【9/2】岡野憲一郎先生の新刊「解離新時代―脳科学,愛着,精神分析との融合」

離性障害に詳しい岡野憲一郎先生の新刊、「解離新時代―脳科学,愛着,精神分析との融合」が発売されました。

出版社のサイトによると、目次は、次のようになっています。

解離新時代 - (株)岩崎学術出版社 精神医学・精神分析・臨床心理学の専門書出版 はてなブックマーク - 解離新時代 - (株)岩崎学術出版社 精神医学・精神分析・臨床心理学の専門書出版

まえがき
 序章 解離の何が新しいのか?
第1部 解離と脳科学,精神分析
 第1章 解離と脳科学,愛着理論──アラン・ショアの仕事
 第2章 トラウマ記憶,解離,再固定化
 第3章 再固定化の治療への応用──ブルース・エッカーらの試み
 第4章 トラウマ記憶の知見を解離の治療に応用できるか?
 第5章 解離と精神分析(1)──ドンネル・スターンの理論
 第6章 解離と精神分析(2)──フィリップ・ブロンバーグの理論
第2部 解離治療の最前線
 第7章 どのように出会い,どのように面接するのか?
 第8章 どのように診断するか?──DSM-5による変更点を取り入れて
 第9章 どのように鑑別するか?
 第10章 どのようにトラウマを扱うか?
 第11章 どのようにDIDを治療するか?
 第12章 どのように再固定化療法を治療に用いるか?
 第13章 どのように子どもの人格部分を扱うか?
 第14章 解離に基づく非力動的な精神分析理論
 付章 気になる解離の論客たち

また、Amazonの内容紹介によると、本書の目的はこう書かれています。

個々の研究をみるとその方向性はかなり異なり,それこそ「解離」した状況にある。
本書は著者が日々の臨床に携わる中で解離に関連したさまざまなテーマの統合を図り,かつそれを臨床に生かすことを目的とする。
そこから浮かび上がる解離の姿は,依然として多くの謎や不明な点を含みながらも,心がさまざまな視点からのアプローチを必要としているという現実を示唆しているともいえるのである。

解離の研究は、研究者によって、いろいろと方向性が異なっていて、「脳科学」「愛着」「精神分析」など、別々の分野で理論化されていることもあるので、それを岡野先生がまとめてみた、という本のようです。

つまり、これ一冊読めば、最近のポピュラーな解離の研究が概観できる、というお得な本なのかもしれません。

解離と愛着障害やトラウマ理論の関係などは、このブログでも再三取り上げてきただけに気になる話題です。

岡野先生は、本を書くのが趣味らしく、これまでも多数の本を書かれていますが、特に解離の分野に明るい方だけに、とてもおもしろそうな新刊です。

岡野憲一郎先生のブログはこちら。

岡野憲一郎のブログ:気弱な精神科医 Ken Okano. A Blog of an insecure psychiatrist はてなブックマーク - 岡野憲一郎のブログ:気弱な精神科医 Ken Okano. A Blog of an insecure psychiatrist

 

サードマン・イマジナリーフレンドが現れる5つの条件―「いつもきみのそばを歩くもう一人がいる」

いつもきみのそばを歩いている第三の人は誰だ?
数えてみると、きみとぼくしかいない
けれど白い道の先を見ると
いつもきみのそばを歩くもう一人がいる
フードのついた茶色のマントに身を包み音もなく行く
男か女かもわからない
―だが、きみの隣にいるのは誰だ?

―T.S.エリオット「荒地」

れは奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」という本の冒頭の扉に載せられている詩です。

「いつもきみのそばを歩くもう一人がいる」。わたしはこのフレーズが大好きです。この記事をわざわざ読んでくださるような方の中には、わたしと同じように、このフレーズに温かい感動を覚える方もいるでしょう。

危機的状況に現れる「もう一人」。それは、ある状況では「サードマン」と呼ばれていますし、別の状況では「イマジナリーフレンド」と呼ばれています。実際のところ、研究者たちは、この二つの現象は根本のメカニズムは同一だと考えています。

