文化結合症候群として考えるイマジナリーフレンド―時代や文化を取り込んで反映する解離現象

日、精神科医の林公一先生による、イマジナリーコンパニオン(IC)についての詳しい記事がアップされていました。子どものICの話題を中心に、青年期以降も残るICについて詳しい事例が紹介されています。

子どもにだけ見える「見えない友達」 | Dr.林のこころと脳と病と健康 | 林公一 | 毎日新聞「医療プレミア」

興味深い事例を集めた記事なので、ICに興味のある方はぜひご覧ください。

この記事をある方に紹介したところ、近年このようなイマジナリーコンパニオンを持つ人が増えているのだろうか、と訊かれたので、わたしの考えを簡単にメモしておきたいと思います。

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【Q&A】実はあなたにも身近な「解離」とは何なのかを知る簡単なまとめ

のブログでは「解離」という現象についてさまざまな観点から扱ってきました。

「解離」というと、自分には関係ない特殊な現象だと考えている人が多いのではないかと思いますが、決してそうではありません。

「解離」はトラウマ被害者だけに関わる現象ではなく、わたしたち人間、それどころかほとんどの動物が経験する、とても普遍的な生物学的現象です。

トラウマ経験に限らず、ストレスの多い環境のせいであれ、はたまた身体的疾患や交通事故の後遺症のせいであれ、感覚刺激が過剰になる人はだれでも「解離」を頻繁に経験しています。

解離という概念を知らなければ説明しようがない症状はとても多くあります。特に発達障害やアダルトチルドレンの当事者が解離という概念について知らずにいるのはもったいないと思います。

この記事では、ブログで扱ってきた「解離」についての話題を、Q&A形式で簡潔にまとめました。より詳しい記事に飛べるリンク集にもなっています。

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解離を別の反応で置き換えて意識を「今ここ」に保つための実践的ツールボックス

の記事は、身体志向のセラピーによる解離の治療について考えた以下の記事の補足です。

「からだの記憶」の治療法―解離と慢性疲労のための身体志向のトラウマセラピー
解離やPTSDは「からだの記憶」によって引き起こされる「からだ」を土台として生物学的な現象である、という理解にもとづき、身体志向のトラウマ・セラピーについて考察しました。

さまざまなトリガーによって解離しそうになったときに、また慢性疲労や慢性疼痛などの症状が解離反応の一部として生じている場合に、他の別の方法で置き換えて解離を防ぎ、「今ここ」にとどまるためのアイデアを集めました。

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「からだの記憶」の治療法―解離と慢性疲労のための身体志向のトラウマセラピー

「ほとんどの人は」とラヴィーンが指摘するように、「トラウマを〈精神的な〉問題、さらには〈脳の病気〉だと考えている。しかし、トラウマはからだの中にも生じる何かなのである」。

実際に、トラウマが最初に、真っ先にからだに生じることをピーターは示している。トラウマに関連している精神状態は重要ではあるけれども、二次的なものである。からだから始まり、こころが後に続くのだ、と彼は言う。

したがって、知性や情動さえも関与させる「対話による療法」では十分に深いところまで到達しないのである。(p xii)

れは、身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアのまえがきに寄せられたカナダのサイコセラピスト ガボール・マテの言葉です。

ガボール・マテはわたしにとって重要な気づきをくれた医師でした。彼のことを知ったのは、慢性疲労症候群(CFS)の専門医である三浦一樹先生のおかげです。

外旭川サテライトクリニックの三浦先生は、こちらの記事の中で、慢性疲労の原因を知るための本として、ガボール・マテの身体が「ノー」と言うとき―抑圧された感情の代価を勧めていました。

当時、わたしは愛着と解離について学びはじめたばかりでしたが、ガボール・マテは、精神神経免疫学の知見を通して、これまで「こころ」の問題として知られていたものが、慢性疲労や慢性疼痛、自己免疫疾患などの「からだ」の症状として現れる理由を解き明かしてくれました。

この本の中で、ガボール・マテは、その原因を失感情症や解離と結びつけています。これまで愛着や解離を心理的な反応だと思いこんでいたわたしに、生物学的な観点を与えてくれたすばらしい本です。(p363)

