多重人格治療のパイオニア ラルフ・アリソンの素顔―患者のために涙を流した医師

「ラルフ、あなたが診てくれって言った患者のことだけど、あなた、何を相手にしてるかわかってる?」

「いや、キャサリン。わからないからテストをしてくれって頼んだんじゃないか」

「あなたが相手にしているのはね、もう一人の『私という他人』なのよ」(p33-34)

れは1972年3月のことでした。サンタクルスで病院を構えていた医師ラルフ・アリソン(Ralph B. Allison)のところへ、一人の女性が診察にやってきました。

その女性、ジャネットは29歳でしたが、高校生のころから長い期間、精神的な苦痛を抱えていました。以前の病院では統合失調症(当時は精神分裂病)と診断されていましたが、薬にまったく反応しませんでした。

アリソンは、ジャネットが「自分の中から声が聞こえる」と怯えていることを不可解に思いました。普通、統合失調症の患者は自分に問題があるとは感じず、幻聴に違和感を覚えたりしないからです。

さらに、ジャネットは治療の中で安定しているように思えた時期に突然、不自然な自殺未遂をしてアリソンを驚かせました。アリソンは頭を抱えて、信頼できるプロの精神科医キャサリンに意見を求めました。

そのときに交わされたのが、冒頭に引用した、「私」が、私でない人たち―「多重人格」専門医の診察室からに載せられている会話です。

ラルフ・アリソンはキャサリンの言葉にショックを受けました。このとき彼はまだ知りませんでしたが、この日を境に、彼は『私という他人』すなわち「多重人格障害」と深く関わることになり、やがてこの分野におけるパイオニアまた権威の一人となるのです。

この記事では、多重人格障害(MPD)また解離性同一性障害(DID)の権威として、医療から見放された患者たちのために命をかけて闘い、ISH(内的自己救済者)などのユニークな概念を打ち立てた医師ラルフ・アリソンの素顔に迫ります。

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人への恐怖と過敏な気遣い,ありとあらゆる不定愁訴に呪われた「無秩序型愛着」を抱えた人たち

愛着回避と愛着不安がいずれも強い愛着スタイルは、恐れ・回避型(fearful-avoidant)と呼ばれる。

対人関係を避けて、ひきこもろうとする人間嫌いの面と、人の反応に敏感で、見捨てられ不安が強い面の両方を抱えているため、対人関係はより錯綜し、不安定なものになりやすい。(p236)

れは、愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)という本で説明されている、ある特殊なタイプの愛着スタイルを持つ人たちの感じ方です。

わたしたちは一般に、世の中には、内向的な人と外向的な人がいることを知っています。内向的な人は人づきあいが苦手で引きこもりがちな人たちであり、外向的に人は逆に一人でいるのが寂しく、どんどん交友を広げていきます。

ところが、中には外向的とも内向的とも言いがたい、矛盾した振る舞いをみせる人たちがいます。人づきあいがうまく、気を回すのが得意で、初対面の人とも親しげに振る舞える。それなのに、人への恐怖や根深い不信感を秘めている人たちです。

こうした人たちは、表面的にはよく配慮の利く「良い人」とみなされていますが、心の中では他人への恐怖がうずまいていて、決して他人に心から親しみを感じることがありません。

人間嫌いなのに配慮が得意、というのはどう考えても矛盾しているように思えます。それもそのはず、このような人たちは「無秩序型」また「混乱型」と名づけられた歪んだ愛着を抱えているのです。

当の本人も、このような矛盾した感情に苦しめられていますが、まるで呪縛をかけられたかのように抜け出すことができません。その結果生じる強烈なストレスは、その後の人生全体に破壊的な影響を及ぼすこともあります。

いったいなぜ、このような相反する混乱した愛着が生まれるのでしょうか。

この記事では、ヴァン・デア・コーク博士の身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法などに基づき、人への恐怖と気遣いに絡め取られた「無秩序型愛着」という呪いの原因、そしてそれがもたらすありとあらゆる災厄というパンドラの箱の蓋を開けて調べてみたいと思います。

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子どもの慢性疲労症候群の15~30%は難治性―「教育と医学」CCFS特集の感想

日発売された 教育と医学 2016年 6月号 [雑誌]の中の特集2「疲れやすい子:小児慢性疲労症候群」を読んでみました。

特集はp58-83にわたって組まれており、CFS研究者の三池先生、倉恒先生、水野先生が執筆されています。

長年CFS研究に携わってこられた専門家たちによる異なる角度からの解説や、CCFSの治療やに関するデータなど、CCFSの深刻さを理解するのに役立つ内容でした。

詳しくはぜひ本書を読んでいただきたいと思いますが、全体の概要および、個人的に印象に残った部分を少しメモしておきます。

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慢性疲労・慢性疼痛の専門病院「東京リウマチ・ペインクリニック」オープン。線維筋痛症の岡寛先生が院長

2016年5月2日に、慢性疲労や慢性疼痛の専門病院として、線維筋痛症を専門とする岡寛先生の病院「東京リウマチ・ペインクリニック」が東京都中央区にオープンしたそうです。

東京リウマチ・ペインクリニック(関節リウマチ、慢性疼痛、慢性疲労の専門クリニック) はてなブックマーク - 東京リウマチ・ペインクリニック(関節リウマチ、慢性疼痛、慢性疲労の専門クリニック)

痛みや疲労に特化したクリニックがオープン|2016年_医療の現場レポート|ニュース|Medical Tribune

岡 寛院長( 東京リウマチ・ペインクリニック) | ドクターズ・ファイル

岡寛院長は30年前に、「これからは免疫学が医学の主役になる」と思い立ち、リウマチや線維筋痛症の治療のパイオニアとして活躍されてきた方だそうです。

以下に病院の情報をまとめますが、2016/05/22時点のウェブサイトによる情報であり、今後変わる可能性もあることにご注意ください。

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発達障害や線維筋痛症でも受給できる? 制度改正にも対応の「障害年金というチャンス」感想

汎性発達障害や高次脳機能障害、慢性疲労症候群、脳脊髄液減少症、線維筋痛症、化学物質過敏症…。

これらは見た目には大変さがなかなか伝わらないのに、当人は、非常に苦痛の多い日常生活を送っていることの多い、理解されにくい病気や障害の一例です。

重い症状のために働くこともままならない、しかも通院でどんどんお金が減っていく。そして長年治療してもほとんど良くならない。そんな悪循環に追い込まれている人は少なくありません。

そのような状況で、少しでも生活を支えるために活用できる制度の中に、障害年金制度があります。

しかし手順が複雑だったり、医師や窓口の職員が制度を理解していなかったり、そもそも制度を知らなかったりして、本来は受給資格があるのに、支援を受けられず困窮してしまっている人が多くいるといいます。

今回読んだ障害年金というチャンス!という本は、この複雑で理解しにくい制度を専門とする社会保険労務士たちによる、わかりやすい解説本です。

ガンなどのメジャーな疾患から、冒頭に挙げた理解されにくい病気のケースも含めて、障害年金とはどんな制度で、だれが活用できるのか、どうやって申請するのか、といったことが詳しく書かれています。

この記事では、この本の感想として、障害年金制度を取り巻く問題点や、最近改正された点、社会保険労務士の役割などについて考えてみました。

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