「サードマン」とは何でしょうか。どんな危機的状況で現れるのでしょうか。サードマンとイマジナリーフレンドが現れるときに共通する5つの条件とは何でしょうか。

 

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ADHDの画家ピカソとアスペルガーの画家ゴッホの共通点と違い―発達障害がもたらした絵の才能

ADHDとアスペルガー(AS)はどのような違いがあるのでしょうか。

一般に、注意欠如多動症(ADHD)アスペルガー症候群(AS)も同じ「発達障害」という言葉でくくられ、同じようなものだとみなされていることがあります。両者がよく似ていると思っている人は少なくありません。

確かにADHDとアスペルガーは併発することもありますが、図解 よくわかる大人のADHDによると、ADHDの人のアスペルガーの併存率はたった5-6%です。両者は全然違うのです。(p47)

(※最新の診断基準DSM-5では、アスペルガーは自閉スペクトラム症(ASD)に統一されており、ADHDとASDの併存が認められるようになりました)

この2つの発達障害の違いをわかりやすく理解する一つの方法は、ADHDの有名人とアスペルガーの有名人を比べてみることです。

今回比較するのは、ADHDだったとされる画家ピカソ(Pablo Picasso)と、アスペルガーだったとされる画家ゴッホ(Vincent Willem van Gogh)です。

ピカソとゴッホはどちらも、不世出の偉大な画家です。今だに本屋さんの美術書のコーナーに行くと、二人をテーマに書いた本がたくさん見つかります。それほど、ピカソもゴッホも、現代のわたしたちの心をとらえてやまない魅力的なクリエイターなのです。

ではピカソがADHDだったと言われるのはなぜなのでしょうか。ゴッホがアスペルガーだったと言われるのはなぜなのでしょうか。両者にはどんな共通点と違いがあるのでしょうか。

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多発性硬化症(MS)の原因にはエプスタイン・バーウイルスや遺伝的なビタミンD欠乏が関係

発性硬化症(MS)についてのニュースがいくつかあったので、まとめておきます。

原因として、エプスタイン・バーウイルスや、遺伝的ビタミンD欠乏が関係しているというニュースと、小児患者で定期的な運動が効果的だったというニュースです。

多発性硬化症(MS)は視神経や脊髄の神経線維を覆うカバーであるミエリンが炎症で壊れ、電気信号がもれることで生じる病気で、若い人によく見られます。わたしの知り合いにも多発性硬化症の人がいます。

症状は多彩ですが、そのうちの一つに極度の疲労があり、外国では、慢性疲労症候群とよく似ている病気の一つに挙げられることもあります。

CFSと似ている外見では分からない難病 多発性硬化症(MS)
海外でときおり慢性疲労症候群(CFS)と比較される多発性硬化症(MS)について、最近のニュース記事をまとめています。

エプスタイン・バーウイルスが関係

大阪大学とハーバード大学によると、免疫疾患のモデルマウスでは、エプスタイン・バーウイルス(EBV)が作り出すたんぱく質(LMP2A)によって、異常な免疫細胞が増え、その一部が自分の体の組織を攻撃していることが確認されたそうです。

エプスタイン・バーウイルスは幼少期に感染して、成人の9割以上が感染していますが、ほとんどは無症状か軽症です。

しかし、「全身性エリテマトーデス」や「多発性硬化症」などの自己免疫疾患を引き起こすこともあるとされていて、今回の実験では、それが確証されました。

この前読んだ寄生虫なき病では、感染する時期の問題ではないかとされていましたね。

つまり、子どものころの柔軟な免疫機構がエプスタイン・バーウイルスに接すると、免疫寛容のため問題が起こりませんが、成長してから初めてエプスタイン・バーウイルスに出会うと、対処法が分からず、自己免疫疾患になるのではないかと。

エプスタイン・バーウイルスは慢性疲労症候群との関係が疑われることもありました。

成人の9割感染「EBウイルス」、免疫疾患起こす原因たんぱく特定 : 医療ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞) はてなブックマーク - 成人の9割感染「EBウイルス」、免疫疾患起こす原因たんぱく特定 : 医療ニュース : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)