そのガボール・マテが、解離と不動状態、そして慢性疲労が「からだの記憶」によってもたらされる生物学的現象であることを説明したピーター・ラヴィーンの身体に閉じ込められたトラウマのまえがきを書いていたことには、運命的な邂逅を感じます。

ガボール・マテは、「トラウマに関連している精神状態は重要ではあるけれども、二次的なものである。からだから始まり、こころが後に続くのだ」というラヴィーンの意見に賛同しています。

それゆえ、『知性や情動さえも関与させる「対話による療法」では十分に深いところまで到達しない』と言います。身体に刻まれたトラウマを治療するには、カウンセリングのような心理療法ではなく、「からだ」を対象とした身体志向の治療が必要なのです。

身体志向のトラウマ・セラピーは、あまり馴染みがないかもしれませんが、その分野に通じているセラピストは日本国内でも少数ながら見つけることができます。

たとえば、ラヴィーンが考案したソマティック・エクスペリエンス(SE)をはじめ、近年話題になっているマインドフルネス、ハコミ・メソッドボディマインド・センタリング(BMC)、アレクサンダー・テクニークなど、身体志向のトラウマセラビーにはさまざまなものがあります。

この記事では、一つずつ詳しく取り上げる代わりに、その根底に共通する考え方に焦点を当て、トラウマ障害に関わる「からだの記憶」とは何か、身体志向のセラピーで大事なポイントは何か、という点を見ていきたいと思います。

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「こんなに学校に行きたいのにどうやっても行けない」理由―生物学から読み解く不登校のメカニズム

の記事は解離と慢性疲労について考えた以下の記事の5つ目の補足です。

だから君は慢性疲労に閉じ込められた―生きるエネルギーを枯渇させる解離そして不動状態
解離と慢性疲労は深く関係していて、不動系という生物学的メカニズムによって引き起こされているという点を、不登校や小児慢性疲労症候群の研究と比較しながら分析してみました。

本文では、解離と不動状態というキーワードを考慮することによって、不登校や小児型慢性疲労症候群の奇妙なさまざまな症状を、筋道立てて説明できることを示しました。

たとえば、小児型慢性疲労症候群の子どもたちが、「不登校になった理由を説明できない」のは、それが心理的な問題ではなく、慢性的な拘束ストレスによって、からだに叩き込まれた手続き記憶による不動状態だから、と分析しました。

この補足5では、不登校・小児型慢性疲労症候群の子どもたちが経験する矛盾した葛藤について、掘り下げて考えたいと思います。

その矛盾した葛藤とは、三池輝久先生が、学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてている (講談社プラスアルファ新書)の中で紹介している次のような状態です。

そのような女子学生が一人、私の外来を訪れた。友人もできて学校は面白い、勉強もしっかりとついていける。喜びに目を輝かせて私に報告してくれたのは一学期の終わり。

ところが二学期がはじまりなぜか学校から足が遠のきはじめる。本人はどうしても行きたいという気持ちが強い。学校は嫌いではない。

「なぜだろう、先生なぜ私は学校へ行けないのでしょうか。こんなに行きたいのに」と涙ながらに訴えるが私にもわからない。(p145)

「どうしても行きたいという気持ちが強い」「学校は嫌いではない」。

それなのに「なぜ私は学校へ行けないのでしょうか。こんなに行きたいのに」と涙ながらに訴える。

わたしも経験しましたが、これは不登校状態の最も悲痛な体験のひとつで、こころではどうしても学校に行きたいのに、なぜかからだがどうしても動いてくれない、という奇妙なからだとこころの解離状態になります。

本人はこれほど強い葛藤に悩まされているのに、「学校嫌い」「怠け」「行きたくないから仮病を使っている」などと残酷な言葉を浴びせられるのは耐えがたい苦痛です。

なぜそんな状態に陥るのか、本人はまったく理由を説明できず、わたしも当時はわけがわかりませんでした。しかし今では、はっきりした医学的理由を提示できるようになったので、この補足にまとめたいと思います。

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