10種類の「毒になる親」から人生を取り戻すためにできること

自分の身に起きている問題や悩みと「親」との因果関係について気づいている人はほとんどいない。これはよくある心理的な盲点なのである。

なぜかといえば、ほとんどの人は、自分の人生を左右している問題のもっとも大きな要因が親であると考えることには抵抗を感じるからである。(p7)

分の抱える問題の根源が親にある、という考え方は、どこの文化でも嫌われがちです。特にこの日本という国ではそうです。

今日では、虐待やネグレクトをする親は、マスコミでセンセーショナルに取り上げられ、非難されることも増えました。しかし、そのほかの大多数の親、つまり外から見てそれほど問題がないように見える家庭の親を批判することはタブーとみなされます。

とはいえ、その中には、子どもを虐待する親と同じほど、子どもの将来を台無しにする「毒になる親」が存在しているのです。そのような家庭の子どもは、自分自身が悪かったのだと考え、大人になってなお、心の傷に苦しめられます。

わたしはこの本毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫)を2年ほど前に主治医から勧められたのですが、今に至るまで、なかなか読む気持ちになれないでいました。しかしいつかはそれと向き合わなければいけないことに気づき、書評を書くことにしました。

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トラウマを治療する「自我状態療法」とは? 複数の自己と対話する会議室テクニック

ラウマ記憶はさまざまな症状の原因として、昨今注目されています。このブログでも取り上げたとおり、慢性疲労症候群の中にもトラウマ記憶が関わっている人もいるそうです。

トラウマ記憶を治療するのは簡単ではありません。トラウマ記憶に触れるのが怖いと感じる人もいますし、記憶が心の奥に厳重に封印されていて、症状だけが心身症として体に出ていることもあるからです。

そのような場合、効果的で負担も少ない治療法と目されているのが、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)です。目を左右に動かしながら、トラウマ記憶を思い出すことで、処理が進みます。

しかし中には、EMDRではトラウマ記憶の核心に迫ることができず、治療が堂々巡りになってしまうことがあるといいます。そのような場合に、EMDRと併用すれば効果があるという治療法が図解臨床ガイド トラウマと解離症状の治療―EMDRを活用した新しい自我状態療法で紹介されていました。

それは自我状態療法というもので、この本では、解離のテーブルテクニック、通称「会議室テクニック」として紹介されています。

「会議室テクニック」とはなんでしょうか。どのように心の中を探るのでしょうか。

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時間生物学によると若者の夜ふかしはゲームやスマホのせいではない―海外の画期的な取り組みとは?

ジェイコブはヒルダよりずっと数学が得意だと自分で思っていたが、それを証明することはできなかった。

どうして朝一番にテストを受けなければならないのか。もっと遅い時間なら、はるかにいい成績が取れるはずなのに。

この二、三か月、彼は学校の成績が危なくなっているのに気づき、翌日に学校がある日は、なんとか早く寝ようと努力してきた。パーティーの誘いはすべて断った。週末さえもだ。

しかし何をやってもうまくいかない。どうしても眠れなかったのだ。夜遅くに学校の勉強をして、夜明け近くまで起きていたときもあった。午前一時前にベッドに入っても、眠れないので意味はなかった。(p140)

れは、夜型のクロノタイプを持つ若者ジェイコブのストーリーです。

一般に、思春期の学生は夜ふかしすることが多いと言われますが、中には、どうしても朝型の学校生活に適合できず、無理を続けている子もいます。

子どもの「早寝早起き」を推し進める活動や組織、先生の多くは、こうした若者の問題は、ゲームやスマホ、夜型を引き起こすライフスタイルにあるといいます。しかしそれが必ずしも正しくないことは、じつは時間生物学によって証明されているのです。

一部の先進的な学校では、若者の夜ふかし対策として、「早寝早起き」ではなく、学校の「登校時間フリー」のサービスを始めているそうです。

若者が夜ふかしするのはなぜなのでしょうか。学校社会はどのように変わっていくべきなのでしょぅか。なぜ生物時計は、あなたの生き方まで操っているのか?という本を紹介します。

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体内時計のペースメーカーの一端をバソプレシンが担っている

沢大学の三枝 理博准教授らの研究グループが、バソプレシン産生ニューロンが、体内時計のペースメーカー細胞の一部を担っているという研究報告を先日出していました。

このニュースについては、柳沢正史教授が体内時計のペースメーカー細胞を発見 の記事で、関連ニュースとして取り上げたのですが、論文の抄訳を見つけたので、再度扱います。

視交叉上核のバソプレシン産生ニューロンの細胞時計はニューロンのあいだの連絡の制御をとおし行動の概日リズムを制御する : ライフサイエンス 新着論文レビュー はてなブックマーク - 視交叉上核のバソプレシン産生ニューロンの細胞時計はニューロンのあいだの連絡の制御をとおし行動の概日リズムを制御する : ライフサイエンス 新着論文レビュー

