心は複数の自己からなる「内的家族システム」(IFS)である―分離脳研究が明かした愛着障害の正体

ありがたいことに、分離脳研究から多くのことが学べた。

手術で二つの半球を分離すると二つの心をもつひとりの人間になるという最初の定義づけに始まり、長い道のりを経た今日では、決定を行動に移すことのできるようになる複数の心を私たちの誰もが実際にもっているという、直観に反するような見解に到達した。(p402-403)

たしたちの脳は、ただひとつの自己ではなく、「複数の心」、複数の異なる自己から成り立っている。

そんなことを書くと、まるでドラマやマンガに出てくる現実離れした話だ、と感じるかもしれません。たいていの人にとって、自分はひとつであり、心の中に複数の自分がいる、などと言い出す人は突拍子もなく思えます。

ところが、冒頭の本、右脳と左脳を見つけた男 - 認知神経科学の父、脳と人生を語る -の著者、マイケル・S・ガザニガは、認知神経科学の研究を通して、「複数の心を私たちの誰もが実際にもっているという、直観に反するような見解」に至りました。

その後、多くの研究を通して、わたしたちが単一の自己を持っていると感じるのは、巧妙な錯覚であることがわかってきました。実際には、人の脳は、異なる複数の心から成る社会のようなもの、「内的家族システム」(IFS:Internal family systems)であることが明らかにされつつあります。

そして、わたしたちが経験する、さまざまな精神的な葛藤、抑うつ、衝動、依存症などの背景には、この内的家族システムの不和が関係していることがわかってきました。

わたしたちの心が複数の自己から成り立っているといえるのはどうしてでしょうか。それは愛着障害や、解離性同一性障害、イマジナリーコンパニオン(空想の友だち)などの現象とどのように関係しているのでしょうか。

自分が無意識のうちに、内的家族システムの問題を抱えているとしたら、どのようにしてそれに気づき、問題を解決することができるのでしょうか。

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友田明美先生のTED「愛着―親と子のためのガイド」視聴メモ

どものの愛着障害や虐待の専門家である、福井大学の友田明美先生によるTEDが昨2016年末に公開されていました。長さは14分半ほどで、日本語で話されています。

以下は動画の解説文の日本語訳です。

友田明美さんは、虐待を受けた子供の小児科医であり、虐待された子供の脳機能への影響を研究する研究者です。

乳児の脳は、愛着の影響を強く受けています。したがって、乳幼児の愛着の絆が子供に与えられない場合、子供は十分な構造、認識、理解、安全性、相互協調が困難になります。

彼女は虐待を受けている子供と介護者の両方を救うために、愛情のこもったアイデアを共有しています。

友田明美は、虐待を受けた子供のために働く小児科医です。彼女は、小児期の困難な経験が脳に与える影響の研究者でもあります。

彼女は研修医だったとき、3歳の虐待を受けた少女の死に直面しました。この経験から、彼女は虐待された子供の脳機能への影響を研究するために米国に行きました。

彼女は自分の治療結果だけでなく、社会への虐待の事実を明らかにするために、自分の研究成果を活用してきました。彼女の意見では、子供だけでなく世話する人も救われなければならない。それはこの問題を解決へ導きます。

このような観点から、彼女は様々な専門家と協力して研究範囲を広げています。福井大学病院の小児心身医学科長として、子供の心の問題を解決し、心の発達をサポートするために努力しています。

続いて、動画の内容のメモを書いておきます。

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鏡が怖い,映っているのが自分とは思えない―解離性障害は「脳の地図」の喪失だった

が怖い…。

あなたは日常生活の中で、そのように感じることがありますか?

「鏡が怖い」というのは、ある程度、一般の人たちに普遍的にみられる感情です。鏡の中を覗き込めば、本当はいないはずの何かが映っている、といったシーンはホラー映画の定番ですし、ファンタジーな物語では鏡が異世界への扉になることがよくあります。

しかし、それとはまた違った形で、より根源的な恐怖を鏡に対して抱く人たちがいます。解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 (ちくま新書)という本はこう述べています。

解離の患者が「鏡を見るのが怖い」と報告するとき、おおかたその理由は二つに分けられる

一つは、「鏡を見てもそこに映っているのが自分の姿であるという実感がない」ことである。

さらに一つは、「鏡に自分以外の何か、普通は映らないものが映っているような気がする」とか「自分の背後に何かがいるのが映っていそうでとても怖い」という報告である。(p56-57)

解離性障害の人は、単に、一般の人たちが「鏡が怖い」と思う以上に、鏡に恐怖を覚えることがあります。

トラウマ研究の専門家ベッセル・ヴァン・デア・コークも、身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法の中で、幼少期にトラウマを負った子供たちに、やはり鏡に関係した不可解な症状が見られることを語っています。

彼らは反抗的であるにせよ、しがみついてきて離れないにせよ、一人として同年代の典型的な子供たちのようには、周りの世界を探検することも、楽しく遊ぶこともできないらしい。

