなった任天堂の岩田聡社長。

「疲労と睡眠の見える化」のプロジェクトで、慢性疲労症候群(CFS)の研究をしている渡辺先生、倉恒先生、田島先生との協力事業を発表するなど、このブログとしても今後の動向に注目していた矢先の訃報でした。

その岩田社長の追悼記事の中で、生前どのような闘病生活を送っておられたのか、興味深い話が紹介されていました。そこで語られている岩田さんの姿勢は、病気と闘う人すべてが見倣うべきものだと思います。

徹底的に研究していた

インタビューの中では、岩田社長の病気に対する取り組み方が、生前親しかった方たちによって、次のように回想されています。

【岩田 聡氏 追悼企画】岩田さんは最後の最後まで“問題解決”に取り組んだエンジニアだった。「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」特別編 - 4Gamer.net はてなブックマーク - 【岩田 聡氏 追悼企画】岩田さんは最後の最後まで“問題解決”に取り組んだエンジニアだった。「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」特別編 - 4Gamer.net

石原氏:
 この話は表には出ていないですよね。実は,岩田さんはご自分の病気が何であるのか,告知を受けて正確に知っていたんです。
 そして,自分で最新の医学書とMacを病室に持ち込んで,自分の病状と今ある解決策を徹底的に学んだんです。それこそ医者より詳しくなるくらい,自分の病気に関して徹底的に研究していたんですね。
 そうして,私なんかが会いに行くと,「この病気で死ぬ確率と生き残る確率はそれぞれこれくらいあって,自分はこの線で行くのが最適解だと思う」と,いつもの問題解決を考えているときの調子で,楽しそうに話すんです。

この話では、岩田社長が、病床において、意気消沈したり、あきらめたりするどころか、「自分の病気について徹底的に研究していた」ことが伝えられています。

岩田社長は医学の専門家ではなく、おそらくそれまで医学書を読む機会もなかったのではないかと思いますが、それでも果敢に解決策を探し求めました。

インタビューはこう続きます。

川上氏:
 岩田さんの病気は相当に難しいものですよね。そのことをわかった上で……。
石原氏:
 ええ,全てわかった上で,まだこういう解決策があるはずだと,ベッドの上でいつもと同じように考え続けていたんです。
 最先端の治療を自分で試せないかと,様々なアイデアを主治医に相談したりもしていたそうです。私の知っている岩田 聡という人物は,そういうときに「人類の未来には,きっとこの病気は簡単に治るものになる。そのために今,自分は何をすればいいのか?」を考えていく人なんですね。彼は本当にエンジニアでしたから。
川上氏:
 ……。
石原氏:
 凄まじかったですよ。日々最新の医学書とネット情報を検索し,主治医をつかまえては議論するんです。岩田さんは自分自身の病気まで含めて,あらゆる「問題解決」について最後まで諦めませんでした。どこまでも前向きで,亡くなる直前まで解決策を考えていたんです。

岩田社長が、専門家である医師を信頼しつつも、自分の病気を決して人任せにはしないで、自分で集められる限りの情報を調べ、懸命に解決策を探し続けていた様子がうかがえます。

自分の病気の傍観者ではなく当事者でありたい

わたしは、この話を読んで、岩田社長の姿勢に大いに共感し、自分自身の経験と重なるものを感じました。

わたしは、岩田さんのように「天才」と呼ばれるような実績も才能も持ち合わせていません。しかし、わたしがこれまでやってきたことは、岩田さんの取り組みとほぼ同じです。

わたしは慢性疲労症候群になったとき、医療について知識があるどころか、中卒の不登校の学生に過ぎませんでした。

何のスキルも持っていませんでしたし、自分の病気をうまく言葉で説明することさえできませんでした。

しかし岩田さんと同じように、今まで読んだこともない医学書を読み始め、もうろうとした頭でも、少しでも自分の状況を理解できるよう、自分の病気について研究しはじめました。

