境界性パーソナリティ障害と解離性障害の7つの違い―リストカットだけでは診断できない

リストカットなどの自傷行為=境界性パーソナリティ障害(ボーダーライン) ?

なた、またはご家族や友だちのだれかが、時に攻撃的になったり、リストカットしたりすることがありますか? 世の中では、そのような人はボーダーライン(BPD)だとみなされることが少なくありません。

この分野の専門家、岡野憲一郎先生は著書続解離性障害の中でこう述べます。

従来は、衝動性が強くリストカット等の自傷行為を繰り返し、時に非常に被害妄想的になり、治療者や両親や恋人を激しく責める人々を、臨床家たちはあまり迷うことなく、BPDと診断する傾向にあった。(p22)

ところが、近年の研究で、一見ボーダーラインに見える人たちの中に、実はまったく違う別の病気、「解離性障害」「解離性同一性障害」(多重人格)の人が紛れ込んでいることがわかってきました。

ボーダーラインと解離性障害は表面的には似ていますが、やはり解離を専門とする柴山雅俊先生は、著書解離の構造―私の変容と“むすび”の治療論の中ではっきりこう述べます。

解離性障害の患者さんはしばしば境界性パーソナリティ障害と診断されます。…そのことはあまり治療に結びつかないといえるでしょう。

…解離性障害はパーソナリティが障害されているわけではありません。二つは別の病気です。(p78)

この記事では、岡野憲一郎先生の続解離性障害を中心に、いくつかの本から、よく似ていて誤解されがちな、境界性パーソナリティ障害(BPD)と解離性障害の7つの違いについて、詳しく取り上げたいと思います。

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腸内細菌の絶滅が現代の慢性病をもたらした―「沈黙の春」から「抗生物質の冬」へ

  私たちは現在、かつてより病気になりやすくなっているような気がする。

…過去に見られた多くの致死的な疫病とは異なり、そうした病気の症状は慢性的で何十年にもわたって患者の生活の質を低下させる。(p2)

性疲労症候群などの慢性炎症疾患、クローン病・潰瘍性大腸炎・多発性硬化症などの自己免疫疾患、アトピー・花粉症などのアレルギー、そして自閉症。

これらはどれも、近年、先進国を中心に、謎の急増を記録している病気です。

なぜこうした病気が増加しているのか、さまざまな意見が飛び交っていますが、多くの場合、それらは、問題のほんの一面について議論しているにすぎません。

中には疾病概念の普及や過剰診断で患者が増えているように見えるだけにすぎないと論じる人もいますが、現場の医師や、当事者たちは、それだけではこれほどの増加は説明できないとはっきり感じています。

近年、これらすべての病気には、共通する原因があるのではないか、という背筋が寒くなるような事実が明らかになりつつあります。それは気候変動や環境汚染と同じほど衝撃的かつ深刻、そして世界的な問題だと考えられています。 

失われてゆく、我々の内なる細菌という本から、今、医学の世界で注目されている「マイクロバイオームの消失」、「抗生物質の冬」といった、わたしたちの未来に関係するキーワードについて紹介したいと思います。 続きを読む

筑波大学で世界屈指の睡眠研究が始まる!―オレキシン発見者の柳沢正史博士らの「国際統合睡眠医科学研究機構」(IIIS)完成

波大学内に、睡眠研究の新たな拠点となる世界トップクラスの施設、「国際統合睡眠医科学研究機構」(IIIS)が2015年9月29日にオープンしました。

機構長は、ナルコレプシーの原因物質であるオレキシンを発見したことで世界的に有名な柳沢正史博士です。

国際統合睡眠医科学研究機構 筑波大学 はてなブックマーク - 国際統合睡眠医科学研究機構 筑波大学

睡眠医科学研究棟 筑波大に完成  : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) はてなブックマーク - 睡眠医科学研究棟 筑波大に完成  : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

睡眠の謎を解明するため、世界トップレベルの研究者が集結 筑波大学に新施設オープン : Aging Style(エイジングスタイル) はてなブックマーク - 睡眠の謎を解明するため、世界トップレベルの研究者が集結 筑波大学に新施設オープン : Aging Style(エイジングスタイル)

未踏の世界へ:眠りの正体に迫る 筑波大国際統合睡眠医科学研究機構長・柳沢正史さん - 毎日新聞 はてなブックマーク - 未踏の世界へ:眠りの正体に迫る 筑波大国際統合睡眠医科学研究機構長・柳沢正史さん - 毎日新聞

睡眠・覚醒の謎の解明に挑む (柳沢正史さん=筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長) - メディカル朝日 - アピタル(医療・健康) はてなブックマーク - 睡眠・覚醒の謎の解明に挑む (柳沢正史さん=筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長) - メディカル朝日 - アピタル(医療・健康)