自己感覚をほとんど発達させていない子供もいて、そんな子は、鏡に映った自分の姿を見て自分だと気づくこともできなかった。(p175)

こうした感覚はなぜ生じるのでしょうか。いくつかの本から、解離性障害における「鏡が怖い」という感覚が、単なる気持ちの問題ではなく、もっと深い脳のメカニズムに基づいていることを見てみましょう。

そしてこの不可思議な現象が、幻肢痛や体外離脱体験、さらには拒食症や慢性疼痛といった、別のさまざまな病気の仕組みとも関係していて、「身体イメージ障害」という最新の医学的概念と結びついている、ということを考えてみたいと思います。

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「解離型自閉症スペクトラム障害」の7つの特徴―究極の少数派としての居場所のなさ

精神科臨床では、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)と診断される患者のなかに解離症状を併せ持つ一群がいることは知られている。

ここではそういった病態を、「解離型自閉症スペクトラム障害(解離型ASD)と呼んでおく」。(p192)

れは、先週 発売された解離の舞台―症状構造と治療の中で、解離性障害の専門家である、柴山雅俊先生が述べている言葉です。

解離性障害は、一般に、トラウマ的な経験をきっかけに記憶が失われたり、現実感を喪失したり、人格交代が生じたりする、さまざまな困難な症状を伴うものです。

近年の研究によると、こうした解離症状を示す人たちの中に、自閉スペクトラム症(ASD)つまり、アスペルガー症候群などの発達障害の人たちが含まれていることが明らかになってきました。

たとえば、つい昨日発売されたASD当事者の天咲心良さんによる自伝的小説COCORA 自閉症を生きた少女 1 小学校編 では、子どものころの辛い経験がきっかけとなって解離性同一性障害(DID)などの解離症状に苦しめられたことが綴られています。

ASDの人たちの解離症状は、一見、一般的な解離性障害の人たちと似ているようにも見えますが、実際には同じ「解離」と言っても、定型発達者とASDの人とでは、異なった傾向があるそうです。

それゆえに、柴山雅俊先生の本では、そうした解離症状を示すASDの人たちを、通常の解離型障害とは異なる、「解離型自閉症スペクトラム障害」(解離型ASD)として区別し、別個に考察されているのです。

この記事では、この本解離の舞台―症状構造と治療を紹介するとともに、解離型ASDの人たちの7つの特徴を、ASDの人たちの具体的なエピソードも交えながら調べてみましょう。

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【1/27】自閉症スペクトラム(ASD)の女性による自伝的小説が発売。2/9まで第一巻無料配信

閉症スペクトラム障害(ASD)[アスペルガー症候群]の天咲心良さんによる、これまでの経験を振り返って綴った自伝風小説、COCORA 自閉症を生きた少女 1 小学校 篇COCORA 自閉症を生きた少女 2 思春期 篇が、今日1/27に出版されました。

自閉症スペクトラム~発達障害の当事者による「壮絶な告白」(天咲 心良) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

自閉症を生きた少女の「奇跡の自伝」──集団侮蔑、人格混乱の果て|今日のおすすめ|講談社BOOK倶楽部

中村うさぎ氏、杉山登志郎氏も絶賛! 発達障害の当事者が自らの壮絶な体験を克明に描いた衝撃の「奇跡の物語」 : ニュースリリース : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

『見えない障害』に理解のない教師による虐待、PTSDや解離性同一性障害の発症などに苦しみながらも、思いやりのある理解者との出会いによって成長してきた経験がASDならではの正確な記憶力によって回想されています。

このブログでも著書を参考にさせていただいている、子どもの発達障害やトラウマ研究の専門家の杉山登志郎先生は、この作品について次のように述べて推薦しておられました。

発達障害と精神的虐待がもたらす多重で複雑な内奥を世界で初めて開示した作品

今日発売されたのは二巻までですが、全三部作の予定で、「青年期 篇」はのちに発売とのこと。心良さんご自身による内容の紹介によると、それぞれ次のような内容だそうです。

私の本は巻が進むごとに読者対象が移行していくようなものになるのではないかと思っています。

1巻はもちろん自閉症スペクトラムに関わる人たちに特に読んでもらいたいのですが、2巻はアイデンティティの喪失感や人との関係、すれ違いなどに苦悩する人に読んでもらうと、何か感じてもらえるのではと思います。

3巻目は恐らく、自我の確立とか、自分の中にある影との戦いとか、より人間の根本を考えるような、『人間』らしく生きていく方法を考えるものになると感じています。

第1巻COCORA 自閉症を生きた少女 1 小学校 篇は、2/9(木)までの期間限定で電子版が無料配信されるそうです。

発達障害を持たない人がにとっては、ASDの子どもが成長のさなかで経験する当人視点の世界を理解するために、また同じASDの人にとっては自分と同様の辛さを乗り越えてきた人がいることを知るために、この機会に読んでみるといいかもしれません。