複雑に絡み合う「子どもの発達障害と情緒障害(愛着障害)」

発達の凸凹がある子は、周囲からの低い評価、親からの強い叱責、ときとしては体罰まで受ける可能性が高くなります。

その結果、自分はダメな子、あるいは悪い子、意地悪な子などといった自己イメージをもってしまいます。

このような情緒的なこじれが子どもの側に生じたときに、はじめて、周囲が対応に苦慮するような大きなトラブルへと発展してしまうのです。(まえがき)

年、自閉症スペクトラムやADHDなどの発達障害はよく知られるようになりました。しかし、発達障害がもとで生じる、二次的な障害、つまり心の問題や愛着障害については、十分な注意が払われていません。

杉山登志郎先生の本子どもの発達障害と情緒障害 (健康ライブラリーイラスト版)はそのような問題に注意を喚起する本です。発達障害が愛着障害と深く関係しているといえるのはなぜでしょうか。どんな症状が見られるのでしょうか。どう対応すればよいのでしょうか。

興味深い本だったので、本書のポイントを簡単に概観してみたいと思います。 続きを読む

治りにくい病気の背後にある大人の発達障害「重ね着症候群」とは

「重ね着症候群」。子どもの人格発達の障害 (子どもの心の診療シリーズ)いう本を読んでいて出くわした興味深い概念です。

統合失調症やパーソナリティ障害、摂食障害、さまざまな治りにくい精神科疾患、いろいろな身体症状を訴える心身症。その背後に、子どものときから見過ごされていた未診断の発達障害がある、ということが、最近の臨床研究からわかってきたそうです。

それらの疾患は、一般には心因原性と思われていますが、重ね着症候群の場合には、じつはそうではなく、発達障害の治療をすることでよくなるといいます。

特に言及されていませんが、心身症の中には、慢性疲労や慢性痛も含まれているかもしれません。

このエントリでは、広島市精神保健福祉センターの衣笠隆幸先生による記述や、他のネット上の資料にもとづいて、「重ね着症候群」の実態に迫りたいと思います。

 

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発達障害の関連遺伝子を特定するプロジェクト

達障害の関連遺伝子を特定するいろいろなプロジェクトについて、最近幾つかニュースに出ていました。

■大企業による発達障害の研究

まずは、Googleが、自閉症スペクトラム(ASD)の人とその家族10000人のゲノムを解析する計画「MSSNG」を明らかにしたというニュースがありました。クラウドでゲノム解析をすることで、より効率的に調査を進められるそうです。

グーグルがゲノム解析を支援:自閉症研究などと提携 « WIRED.jp はてなブックマーク - グーグルがゲノム解析を支援:自閉症研究などと提携 « WIRED.jp

Googleは以前もガンの研究にクラウドを用いているそうですが、こうしたIT関係の大企業が、話題の健康分野に乗り出した例としては、最近ではSamsungの事例もありました。

Samsungは、自閉症の子どもの治療を支援するアプリケーション「Look At Me」をリリースしたと報道されていました。

Samsung、自閉症児童治療支援アプリケーションの「Look At Me」をリリース - TechCrunch はてなブックマーク - Samsung、自閉症児童治療支援アプリケーションの「Look At Me」をリリース - TechCrunch

子どもたちに視線を合わせる行為の練習をさせるAndroidアプリケーションだそうです。盆唐ソウル大病院や延世大学の医師や教授などが共同開発したもので、Google Playで公開されています。

記事では、こうした活動は話題の障害を取り扱う企業PRとしての側面があるとされていますが、大企業が乗り出すことで、診断や治療の技術が進むことにも期待したいものです。

日本の企業でも、任天堂が、健康事業への参入を明らかにしており、第一弾は、疲労と睡眠という、日本人にとって悩ましい分野を選んだそうです。

任天堂が「疲労と睡眠の見える化」に挑戦―渡辺先生や倉恒先生と協力!
ニンテンドーが、「疲労と睡眠」のQOL事業において、疲労の専門家と協力するそうです。

■国立精神神経センターによるAUTS2遺伝子分析

次にニュースになっていたのは、国立精神神経センターによるAUTS2 (Autism Susceptibility Candidate 2)遺伝子の働きの解析です。

AUTS2遺伝子は、広い領域に存在する遺伝子で、2002年に自閉症スペクトラムの患者で見つかり、その後、統合失調症や注意欠陥多動性障害(ADHD)、知的障害、薬物依存、てんかんなどのさまざまな精神疾患に関わることがわかってきました。

今回の研究により、さまざまな精神疾患において広く共通の病理が存在することを示唆されたと言われています。「AUTS2遺伝子の機能が阻害されると、神経細胞の移動が障害され、神経突起の伸長と分岐が妨げられて、多様な精神疾患が引き起こされる」そうです。

自閉症、統合失調症などさまざまな精神疾患に関わる遺伝子の働きが明らかに-NCNP - QLifePro 医療ニュース はてなブックマーク - 自閉症、統合失調症などさまざまな精神疾患に関わる遺伝子の働きが明らかに-NCNP - QLifePro 医療ニュース