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多発性硬化症(MS)の再発予防治療薬「コパキソン」が日本で販売

界50ヵ国以上で承認されていて、再発型の多発性硬化症(MS)の第一選択薬とされているコパキソン(グラチラマー酢酸塩)が日本でも製造販売が承認されたそうです。

武田薬品: 多発性硬化症治療剤「コパキソン®皮下注20mgシリンジ」の日本における製造販売承認取得について | Business Wire はてなブックマーク - 武田薬品: 多発性硬化症治療剤「コパキソン®皮下注20mgシリンジ」の日本における製造販売承認取得について | Business Wire

再発予防薬のコパキソンが承認

コパキソンは、イスラエルのTeva社が開発した多発性硬化症の再発を予防する1日1回の皮下投与注射剤です。国内では医療上必要性の高い未承認薬として、承認が進められていました。

多発性硬化症は、日本では約18000人の患者がいて、

■一次性進行型…発病初期から慢性進行性の経過をたどる
■再発寛解型…再発・寛解を繰り返す
■二次性進行型…再発・寛解を経て進行型に転じ

といったタイプがあるそうですが、8割以上の患者が再発寛解型だといいます。コパキソンはこの再発寛解型の多発性硬化症の再発を抑え、再発したときでも重症化を防ぐ薬です。

コパキソンのペプチドコポリマーが免疫細胞の炎症反応を防ぐメカニズムについては、こちらのサイトに書かれていました。

コパキソン(グラチラマー)の作用機序:多発性硬化症治療薬 はてなブックマーク - コパキソン(グラチラマー)の作用機序:多発性硬化症治療薬

多発性硬化症の再発予防薬としては、すでにインターフェロンベータ製剤であるアボネックスやベタフェロン、S1P1受容体調節薬のジレニア/イムセラ(フィンゴリモド塩酸塩)、モノクローナル抗体のタイサブリ(ナタリズマブ)などが使われています。

患者によって、どの薬が合うかは人それぞれそなので、治療薬の選択肢が増えるのは、望ましいことだと思います。改善する患者が一人でも多くなるよう願っています。

多発性硬化症のその他のニュース

最近報道されていた多発性硬化症に関するその他のニュースについて

多発性硬化症の人の寿命

多発性硬化症の人では寿命が短い傾向、一緒に存在する症状の改善が大切か | Medエッジ

悲しいことですが、多発性硬化症の人は、二次的に別の疾患を抱えやすいため、寿命が短くなる傾向があるとされています。調査では、一般の人の平均寿命が83歳だったのに対し、MS患者は76歳だったとのこと。

喫煙はMS発症、進行型への移行のリスク

多発性硬化症が見つかったあとでも禁煙したほうがいいのか? - MEDLEYニュース はてなブックマーク - 多発性硬化症が見つかったあとでも禁煙したほうがいいのか? - MEDLEYニュース

喫煙は二次性進行型の多発性硬化症(SPMS)と関係があるというニュース。喫煙しているとMSを発症しやすくなるばかりか、再発寛解型から二次性進行型に移行しやすくなるようだとされています。

禁煙した人は、二次性進行型への移行の平均年齢が遅くなるとも書かれています。

パーキンソン病のためのペン開発、スプーン発売―手の震えを電気で打ち消す

ーキンソン病の人は、手の震えや運動機能の悪化のため、食事をするのが難しくなったり、字がうまく書けなくなる小字症になったりしますが、そうした問題を打ち消すハイテク技術が開発されているようです。

モーターによって、手の震えを打ち消すスプーン「LIftware」が、Googleによって今月、日本でも発売され、筋肉刺激によって小字症を改善するペン「ARC pen」は開発中とのことです。

パーキンソン病の手の震えはいかに大きな問題か

パーキンソン病の人の悩みがいかに大きなものかを知るには、こちらの記事が役立つと思います。

たった1本のスプーンが、パーキンソン病患者の悩みを伝えてくれる。 | AdGang はてなブックマーク - たった1本のスプーンが、パーキンソン病患者の悩みを伝えてくれる。 | AdGang

イスラエルのテルアビブで実施されたこの取り組みでは、「穴のあいたスプーン」でスープを飲むことによって、パーキンソン病の人が、日常のちょっとしたことにいかに苦労するかが経験できるよう工夫されていました。

手の震えに悩む人は、パーキンソン病以外にも本態性振戦脳梗塞の患者など、多様な人たちがいて、日常生活のさまざまな部分で、健康な人にはわかりづらい困りごとを抱えています。

手の震えを打ち消すスプーン

そうした背景から、手の震えによる問題を打ち消す技術が開発されていて、昨2014年には、Googleが、パーキンソン病用のスプーンを開発している会社Lift Labsをを買収したというニュースがありました。

