統合失調症と解離性障害の6つの違い―幻聴だけで誤診されがち

一般人のイメージでは、声の幻聴は統合失調症とほぼ同義語である―声が聞こえる人の大半は統合失調症ではないので、これは大きな誤解だ。(p76)

れは、有名な脳神経科医、オリヴァー・サックス先生の見てしまう人びと:幻覚の脳科学という本からの引用です。

日本でもアメリカでも、精神科医の中には、今だに、患者に幻聴があると知ると、安易に統合失調症と診断してしまう人が少なくないようです。

しかしオリヴァー・サックス先生の言葉が示すように、幻聴がある人の大半は統合失調症ではありません。

幻聴を伴い、統合失調症と間違われやすいものの代表例は、解離性障害とアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)だと言われています。

この記事では、特に、統合失調症と解離性障害の違いについて、解離の専門家の本を参考にまとめてみました。アスペルガー症候群との違いについても少しだけ取り上げています。

続きを読む

アスペルガーの解離と一般的な解離性障害の7つの違い―定型発達とは治療も異なる

ASD者が解離症状を呈する割合は定型発達者に比べて若干多いという印象はある。

もちろん自己のあり方が異なるため、ASD者の示す解離が発症要因、症候、治療などさまざまな点で通常の定型発達者の解離とは違ってくるのは当然であろう。

定型発達者の解離のみが解離ではない。ASDにはASDの解離がある。(p181-182)

のように述べるのは、解離性障害の専門家である柴山雅俊先生です。

アスペルガー症候群(DSM5では自閉スペクトラム症(ASD)に統一)の人たちは、解離の症状を伴うことが比較的多く、発達障害や解離性障害を専門に診ている医師の多くがその共通性を指摘しています。

しかし一方で、この柴山先生の言葉にあるように、ASDの解離と、定型発達者の解離(つまり一般的な解離性障害)とでは、仕組みが少し違っているようなのです。

この記事では、解離の病理―自己・世界・時代という本にもとづき、アスペルガーの解離と定型発達の解離との7つの違いをまとめてみました。

 

続きを読む

多重人格の原因がよくわかる7つのたとえ話と治療法―解離性同一性障害(DID)とは何か

重人格、というとあなたはどんなイメージを持っていますか?

ドラマに出てくるような犯罪者や、オカルトチックな霊的現象を想像するでしょうか。

実際には多重人格はオカルトではなく、解離性同一性障害(DID)と呼ばれている、れっきとした医学的な現象です。

もちろん原因は悪霊ではなく、脳の特定の機能の過剰な働きにあります。そしてDIDで悩んでいるのは、犯罪者や変質者ではなく、むしろもっと純粋な感性を持つ普通の人たちです。

DIDの人には平均8-9人とも言われる複数の人格が宿っている、人格が交代して別人になり、その時のことは記憶にも残らない、ということを考えると、身近な家族や友人が、DIDに対して戸惑いを覚える気持ちもよくわかります。

どうして多重人格が生じるのでしょうか。一人の人に複数の人格が宿る仕組みを、どのように理解すればよいのでしょうか。具体的な治療法には、どんなものがありますか。

この記事では、 続解離性障害という本や、その他の解離性障害の専門書から、多重人格の原因やメカニズムを理解するのに役立つわかりやすい7つのたとえ話、そして治療法についてまとめてみました。

続きを読む

睡眠効率を上げて慢性疲労を解消する「疲労回復CPAP」―大阪市大と東京疲労・睡眠クリニックが開発

労研究に携わっている大阪市大と、今年大阪市大から独立して「東京疲労・睡眠クリニック」を開いた梶本修身先生らが、睡眠時の気道を確保して睡眠効率を上げ、日中の眠気と疲労を軽減する「疲労回復CPAP」を開発したそうです。

いびきは、眠りながら走っているようなもの!?いびきを抑えて昼の眠気と疲労を解消する医療機器が実用化! - SankeiBiz(サンケイビズ) はてなブックマーク - いびきは、眠りながら走っているようなもの!?いびきを抑えて昼の眠気と疲労を解消する医療機器が実用化! - SankeiBiz(サンケイビズ)

疲労回復CPAPとは?

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:シーパップ、持続的陽圧呼吸装置)とは、もともとは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療のための装置です。睡眠中に気道が閉塞しないよう、空気を送り込む役割を果たします。

しかし大阪市立では、慢性疲労の原因の一つとして、睡眠中の気道が狭まっていて、適切な呼吸がなされず、睡眠効率が悪化して疲労が回復していないことに注目。

CPAPを無呼吸ではなく、いびき防止に用いるためアルゴリズムを改良したところ、臨床検査の結果、睡眠中の呼吸を安定させ、疲労回復を促すことがわかったそうです。

慢性疲労と昼間の眠気を自覚し、練るときにいびきをかいている人たち41名に試してみた実験では、マスクを3日間装着できた35名全員でいびきが減少・消失し、疲労については51%が「かなり回復した」、34%が「疲労回復がいつもより良い」と回答したそうです

現在、「疲労回復CPAP」を2016年1月より全国展開するにあたり、臨床導入するクリニックを募集しているとのこと。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とまではいかなくても、気道が圧迫されて睡眠効率が悪くなり、慢性疲労に陥っている人は大勢いると思うので、今回開発された装置で十分な睡眠がとれるようになるといいですね。