ほとんどの成人が感染している「EBウイルス」、重い免疫疾患を起こすウイルスタンパク質を特定 | バイオの杜

はてなブックマーク - ほとんどの成人が感染している「EBウイルス」、重い免疫疾患を起こすウイルスタンパク質を特定 | バイオの杜免疫疾患の原因たんぱく特定、阪大と米チーム : ニュース : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) はてなブックマーク - 免疫疾患の原因たんぱく特定、阪大と米チーム : ニュース : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

【坂口至徳の科学の現場を歩く】誰もが感染ヘルペス…EBウイルスの因子を解明 阪大、自己免疫疾患の治療に道(1/2ページ) - 産経WEST はてなブックマーク - 【坂口至徳の科学の現場を歩く】誰もが感染ヘルペス…EBウイルスの因子を解明 阪大、自己免疫疾患の治療に道(1/2ページ) - 産経WEST

ビタミンDが少ないと発症しやすい?

別のニュースでは、カナダ・マギル大学によると、多発性硬化症の患者1万4498人と健康な人2万4091人のデータを照らし合わせる大規模解析で、ビタミンDの量が遺伝的に欠乏していると多発性硬化症の発症率が二倍になることが明らかになったそうです。

これまでの研究では、室内で過ごすことが多かったりして、太陽光を浴びる機会が少ないと、ビタミンDの欠乏が生じ、多発性硬化症が引き起こされるという見方もありました。

しかし今回の研究では、多発性硬化症に先立つビタミンDの欠乏が、生活習慣の問題ではなく、遺伝的な問題だとわかったそうです。

もともと遺伝的にビタミンDが欠乏している人が、サプリメントなどでビタミンDを補うことで多発性硬化症の発症を抑えられるのかどうかは、今後の臨床試験の結果待ちとのこと。

ビタミンD欠乏で多発性硬化症のリスク増、遺伝学研究で確認 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News はてなブックマーク - ビタミンD欠乏で多発性硬化症のリスク増、遺伝学研究で確認 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

子どもの多発性硬化症には運動が効果的

最後に、全文は読めなかったのですが、米国神経学会(AAN)によると、定期的に運動をしている子どもの多発性硬化症(MS)患者では疾患活動性が低いという研究も出ていました。

小児MSでは運動が疾患活動性を抑制【米国神経学会】 T2領域小さく再発も少ない│m3.com

多発性硬化症の原因や発症メカニズムが早く明らかになって、効果的な治療法が見つかってほしいですね。

多発性硬化症は、落語家の林家こん平さんが闘病しておられることで有名です。

なぜアスペルガーの人は尊大で怒りやすく見えるのか―人格障害との違い

スペルガー症候群の人が尊大に見えたり、突発的に激しく怒ったりする理由について、解離などに詳しい精神科医の岡野憲一郎先生がブログで解説しておられました。興味深かったので紹介します。

岡野憲一郎のブログ: 自己愛(ナル)な人(推敲 11/50) はてなブックマーク - 岡野憲一郎のブログ:気弱な精神科医 Ken Okano. A Blog of an insecure psychiatrist: 自己愛(ナル)な人(推敲 11/50)

岡野憲一郎のブログ: 自己愛(ナル)な人(推敲 12/50) はてなブックマーク - 岡野憲一郎のブログ:気弱な精神科医 Ken Okano. A Blog of an insecure psychiatrist: 自己愛(ナル)な人(推敲 12/50)

天才の秘密 アスペルガー症候群と芸術的独創性のような本で、過去のアスペルガーの天才たちについて読むと、かなりの頻度で「自己愛傾向」や、「聞く耳を持たない頑固さ」、そして「意見されたときに激しく怒る」といった傾向について書かれています。

たとえばアスペルガーだったと思われる作曲家のエリック・サティは、最も質の高い生き方を目指す妥協のない人で、些細なことにもカッとなり、激怒したと言われています。(p222)

こうした特徴のため、アスペルガーの人たちは、ときに「尊大だ」「ナルシストだ」と言われますが、その理由について考察されています。

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