ダーウィンも気をつけた「アインシュテルング効果」とは? 人は自分の意見の裏づけばかり探してしまう

アインシュテルング効果の真の危うさは、まさにここにある。

自分が偏見なしに考えていると信じていても、新しいアイデアを刺激する可能性のある事柄から自分の脳が選択的に注意をそらしていることにまるで気づいていない可能性があるのだ。

自分がすでに抱いている結論や仮説と一致しないデータは、無視されるか捨てられてしまう。(p47)

なたは、自分は偏見がなく、おおらかな人間だと思いますか?

わたしたちの大半は、自分は人の意見をよく聞き、柔軟な考え方をしているほうだ、と思っているかもしれません。

ところが実際には、だれもが自分の考えに固執し、新しいアイデアや価値観を退ける、という根深い傾向を持っています。

無意識のうちにわたしたちの見方を左右しているその傾向は、「アインシュテルング効果」と呼ばれていて、医療・裁判・科学など、さまざまな分野で、いえ、それどころか、わたしたちの日常生活でも、頻繁に偏った見方を生んでいます。

アインシュテルング効果とは何でしょうか。わたしたちは知らず知らずのうちにどんな偏った見方をしているのでしょうか。ダーウィンはどのようにしてそれに対処していたのでしょうか。

日経 サイエンス 2014年 05月号 [雑誌]ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)などから考えてみたいと思います。

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「芸術家は右脳人間」は間違い―自閉症の天才画家からわかる創造性における左脳の役割

術家は右脳人間で左利きが多い。

そんな話を聞いたことがありますか。いわゆる自己啓発的な「脳科学」の本や、 マスメディアなどで人気のある話題ですが、これは最新の科学に基づくものではありません。

近年の脳科学では、自閉症の天才画家の研究などから、創造性における左脳の役割がわかってきています。そして芸術家の創造性には、左脳も右脳も重要である、という証拠が集まっています。

芸術は右半球に側性化しているという考え方が一般に流布しているが、十分な科学的根拠に基づいているわけではなく、初期の理論が作業仮説としてその後の研究に影響を及ぼしているにすぎない。(p22)

創造性=右脳 でないとしたら、実際には右脳はどんな働きを担っているのでしょうか。なぜ芸術には左脳も必要なのでしょうか。そもそも創造性とは、脳のどこの機能と関係しているのでしょうか。

芸術的才能と脳の不思議―神経心理学からの考察という本から考えてみたいと思います。

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子ども時代の慢性的なトラウマ経験がもたらす5つの後遺症と5つの治療法

サクラの生育歴は、子ども虐待の臨床に従事した経験がある者なら、これだけで直ちに性的虐待の既往と重度の解離性障害を強く疑う所見に満ちている。

今日、このような症例が子どもも大人も「統合失調症」「双極性障害」「境界性人格障害」などと誤診をされ、延々と精神科の治療を受けているという場面にしばしば出会う。(p124)

しい気分の浮き沈みや慢性的なうつ状態、幻覚、対人関係の不安定さや依存症。

こうした症状は、精神科では、双極性障害や統合失調症、パーソナリティ障害と診断され、大量の薬物治療につながることがしばしばです。

しかし、何度薬を変えても、いくら薬の量を増やしてもよくならず、むしろ悪くなるばかりで、より悲惨な状態になってしまうことがあります。

近年の研究では、こうしたケースは、一見、統合失調症や双極性障害のような有名な精神疾患に思えるかもしれませんが、実際には似て非なるもの、つまり発達障害やトラウマと関係していると考えられるようになっています。

発達障害はなぜトラウマを抱えやすいのか、双極性障害や統合失調症と間違われやすいどんな5つの後遺症が生じるか、どんな5つの治療法が役立つか、という点を、講座 子ども虐待への新たなケア (学研のヒューマンケアブックス)という本を参考にまとめてみました。

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人生に「死んだ時間」などない―病気や逆境をクリエイティブに乗り越えた人たちから学べること

構内放送が1時間の遅れを告げた。周囲にいた人々は不平を漏らしたり、駅員を怒鳴りつけたりした。1時間の空白。何もすることのない、言わば死んだ時間。

しかし息子にとって死んだ時間などというものはなかった。スケッチブックを取り出すと、怒る客たちの姿を描き始めた。(p111)

なたは今、病気や障害、ひどい環境などの逆境に直面していますか?

自分ではどうしようもない状況に置かれると、やりきれない気持ちになるかもしれません。

望ましい環境なら発揮できたはずの才能や、達成できたかもしれない夢について考えると、自分は、人生の多くの時間を無駄にしている「死んだ時間」を過ごしていると思うかもしれません。

そんなとき、自分ではどうにもできない様々な逆境に直面し、それでもなお、その中で創意工夫を働かせて自分の運命を乗り越えた人たちについて知ると、少し見方が変わるかもしれません。

この記事では、「クリエイティブ」の処方箋―行き詰まったときこそ効く発想のアイデア86という本から、人生最悪の逆境に陥っても決してあきらめず、むしろクリエイティブな発想でそれを乗り越え、さらに成長していった人たちについて考えたいと思います。

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いつも時間がない人の処方箋―常に手術室が足りない病院が実践したたった一つのこと

ズーリ州の救急病院、セント・ジョンズ地域医療センターは、手術室の問題を抱えていました。

32の手術室で年間3万件の外科出術が行われていて、急患が出ると午前二時に手術するほどでした。

この のっぴきならない状況は、常に予定に追われて、「いつも時間がない人」の場合とよく似ています。

この病院の場合、手術室が足りない状況を打開するためにできる選択肢は、以下のうちどれでしょうか。

    A.手術室を増設する

    B.残業を増やす

    C.その他

このうち、A.やB.の選択肢は、「時間がない人」の場合は、重要でない予定や睡眠時間などを削って、さらに働く時間を増やすことに相当するでしょう。

しかし、セント・ジョンズ病院が選んだたった一つの解決策は、だれもが予想だにしない第三の選択肢だったのです。

いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学という本を紹介したいと思います。

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