PTSDは「心の傷」ではなく脳の炎症を伴う病気―トラウマ記憶の治療法をめぐる最近の研究

PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、新たな薬物療法のアプローチが開発されているというニュースが、ここ数ヶ月の間に何度か報道されていました。

2016年8月のニュースでは、トラウマ記憶を短期間思い出させたあと、海馬の神経新生を刺激する薬物であるメマンチンを用いることで、記憶を修正できる可能性があるということ。

2016年11月のニュースでは、PTSDの患者では、脳のミクログリア細胞に炎症がみられ、炎症を抑える薬物であるミノサイクリンを投与することでトラウマに伴う行動の異常が少なくなること。

マウスでの実験成果をそのまま人間に当てはめるわけにはいきませんが、PTSDが脳の炎症という生化学的な一面を持っていることを明らかにした興味深い研究で、被災者を対象に臨床試験計画も進められているそうです。

そのほかにも、VRやニューロフィードバックを用いた治療など、近年のPTSDやトラウマ記憶に関する研究を、簡単に概観してみました。

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抑うつ感や自殺念慮・罪悪感には、それぞれ血液中の異なる物質が関与している(九州大学の研究)

州大学などの共同研究グループが、うつ病・躁うつ病の患者の血液を解析して、抑うつ感や、罪悪感、自殺念慮など、症状ごとに異なる代謝物が関係していることを発見したというニュースがありました。

うつ病の重症度、および「死にたい気持ち(自殺念慮)」に関連する血中代謝物を同定 ~うつ病の客観的診断法開発への応用に期待~ | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

うつ病の重症度、および「死にたい気持ち(自殺念慮)」に関連する血中代謝物を同定~うつ病の客観的診断法開発への応用に期待~│プレスリリース

うつ病の重症度、自殺念慮に関連する血中代謝物を同定-九大ら - QLifePro 医療ニュース

血液でうつ病の客観的診断に道 - 日経テクノロジーオンライン

うつ病の重症度や"死にたい気持ち"に関わる血中代謝物を同定 - 九大など | マイナビニュース

うつ病の重症度、採血による評価方法開発に道 九大など:朝日新聞デジタル

九大ら、うつ病の重症度や自殺念慮に関連する血中代謝物を同定 | 財経新聞

うつ病は「心の病気」や「精神的な病気」とみなされることが多く、診断も、面接や問診票など、本人の主観的な訴えに基づいて専門家が判断するのが一般的です。

しかし、今回の研究によって、抑うつ気分や、意欲低下、罪悪感、自殺念慮など、心の問題とされてきたさまざまな症状を、血液検査で客観的に測定したり、あらかじめリスクを判定したりできるようになるかもしれません。

また、自殺念慮や罪悪感といった感情が、単なる「気の持ちよう」ではなく、全身の代謝異常を伴う実体のあるものだ、という認識も深まるかもしれません。

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視力検査でわからない3つの視機能異常とは?―発達障害やディスレクシアに多い「見る力」の弱さ

見え方に問題があると言うと、近視や乱視、または老眼などによる視力低下が思い浮かぶ。

目は必要に応じて動き、色や形、物の動きや位置をとらえることは、あたり前だと私たちは思い込み、視力以外見え方の問題の存在について考えることはほとんどない。(p9)

「見る力」が弱い、と言うと、多くの人が思い浮かべるのは、視力が弱いという意味かもしれません。

ところが、冒頭に引用した学習につまずく子どもの見る力―視力がよいのに見る力が弱い原因とその支援の言葉のように、「見る力」には視力以外のさまざまな能力が含まれています。

そして、発達障害や学習障害(LD)の子どもは、視力は正常でも、一般の視力検査には表れないさまざまな「見る力」が低下しているせいで、学習につまずいたり、日常生活で苦労を味わったりすることが多いと言われています。

中には、ADHD(注意欠如多動症)の不注意や多動性など、発達障害の症状だとみなされているものが、じつは「見る力」に問題があるせいで生じていることもあるそうです。

この記事では、発達障害の子どもの視知覚認識問題への対処法などの本から、あまり知られていない見え方の異常として、見た目でわからない「隠れ斜視」、近くを見る作業が難しくなる「輻輳不全」(ふくそうふぜん)、文字や行を見失いやすい「衝動性眼球運動の弱さ」について取り上げます。