金沢大、体内時計の安定に関わる神経細胞を発見 | マイナビニュース はてなブックマーク - 金沢大、体内時計の安定に関わる神経細胞を発見 | マイナビニュース

体内時計つかさどる脳の細胞で発見続々 | マイナビニュース はてなブックマーク - 体内時計つかさどる脳の細胞で発見続々 | マイナビニュース

バソプレシンは体内時計ペースメーカーの一部

体内時計のペースメーカー細胞については、同時期に、似たような研究報告が柳沢正史教授の研究グループから報告されていました。

そちらでは、視交叉上核のニューロメディンS産生ニューロンが概日リズムのペースメーカーの実体であり,このニューロンの細胞時計を破壊すると、概日リズムがなくなるとされています。

それに対し、金沢大学の研究グループは、ニューロメディンS産生ニューロンの一部である、バソプレシン産生ニューロンに注目しました。

マウスの実験でバソプレシン産生ニューロンだけを破壊すると、概日リズムはなくなりませんでしたが、周期が約1時間長くなったり、時差に早く適応したりと、体内時計の機能が弱まりました。

つまり、ニューロメディンS産生ニューロン全体を破壊すると体内時計が機能しなくなりますが、ニューロメディンS産生ニューロンの一部であるバソプレシン産生ニューロンだけを破壊すると、体内時計の機能が一部低下するようです。

バソプレシン産生ニューロンは体内時計の機能の一部を担っているようですが、そのほかのニューロンとも協力して体内時計を作り上げているといえます。

バソプレシンは発達障害とも関係?

以前このブログで取り上げた愛着障害に関する本によると、バソプレシンは、オキシトシンと共に、発達障害に関係しているかもしれないと説明されていました。

オキシトシンは、母親らしさを作り出すホルモンですが、バソプレシンは父親らしさを作り出すホルモンです。

オキシトシン・バソプレシンシステムの異常によって、発達障害や愛着障害の、コミュニケーション障害や心の理論の未発達が生じるのではないかと分析されています。

自閉症でバソプレシン(AVP)が低下している―愛着や睡眠リズムに関係するホルモン
自閉症でバソプレシンの低下と「心の理論」の低さが関係していました。

同時に、発達障害では、睡眠リズムが不規則になることも知られていますが、体内時計が消失するわけではありません。その原因は、もしかすると、体内時計のペースメーカーの一部であるバソプレシンに異常があるからなのかもしれません。

その点に関する推測は、こちらの記事に書いてみました。

発達障害を防ぐ「子どもとねむり」の大切さ
発達障害の原因は、赤ちゃんのときの睡眠障害にある…。最新の研究に基づいて、乳幼児期のねむりの大切さを説明している書籍「子どもとねむり」から、あまり知られていないねむりの役割を紹介し
はてなブックマーク - 発達障害を防ぐ「子どもとねむり」の大切さ | いつも空が見えるから

▼追記(2016/09/16)
バソプレシンが概日リズムと関わっているという新たな研究が金沢大学から出ていました。

脳内物質「バソプレシン」産生の神経細胞が体内時計の周期を決定-金沢大 - QLifePro 医療ニュース

体内時計が刻む1日の長さを決める細胞を発見! | 金沢大学

バソプレシンを産生する神経細胞が、体内時計の周期を決めることを明らかにしたそうです。

バソプレシ ン産生神経細胞が生み出すリズムの周期を遺伝子操作により長くすると、体内時計により制御されるマウスの行動リズムの周期も約1時間長くなった。

逆にバソ プレシン産生神経細胞のリズムの周期を短くすると、行動リズムの周期も約30分短くなったとしている。

バソプレシン神経細胞によって体内時計の一日の周期が決まるということですが、体内時計の周期は生来の朝型・夜型のみならず、概日リズム睡眠障害とも関わっていると言われています。

事実、研究報告に載せられているグラフは、概日リズム睡眠障害の一種である「非24時間型睡眠・覚醒症候群」(non-24)の睡眠リズムのグラフそのものです。

そうすると、自閉症などの発達障害と概日リズム睡眠障害は、同じバソプレシン産生細胞の機能異常という原因が絡んでいるのでは併発しやすいのではないか、という可能性が考えられるように思います。今後の研究の進展にも注目していきたいところです。

親子の愛着が育まれないと動物でさえいじめっ子になる―愛着障害のサルとゾウ

脳の考える部分は薄い層にすぎないが、その一方で大脳の回路の多くの領域が、愛着にかかわる心理的な活動に使われている。

「愛着脳」とも呼べるこの装置には、私たちの無意識の感情と本能が存在している。私たち人間は他の生物と同じ脳の構造をしているが、愛着のプロセスを意識する能力を持っているのは人間だけだ。(p42)

の説明は思春期の親子関係を取り戻す―子どもの心を引き寄せる「愛着脳」という本によるもので、2つの点を教えてくれます。

■人間も動物も、「愛着脳」を持っている
■人間だけが、そのプロセスを意識できる

愛着とは親子の親密な関係のことですが、もしそれが損なわれると、愛着障害という深刻な情緒的混乱を来たすことがわかっています。

それは何も、人間特有の現象ではありません。この本の著者ゴードン・ニューフェルドは2種類の動物の例を挙げて説明しています。

愛着の欠如は、動物たちにもどんな影響を及ぼすのでしょうか。動物たちの例を通して、いかに人間にとって愛着が大切かを再確認してみましょう。

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