東京疲労・睡眠クリニックによる説明はこちら。

CPAP疲労回復療法|疲労の回復・解消・治療なら東京疲労・睡眠クリニックへ はてなブックマーク - CPAP疲労回復療法|疲労の回復・解消・治療なら東京疲労・睡眠クリニックへ

公式紹介動画はこちら

2016年春に脳脊髄液減少症の保険適用を目指す―厚生労働省研究班が発表

本脳神経外科学会で、脳脊髄液減少症の厚生労働省研究班代表である嘉山孝正先生が、2016年春に脳脊髄液減少症の保険適用を目指していることを発表したそうです。

<髄液漏れ>「来春の保険適用目指す」 厚労省研究班が言及 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース はてなブックマーク - <髄液漏れ>「来春の保険適用目指す」 厚労省研究班が言及 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

(元は毎日新聞の記事ですが、会員登録が必要なので、Yahoo!ニュースのほうのリンクを掲載しています)

脳脊髄液減少症とは?

脳脊髄液減少症とは、脳の髄液が漏れだすことで、脳神経が影響を受け、激しい頭痛をはじめ、さまざまな全身症状が生じる病気です。

髄液が漏れだすきっかけはさまざまで、交通事故のむち打ちや、柔道など激しいスポーツでの事故、吹奏楽での演奏、転んで尻もちをつくことなど色々なパターンが報告されていて、中には目立ったきっかけが思い当たらないものもあります。

寝たきりになることから慢性疲労症候群と思われたり、あるいは激しい痛みから線維筋痛症と診断されたりしていることもあるので、このブログでは鑑別を要する関連疾患として取り上げてきました。

特に、以下のような症状があれば、脳脊髄液減少症の可能性があるかもしれません。

■何らかの外傷や事故をきっかけに発症した
■横になるとましだが、体を起こすと激しい頭痛がある
■点滴、水分補給で症状が和らぐ
■午後から夕方にかけて悪化しやすい
■天候の悪化に敏感

治療法としては、自己血で髄液漏れの穴をふさぐブラッドパッチ、フィブリン糊パッチ、持続生理食塩水注入(生食パッチ)、硬膜外空気注入、人工髄液アートセレブ、点滴などいろいな方法が開発されています。

脳脊髄液減少症について詳しくは以下の記事で紹介している本をご覧ください。

「脳脊髄液減少症を知っていますか: Dr.篠永の診断・治療・アドバイス」を読んで
篠永正道先生の最新書籍「 脳脊髄液減少症を知っていますか: Dr.篠永の診断・治療・アドバイス」を読んで、慢性疲労症候群との関連で気になった点について書いています。弱い立場にあり

脳脊髄液減少症のこれまでの経緯

脳脊髄液減少症は、篠永正道先生が2000年に、交通事故後のむち打ち症と脳脊髄液の漏れを関連づけたことで、はじめて一つの病気として知られるようになりました。

当初はそう簡単に髄液が漏れたりしないという医学界の常識があったため、懐疑的な意見が非常に多くありました。

2006年に初めて日本脳神経外科学会でテーマに選ばれたものの、「ほとんどが誤診だ」などと否定的な意見が多かったそうです。

その後、厚生労働省の研究班が2007年に発足。

2011年10月には、MRIの画像検査で脳脊髄液の漏れを判定する診断基準がまとめられ、画像で異常が見られる症例が特に「脳脊髄液漏出症」と呼ばれるようになりました。

2012年5月には治療法であるブラッドパッチが先進医療に認められました。前述の「脳脊髄液漏出症」に限って、保険適用との併がを認められ、患者負担は、30万円から、約半額にまで減ったそうです。

しかし、この画像検査で異常が見られる「脳脊髄液漏出症」は脳脊髄液減少症の2割程度にすぎないとされていて、異常が見られない多くの患者は取り残されていました。

その後、脳脊髄液減少症のマンガが出版されたり柔道事故による脳脊髄液減少症が話題になったりで、脳脊髄液減少症という病気も次第によく知られるようになってきました。

その間に、先進医療としてブラッドパッチを行う病院は、当初の12機関から現在の46機関まで増加。研究や概念の理解も進んで、ようやく保険適用が見えてきた、ということなのだと思います。

脳脊髄液減少症が保険適用へ 

研究班に参加している山形大学の佐藤慎哉先生によると、すでに脳脊髄液減少症に対するブラッドパッチ両方の先進医療の承認を得た医療機関が全国で46あり、そのうち30機関から890の症例が集まっているとのこと。

佐藤先生はこう述べたそうです。

症例の分析を進め、来春の診療報酬の改定で保険適用が認めてもらえればと考えている

プロフィール:佐藤 慎哉|スタッフ紹介|山形大学医学部脳神経外科 はてなブックマーク - プロフィール:佐藤 慎哉|スタッフ紹介|山形大学医学部脳神経外科

また研究班代表の嘉山孝正先生はこう述べています。

来春の保険適用が見えてきたということ。患者のために何とか進めたい

今だに、交通事故後に脳脊髄液減少症が生じるのかどうか、という点は裁判でよく論争になっていますし、今回の保険適用が広い意味での脳脊髄液減少症をしっかりカバーするものなのか気になりますが、16年かけての保険適用は重要な一歩だと思います。