最初のころは情報も断片的にしか理解できず、自分の状態がどういうものなのかまったく見当もつかず混乱していましたが、常にひとつのことを考えていました。

それは、わたしの病気は、まだ医学が明らかにしていないようなものではなく、わたしも主治医も、すでに存在する数ある可能性の中から正しい理解にたどりついていないだけなのではないか、ということでした。

そのような信念から、関連する病気や断片的な情報を徹底的に比較検討し、分析してきたのが、このブログの内容のすべてです。その結果、徐々に状況が整理され、次第に体調を改善させる道が開けてきました。

わたしも岩田さんと同様、さまざまなアイデアを主治医に相談し、ときには議論してきました。なんとかして問題を解決するためです。

岩田さんの別の対談を見ていると、ご自身の特徴について、次のようにおっしゃっていました。

わたしはきっと当事者になりたい人なんです。
あらゆることで
傍観者じゃなくて当事者になりたいんです。

岩田さんは、ご自身の闘病生活においても、治療を医者に任せて「傍観者」になるのではなく、自分で徹底的に調べ、専門家よりも詳しくなって「当事者」となろうとしたのだとわかります。

そもそも、自分の身体について一番よく理解できるのは自分をおいてほかにいないのではないでしょうか。そうであれば、自分が当事者、専門家となって自分を治す方法を探るのがベストです。

常に最適解を探るプログラマー岩田聡も、きっと同じ結論に至ったのだと思います。

自分の未来は自分で決める「統御感」

少し乱暴な言い方かもしれませんが、わたしは、自分の病気について調べようとしない人が理解できません。

わたしの知り合いの中に、ただひたすら自分の病気について不平不満を言うばかりで、一日中だらだらとテレビやSNSにかまけ、自分の病気についての情報収集をまったくしない人がいました。

その人はいつも、自分は世界一不幸で、もう人生は取り返しがつかないから、生活保護を受けて暮らそうと愚痴ばかり言っていました。そう言いつつも、じつはわたしより元気で体力もあり、家族にも恵まれていたのです。

わたしははっきりと、「自分の足で出口を探そうとしない人は、決して迷いの森から抜けられない」と言いました。

もちろん、体調が非常に悪く、考えるのさえしんどい場合もあるでしょう。ですから、自分の病気について調査するのが簡単なことではないのはわかります。

でも、わたしは頭がもうろうとしている頃も、寝たきりに近い状態のときも、何とかして知識や理解を得ようとしてきましたし、おそらく岩田さんもそうだったと思います。

どのくらいのことができるかは人それぞれですが、少なくとも、自分の病気に対して主体性を保つことは、だれもができることです。

病気のことなんて難しくて分からないからお医者さんに任せる、などと言っている場合ではありません。医者に対して遠慮する人もいますが、自分の人生、自分の体について、自分で責任を持たずして、だれがそれを担うのでしょうか。

それは、以前に書いた「無力感」と「統御感」の記事で考えた要点でもあります。

難病や試練を乗り越える人の共通点は「統御感」ー「コップに水が半分もある」ではなく「蛇口はどこですか」
難病など極めて困難な試練から奇跡の生還を遂げる人たちは、共通の特徴「内的統制」を持っていることが明らかになってきました。「がんが自然に治る生き方」「奇跡の生還を科学する」などの本か

試練や困難に直面した場合、人は二通りの反応を見せます。

ある人は「無力感」、すなわち、自分はもう何をやっても無駄だと最初からあきらめを抱いていて、ただ不平不満を並べ立てるだけの毎日を送ります。

しかし別の人は、「統御感」、すなわち、たとえどんな状況になろうとも、自分の未来は自分でコントロールできるに違いない、という確信を抱いていて、決して望みを捨てません。

岩田さんが抱いていたのは、間違いなく「統御感」でした。どれほど困難な病気であろうと、自分には何かしらできることがある、解決策を探せるに違いない、と確信していて、実際に具体的な行動を実行したからです。

