創造的な人は心の断崖のふちに立っている―「天才の脳科学」を読み解く

創造性の低い人々は、親や教師や宗教上の指導者など上から言われたことに従い、条件に応じた反応が素早くできるが、創造的な人々はもっと流動的な混沌とした世界に住んでいる。

創造性の高い人は、他人の目からは変わっていたり奇妙だったりすることがあるだろう。あまり開けたままで生きているというのは、崖っぷちに生きているようなものだ。

時には崖から墜落し……鬱病や躁病、あるいは統合失調症になるかもしれない。(p148)

「創造性はだれもが持っており、トレーニングによって鍛えられる」「創造性は一握りの天才に与えられた神の賜物である」。

これらはどちらが正しいでしょうか。多くの人は前者を選びたいかもしれませんが、天才の作品や業績を目の当たりにすると、後者を選ばざるを得ないかもしれません。

実際には「創造性」とはもっと複雑なものである、というのが天才の脳科学―創造性はいかに創られるか の意見です。この本の著者は、両方とも正しいとして、前者を「通常の創造性」、後者を「並外れた創造性」と呼んでいます。

創造性とはいったい何なのでしょうか。創造性には種類があるのでしょうか。創作に携わるすべての人にとって興味深い本書を紹介したいと思います。

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なぜ人はテロに強い不安と恐怖を感じるのか―「利用可能性カスケード」という錯覚

近、テロのニュースが新聞紙面やタイムラインを駆け巡っています。このニュースの内容に触れるつもりはありませんが、今読んでいる本、ファスト&スロー(上)に興味深いことが書かれていました。

ファスト&スロー(上)は心理学の本であり、わたしたちがついつい犯してしまう認知のエラーについて書かれています。著者はノーベル経済学賞を獲得したダニエル・カーネマンであり、この分野の本としては非常に網羅的かつわかりやすく、重宝します。

この本で取り上げられている心理学の概念のひとつに利用可能性カスケードというものがあります。その説明によると、テロリストがわたしたちにもたらす影響は、テロそのものというより、利用可能性カスケードによる部分が大きいというのです。

世論の動きにそのままついて行くと、この落とし穴に陥り、テロリストの思うがままになってしまう可能性があります。利用可能性カスケードとは何でしょうか。

最初にことわっておきますが、わたしは政治や宗教について議論したり、意見したりするつもりは全くなく、単に心理学的な問題としてこの事例を取り上げているにすぎないことをお含みおきください。

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不登校にも役立つ『「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい』

うつと間違われやすく、日本の医者の9割が知らない症状「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)。

副腎が疲労し、適切なコルチゾールが分泌できなくなると、だるさや無気力などの不調が起こりやすい。

腎疲労に関する2014年11月に発行された最新書籍「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい 9割の医者が知らないストレス社会の新病 (SB新書)をやっと読みました。

慢性疲労症候群や線維筋痛症、不登校などにも関わっているとみられる副腎疲労。幸いにもメカニズムや治療法はある程度分かっており、自宅でできるセルフケアもあります。

副腎疲労とはいったいどんな問題なのでしょうか。ほかの難しい病気とはどう関わっているのでしょうか。このブログで何度か取り上げてきた副腎疲労ですが、今回もこの本に基づいて簡単に紹介したいと思います。

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絵の描き方から分かる自閉症スペクトラムの4つの特徴

僕は時々、こんなに美しい世界をみんなは知らないなんてかわいそうだと思います。…たぶん、見えているものは同じでも、見えるものを受け取る力が違うような気がします。

みんなは物を見るとき、まず全体を見て部分を見ているように思います。しかし、僕たちは、最初に部分が目にとびこんできます。その後、除々に全体が分かるのです。(p80)

れは自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心にある自閉症の作家、東田直樹さんの言葉です。自閉症スペクトラムの人の独特な認知の仕方を言い表していると思います。

この認知の仕方は、生活のさまざまな点に影響を及ぼしますが、そのひとつは、とりわけ絵を描くことに表れます。

自閉症スペクトラムの人の中にも、絵の上手い人もいれば、そうでもない人もいます。しかしその描き方は定型発達の人とは少し違っているようです。

ここでは芸術と脳: 絵画と文学、時間と空間の脳科学 (阪大リーブル)という本に基づいて、「木を見てから森を見る」「窓やドアから描き始める」「細部を描き込む」「三次元モデル」などの特徴を解説したいと思います。

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アスペルガーから見たおかしな定型発達症候群

型発達症候群(Neurotypical syndrome)は神経学的な障害で、以下のような特徴が見られます。

■社会の問題への没頭
周囲に馴染むことを最優先事項とみなす
そして集団になると、社会性および行動において硬直する

■優越性への幻想
自分の経験する世界が唯一のもの、正しいものであるとみなす

■ひとりでいることが困難
人と一緒にいるが、仲間に入らないということを苦手とする
人といるときには必ず何か話さないではいられない

■率直なコミュニケーションが苦手
本音を言わず、建前を優先する

■論理を欠いても平気
一貫性がなく、状況によって対応を変える

これは、自閉症スペクトラムのアスペルガー症候群の人から見た、いわゆる定型発達の人の特徴だといいます。

定型発達の人がアスペルガー症候群の人のことを不思議に思うように、彼らも定型発達の人のことをおかしく思っている、ということが表れています。

今回簡単に紹介する、アスペルガー流人間関係 14人それぞれの経験と工夫はアスペルガー症候群の人(AS)が定型発達の人(NT)との人間関係の仕方を説明したユニークな本です。

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