 多様な精神疾患に関わる遺伝子の働き解明 | サイエンスポータル はてなブックマーク - 多様な精神疾患に関わる遺伝子の働き解明 | サイエンスポータル

■12000家族分の遺伝情報を分析する英国のプロジェクト

最後に、12000家族分の発達障害の遺伝子を分析する大規模な英国のDDDプロジェクトについてもニュースになっていました。

現在のところ、診断未確定の重度の障害がある子ども1133人とその両親のゲノムの詳細な調査によって、発達障害に関わる12個の遺伝子が特定されたそうです。

これらの遺伝子変異をもたらす原因はまだわかっておらず、出生前に起こるものもあれば、負傷や感染症、環境的影響などの要因によって出生後に発現する可能性があるものもあるそうです。

時事ドットコム:発達障害の関連遺伝子12個を特定、英研究 はてなブックマーク - 時事ドットコム:発達障害の関連遺伝子12個を特定、英研究

発達障害の関連遺伝子12個を特定、英研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News はてなブックマーク - 発達障害の関連遺伝子12個を特定、英研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

これらの遺伝子研究は、まだ効果的な治療法や簡便な診断方法に結びつくものではありません。雲をつかむような話にすぎませんが、大企業が研究に乗り出したり、大規模なプロジェクトが実施されたりしていることは、今後の研究の発展に期待できる要素だと思います。

脳科学が明らかにした発達障害と愛着障害、その違い

誌、小四教育技術 2015年 01月号 [雑誌]に載せられた、福井大学の友田明美先生による、発達障害と愛着障害の特集を読みました。

発達障害や愛着障害は、近年注目されることが多くなっています。他の子どもと違ったり、大人になってから周囲と馴染めなかったりすることで、もしかすると自分や子どもが、発達障害や愛着障害なのではないか、と考える人も増えてきました。

しかし本当に発達障害なのだろうか、あるいは発達障害と愛着障害のどちらなのだろうか、といったことは見分けにくく、医療の場でも混乱しているように見えます。

そんな中、この雑誌の特集の研究では、

■2歳になる前に自閉症スペクトラムの診断を下せる可能性がある

■ADHDと愛着障害では、脳の報酬系の働きが異なる

ということについて書かれていました。興味深かった部分についてメモしておきたいと思います。

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子どもの睡眠を守り睡眠教育を推進するボディクロック(体内時計)研究会が発足

ディクロック研究会という団体が発足したそうです。ボディクロックは「体内時計」のことで、特に子どもの睡眠を守り、睡眠教育を推進することを目的とした専門家によるグループだそうです。

ボディクロック研究会が発足~体内時計の改善による睡眠衛生を促進~ | マイナビニュース はてなブックマーク - ボディクロック研究会が発足~体内時計の改善による睡眠衛生を促進~ | マイナビニュース

【健百】受験成功のコツは"体内時計"の改善?―研究会発足 | あなたの健康百科 

ボディクロック研究会 はてなブックマーク - ボディクロック研究会によると、

山口大学 時間学研究所 明石真教授

愛媛大学医学部附属病院 睡眠医療センター 岡 靖哲センター長

久留米大学医学部 環境医学講座 松本悠貴助教授

久留米大学医学部 内村直尚医学部長

有限会社Sleepeace(スリーピース) 三橋 美穂代表

といった方々が中心となっているようです。特に明石真教授は、髪の毛の根元に付いている毛根細胞の時計遺伝子を調べることで、体内時計の乱れが分かる検査法を開発されたことで、このブログでも取り上げました。

“勉強や仕事開始の3時間前に起床する”ことでボディクロックを朝型に

“起床時に朝日を浴びる”ことでボディクロックをリセット

“朝食を毎日食べる”ことでボディクロックをスタート

“10分程度の昼寝を午後3時までに取る”ことでボディクロックの微調整

“平日・休日の起床時間を一定にする”ことでボディクロックのズレ防止

ということをパフォーマンス向上のボディクロックルールとして提唱しています。

また、(1)不眠による経済損失3.5兆円の削減に貢献 (2)子どもの体力向上を支援し、東京オリンピックでのメダル獲得に貢献 (3)子どもの学力世界1位の達成を支援 の3つのビジョンを定めています。

ほかにも、睡眠の質、量に加え、位相(リズムの乱れ)という三要素で睡眠を評価する「3DSSによる睡眠の評価」が、公式サイトで受けられます。

「良好型」「不規則型」「短眠型」「質低下型」「不規則・短眠型」「不規則・質低下型」「短眠・質低下型」「不良型」という8タイプで診断され、説明文が読めるようになっています。ちなみにわたしは「不規則型」でした。都市部に住む人や20代以下の若い人に多いそうです。

子どもの睡眠の啓発団体というと、神山潤先生の早起き 早寝 生活リズム | 子どもの早起きをすすめる会 はてなブックマーク - 早起き 早寝 生活リズム | 子どもの早起きをすすめる会を思い起こさせますが、独自性については今後の活動を見ないと分からないと思います。

朝型や早起きが理想とされていますが、米国小児科学会によると、ティーンエージャーが夜型化するのは、生理的現象なので、むしろ学校の始業時間を遅くしたほうがいいと言われているそうなので、それが最適なのかどうか、少々疑問に思います。

オリンピックのメダルや学力世界一という文言は、成果至上主義を思わせて、わたしはあまりいい印象は持ちませんでした。もちろん、睡眠を整えると、四当五落のような方法より学力が上がる、ということを言いたいのかもしれません。

社会の夜型が進んで、子どもの睡眠時間が削られていることは確かなので、専門家の観点からの啓発活動に期待したいところです。