上の記事で言うと、「蛇口はどこですか」と尋ね、現実的な解決策を探り続けました。

こうした特徴は、末期がんを克服し、奇跡的な回復を遂げる人たちの共通点の一つでもあるとされていました。

難病治療にも役立つ! がんが劇的に回復した人たちの9つの習慣
慢性疲労症候群にも効くと言われるケリー・ターナー博士の「がんが自然に治る生き方」を読みました。がんが劇的に回復した人の9つの習慣をまとめています。

残念ながら、岩田さんは、がんを克服できず、志半ばに亡くなってしまいました。がんを克服する人の特徴を兼ね備えていたものの、それでも太刀打ちできないほど難しい病状だったということなのでしょう。

それでも、亡くなるまでの期間、「統御感」に導かれて決してあきらめなかった闘病生活は、苦痛の多い無益な日々だったわけではなく、むしろ充実した人生の最終章だったのではないかと思います。

だからこそ自分の病気について不満を言うどころか、「いつもの問題解決を考えているときの調子で,楽しそうに話す」ことができたのではないでしょうか。

岩田さんは、わたしからすると、到底比ぶべくもないはるかに有能な人ですが、自分と同じように病気に対処していたことを知って親近感が湧きました。

わたしの闘病はまだ解決したわけでなく、常に次の一手を求めて未知の分野を探り進めている状態ですが、岩田さんの闘病生活の姿勢を忘れることなく、時々思い返してはお手本にしたいと励まされました。

誰も信じられない、安心できる居場所がない「基本的信頼感」を得られなかった人たち

■誰も心から信じられない
■いつも人間不信
■人に傷つけられるのが怖い
■誰といても安心できない
■自分をさらけ出せず表面的な付き合いしかできない
■人に何かを期待しても無駄だとあきらめている

のような気持ちを抱くことがありますか。

常に他人への根深い不信感を抱き、決してそれを拭い去れないとしたら、それは「基本的信頼感」と呼ばれる心の働きを、不幸にして得られなかったことによるのかもしれません。

「基本的信頼感」は、1歳半ごろまでの環境によって身につくもので、その時期に獲得できなけば、その後の人生で、他人を信頼するのが難しくなり、さまざまな問題につながってしまいます。

自尊心のなさ、傷つきやすさ、孤独、空虚感、「良い子」を演じること、自分の限界を超えて頑張ってしまうこと…こうした性質はすべて元をたどれば、「基本的信頼感」の欠如に行きつきます。

「基本的信頼感」とは果たして何なのでしょうか。それがなければ、人生にどのような影響が及ぶのでしょうか。どのように問題に対処できるでしょうか。

母という病 (ポプラ新書)という本を紹介したいと思います。

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大人の発達障害を見分ける10のチェックポイント―キーワードは「代償」と「誤学習」

どもの発達障害は、近年よく知られるようになってきました。しかし、大人の発達障害はまだまだ認知度が低く、ただの変わった人として敬遠されたり、厄介な人と誤解されたりすることが多いように思います。

というのも、大人の発達障害の場合、子どもの発達障害とは異なる特徴があるからだ、と述べるのは、長年、発達障害の親子を見てきた杉山登志郎先生です。

キーワードは代償である。つまり、凸凹レベルであっても、凸凹レベルであればなおのこと、健常と呼ばれている人々とは異なった戦略で、いわば脳の中にバイパスを作って、適応を計るということをおこなっている。(p223)

大人の発達障害の人たちは、発達障害に対する配慮などない時代に育ってきました。

そのため、「代償」により、自分なりの生存戦略を身に着けていて、一見子どもの発達障害の特徴とは真反対に思えるようなスキルを身に着けていることもしばしばです。

あるいは、自分の独特な特性のために、定型発達の人たちとは違った観点から世の中を見て、常識からずれた「誤学習」をしてしまっていることもあります。

具体的に、どのようにして、大人の発達障害を見分けることができるのか、杉山登志郎先生が説明する10のチェックポイントを 発達障害のいま (講談社現代新書)という本からまとめてみたいと思います。

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