自分で描いたり演奏したりするのはちょっと…という人でも、きっと、好きなイラストや好みのメロディがあると思います。
疲れたときに、大好きな音楽を聞くと元気が出る、癒されるという人は多いですし、アートセラピーのように、絵を描くことで傷ついた心を癒す人もいます。
絵や音楽をはじめ、芸術は、わたしたちの心を揺さぶる力を秘めています。芸術は、一見、生きるために必須でないように思えますが、経済不況でも、震災被害のもとでも、戦争のもとでも、決して廃れず生き残ってきました。
わたしたち人間がこれほど芸術を愛し、それによって心を癒されるのはなぜでしょうか。
近年の脳の研究によると、人間は本質的に芸術家であり、音楽や絵は、人間を人間たらしめているもの、つまり他の動物とはっきり異ならせている重要な要素だとわかってきました。
人は多くの場合、たとえ脳が萎縮したり、損傷したりしても、最後の最後まで、絵を描いたり、音楽を楽しんだりする能力を持っています。
知の逆転 (NHK出版新書 395)や芸術的才能と脳の不思議―神経心理学からの考察
という本から、そのことを示す例を見てみましょう。