Google、“ハイテクなスプーン”開発企業を買収 - ITmedia ニュース はてなブックマーク - Google、“ハイテクなスプーン”開発企業を買収 - ITmedia ニュース

Google創業者のサーゲイ・ブリンは、母親がパーキンソン病であり、自らもパーキンソン病リスクがあることを明らかにしているそうです。このプロジェクトは次世代技術開発を担当するGoogle[x]の1つです。

そして、そのプロジェクトの成果である、手の震えを打ち消すスプーン「Liftware(リフトウェア)」が、この10月に日本でも発売されたというニュースがありました。

スプーンの柄の部分に手の震えを検出するセンサーを内蔵していて、コンピュータ制御のモーターで打ち消す力を加えることで、震えを7割相殺することができるそうです。

震えが4.5cm未満となる、軽度から中等度の震えを抱える患者に適するそうです。

グーグル製スプーン、フランスベッドが日本販売  :日本経済新聞 はてなブックマーク - グーグル製スプーン、フランスベッドが日本販売  :日本経済新聞

この製品は、ベッド・マットレスのほか、在宅介護用品なども製造しているフランスベッドからの発売で、価格は1個4万7520円とのこと。

さすがにちょっと高額すぎるようにも思いますが、発売まで漕ぎつけたことだけでも、第一歩として評価されるべきかもしれません。

このスプーンを使用している様子は、こちらの公式PR動画から確認できます。

小字症を改善するペン

それとは別に、パーキンソン病の運動機能の悪化によって字が小さくなってしまう小字症を刺激によって改善するペンも開発されていることが報道されていました。

手の震えに悩むパーキンソン病患者が、文字を書きやすくなるすごいペン | Techable(テッカブル) はてなブックマーク - 手の震えに悩むパーキンソン病患者が、文字を書きやすくなるすごいペン | Techable(テッカブル)

こちらはDopa Solutionsによって開発されている「ARC pen」という商品だそうです。小型の高周波振動モーターが筋肉を刺激することで運動機能を改善するといいます。

14人のパーキンソン病患者に対してテストしたところ、86%(12人?)に小字症の改善が見られたとのこと。

その様子はDopa Solutionsのサイトに載せられているこちらの動画で確認できます。

商品化はまだ先のようですが、こうした技術の開発が活気づいて、病気の人のQOLが向上すると嬉しいですね。

先日、パーキンソン病の震えのために絵が描けなくなった似顔絵作家の菅野武志さんの記事が出ていました。

パーキンソン病で断筆して5年 葛飾在住の似顔絵師が今思うこと - 葛飾経済新聞 はてなブックマーク - パーキンソン病で断筆して5年 葛飾在住の似顔絵師が今思うこと - 葛飾経済新聞

もう未練はないとはおっしゃっていますが、このようなペンが実用化されて、こうした方たちが再び絵や文字を描けるようになるようになってほしいなと思いました。

そのほかの最近のパーキンソン病のニュース

そのほかの最近のパーキンソン病についてのニュースは、独立記事にする余裕がなかったので、こちらで紹介しておきます。

パーキンソン病・レビー小体型認知症の発症メカニズムの一端解明

プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター はてなブックマーク - プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

GBA遺伝子変異を持つと、パーキンソン病およびレビー小体型認知症が約5~8倍発症しやすいので、GBA酵素活性を高めるたり、グルコシルセラミドの産生を抑制したりすることで予防・治療できる可能性があるそうです。

晩発性パーキンソン病のメカニズム解明

晩発性パーキンソン病で神経変性がゆっくり進行するメカニズムを解明(順天堂大学 プレスリリース) はてなブックマーク - 晩発性パーキンソン病で神経変性がゆっくり進行するメカニズムを解明(順天堂大学 プレスリリース)

基本的に遺伝性パーキンソン病は若年性、そうでないものは老年期発症と思われていますが、LRRK2遺伝子変異による、晩発性パーキンソン病というものがあるとのこと。平均発症は50歳ごろだそうです。

還元型コエンザイムQ10がパーキンソン病に効果

医学博士 蒲原聖可ブログ はてなブックマーク - 医学博士 蒲原聖可ブログ

以前からコエンザイムQ10の大量投与がパーキンソン病に効果があるとは言われていましたが、順天堂大学によると、300μg/日で、ウェアリングオフを伴うパーキンソン病患者に効果が見られたとのこと。

パーキンソン病の研究についてはずっと情報収集を続けているのですが、記事も増えてきたので、このたびカテゴリ「パーキンソン病」を新設しました。

一日も早く治療法などが確立されてほしいと思います。