そうした気づかれにくい「見る力」の異常を検査する方法や、治療に役立つ情報も紹介したいと思います。

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「ベンゾジアゼピン眼症」とは―睡眠薬・抗不安薬で生じる薬剤性の目の疲れ、まぶしさ、まぶたのけいれんなど

■痛みや疲れで目を開けていられない
■家の中でもまぶしい、明るすぎる
■いつも目が乾いてまばたきが多い
■まぶたがピクピクする

うしたさまざまな目の不調を訴えて眼科を受診する人たちの症状が、睡眠薬や抗不安薬の副作用によって引き起こされている場合がある、というニュースがありました。

目に強い痛みと眩しさ…安定剤、睡眠導入薬で副作用 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)

睡眠薬で目の不調…減薬・断薬 主治医と相談 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)

原因となる主な薬は、ベンゾジアゼピン系と呼ばれるタイプで、このタイプの睡眠薬には、マイスリー、レンドルミン、ロヒプノール、サイレースなど、抗不安薬にはデパス、ソラナックスなど様々な薬が含まれます。

しかし、症状の原因は、神経伝達物質のひとつであるGABAの受容体に作用することにあると言われていて、GABAアゴニストというタイプに含まれるほとんどの睡眠薬で副作用として表れる可能性があるようです。

 自覚症状の程度には軽重がありますが、こうした症状を持っている症例のかなりの人々が共通して使用している薬があったのです。

それは、安定剤や睡眠導入薬として多用されているベンゾジアゼピン系あるいは同等の薬理作用を持つ薬の連用でした。

同等の薬理作用というのは脳内の神経伝達物質受容体のうち、「GABA」の受容体に作用する薬物で、ほとんどの睡眠導入薬が含まれます。

睡眠薬・抗不安薬の副作用による目の症状は、薬を減らしたり、やめたりすることで改善されますが、服薬期間が長いほど治りにくくなるともいわれています。

井上眼科病院の若倉雅登 名誉院長はこの症状を「ベンゾジアゼピン眼症」と名づけ、薬の副作用として情報を広めていきたいと述べています。この記事では、薬剤性の眼瞼けいれんについてのニュースをまとめてみました。

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「あいまい性耐性」―逆境のもとで新しい価値観を見つけ自分の人生を歩み出す力

あんまり現実というものが苦しいので、絶えず瞑想のうちに逃れていたが、これはどうやら無駄なことではなかったらしい。

今、僕は以前思っても見なかった望みや希(ねが)いを持っています。(p255)

れは、生きるための哲学 (河出文庫)という本に引用されている、ロシアの文豪ドストエフスキーの言葉です。

前向きな言葉がつづられていますが、なんとこれは、10年にわたる極寒シベリアでの獄中生活を送っているさなか、流刑地オムスクから兄に送られた手紙の一節だそうです。

人間を人間とも扱わないような残酷で悲惨な日々の中で、ドストエフスキーはより深い人生観を身につけ、自由になってからは稀代の作家として大成していきました。

わたしたちのほとんどは、強制収容所で何年も過ごすような極限体験をしたことはないかもしれません。しかし、一見平和に見える社会でも、あたかも冷たい牢獄にとらわれるような悲惨な人生を、何年も、何十年も送っている人は決して少なくありません。

幼いころからの虐待、崩壊した家庭での心労、慢性的な病気などは、文字通りの強制収容所と同じほど、昼も夜も絶え間なく心身を痛めつけます。

いつ終わるとも知れない苦しみに圧倒され、生きる意味も喜びも感じられないようなとき、どうすれば、それを乗り越えることができるのでしょうか。

生きるための哲学 (河出文庫)ポジティブ心理学が1冊でわかる本などの本から、逆境を乗り越え、自分だけの人生を歩み出すのに、曖昧(あいまい)さに向き合う力がどのように役立つかを見てみましょう。

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