概日リズム睡眠障害の非24時間型と睡眠相後退型の違いが見つかる―体内時計が真の夜型かどうか

立精神・神経医療研究センター (NCNP)の三島和夫先生らのグループによる、概日リズム睡眠障害の最新の研究成果が発表されました。

概日リズム睡眠障害の患者の体内時計の周期を皮膚細胞から簡単に測定できるようになったほか、睡眠時間が日に日にずれていく非24時間型(non-24)と、宵っ張りの朝寝坊で固定する睡眠相後退型(DSPS)とでは、異なる特徴が見られたとのことです。

この結果は、同じ概日リズム睡眠障害といっても、治療の目指すところはそれぞれ異なっていて、規則正しい生活とは一人ひとり異なるものだ、という点を示唆しているのかもしれません。

皮膚細胞を用いて『概日リズム睡眠-覚醒障害患者』の体内時計周期の異常を同定│プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

概日リズム睡眠-覚醒障害患者の体内時計周期の異常を皮膚細胞から同定-NCNP - QLifePro 医療ニュース

NCNP、皮膚細胞を用いて個人の体内時計の周期を簡便に推定する手法を開発 | マイナビニュース

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解離と愛着から考える空想の友だち―イマジナリーコンパニオンに「出会う」人「作る」人の違い

■幼児期の子どもの半数近くに見られる空想の友だち
■小学校高学年ごろに一部の子どもに現れるイマジナリーコンパニオン
■アスペルガー症候群の子どもがしばしば持つイマジナリーコンパニオン
■遭難事故などの極限状況で現れるサードマン
■自ら願って作りだすイマジナリーフレンドやタルパ

のブログでは、解離や愛着について扱う中で、それらと深く関係していると思われるイマジナリーフレンド(空想の友だち)という現象についても取り上げてきました。

ひとえに空想の友だちと言っても、上にリストアップしたように、様々なタイプが存在しています。幼児期に現れるもの、学童期に現れるもの、果ては遭難した大人が出会うものまで様々です。

このブログで主に扱ってきたのは、健常な発達の過程で現れる幼児期のイマジナリーコンパニオン、そして少数ながら青年期にまで存在するコンパニオンです。いずれの場合も、どこからともなくいつの間にか現れる、という性質が共通しています。

ところが、ネット上を調べてみると、イマジナリーフレンドを「作りたい」、と思っている人たちが少なからずいることに気づきました。タルパとして知られる概念も、これに類するものでしょう。

様々な時期ごとに現れるイマジナリーコンパニオンや、望んで作ったイマジナリーフレンドは、それぞれ同じものなのでしょうか。それともケースごとに異なる特徴があるのでしょうか。

この記事では、どれが本物か、どれが正しいか、といった意味ではなく、似ているように見えても、それぞれ成り立ちの部分に大きな違いがある、という観点から、さまざまなタイプの空想の友だちと、解離・愛着のつながりについて整理してみたいと思います。

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なぜ子ども虐待のサバイバーは世界でひとりぼっちに感じるのか―言語も文化も異なる異邦人として考える

ある若い男性が自らの暗い経験を次のように記述している。

「人類から切り離されて、宇宙でひとりぼっちのように感じる……自分が存在しているのかどうかさえわからない……みんなは花の一部なのに、僕は未だに根っこの一部だ」(p133)

日、ある講演の中で、性的虐待のサバイバーである女性のエピソードについて話されるのを聞きました。

講師は、その女性が自殺衝動と闘いながらひたむきに生き抜いていることに触れ、わたしたちはみな、こうした憂鬱な気分や苦悩に見舞われるとしても、それを乗り越えていくことができる、と聴衆を励ましていました。

確かに勇気づけられるエピソードかもしれません。しかし、性的虐待をはじめ、子ども虐待のサバイバーが感じる苦悩は、多くの人がふだんの生活の中で感じる憂うつさや不安とは、あまりに異質で種類の違うものです。

冒頭に引用したのは、神経生理学者ピーター・A・ラヴィーンが身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアの中で述べている言葉です。続く記述にはこうあります。

トラウマを受けた人の多くがいくら頑張っても、善意のセラピストからの援助や思いやりを受け取ることがほぼ不可能なのは驚くにはあたらない

―それを欲していないからではなく、不動状態という原始的な根幹に閉じ込められ、表情やからだの動きや情動を読み取る能力が著しく低下しているからである。

彼らは人類から切り離された存在となってしまうのだ。

子供のころに常識では考えられないような経験をしてきた人は、あまりに普通でない世界に順応して育ち、異質な思考パターンを身に着け、それどころか脳さえもが常人とは違うかたちに発達し、極めつけは、自分が何者なのかさえわからなくなります。

その結果、「彼らは人類から切り離された存在となって」しまいます。サバイバーたちの苦痛は、理解「されない」ことではなく、だれも理解「できない」ほど異質なものであることから生じています。

この記事では、子ども虐待のサバイバーたちの苦痛が、家族にも医者にも理解されず、しばしば否定され、攻撃さえされてきた理由として、サバイバーたちが異なる言語を話し、異なる文化を持ち、異なる世界で育ってきた異邦人である、ということを見ていきたいと思います。

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子どもの慢性疲労と睡眠についての解説動画―大阪市大が協力するヨドネルプロジェクト

You Tubeチャンネルyodogawakuyakusyo にて、ヨドネル大規模調査に基づく、子どもの睡眠と疲労の解説動画がアップされています。

ヨドネルプロジェクトとは

平成28年度に、大阪市淀川区と、疲労研究で有名な大阪市立大学の連携により、小学校4年生から中学校2年生までの生徒約6000人を対象にした、睡眠習慣、生活習慣、学習意欲や疲労に関するヨドネル大規模調査が行われました。

大阪市:報道発表資料 脳科学で読み解く子どもの睡眠~ヨドネル6000人調査の結果報告会を開催します~

睡眠時間短いほど疲労 学年上がるにつれ蓄積 - 大阪日日新聞

この調査を分析した理化学研究所の水野敬先生は、小児慢性疲労症候群の研究もされています。小児慢性疲労症候群を特集した教育と医学 2016年 6月号 [雑誌]による、子どもの睡眠の実態調査の解説が収録されていました。

小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもは脳の情報処理で過活動が生じていることが判明
小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもの脳機能に関する理化学研究所の研究

淀川区は、こうした研究を通して、子どもの睡眠習慣改善に向けたヨドネルプロジェクトを推進しています。

以下の動画は、3/29~4/11に大阪市立大学の健康科学イノベーションセンターの協力のもと、淀川区役所で行なわれているギャラリー「すいみん科学館」のパネル展示と連動する内容だそうです。

淀川区の劇団そとばこまちに所属する田中尚樹さんが演じる「すいみんドクターK」が、ヨドネル6000人調査でわかった研究結果について解説する、という内容になっています。

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ADHDの「片付けられない」とアスペルガーの「捨てられない」の違い―脳の発達は視覚によって導かれる

溜め込み障害は強迫関連障害に属し、DSM-5で新たに登場した項目である。

これは子どもにないではないが、一般的には成人の問題である。それをあえてなぜ取り上げるのかというと、われわれ児童精神科医が遭遇することが稀ではないからである。

…われわれの経験では圧倒的にAD/HD(片付けられない)よりASD(捨てられない)のほうが目立つのであるが。(p55-56)

れは、臨床家のためのDSM-5 虎の巻という本で、児童精神科医の杉山登志郎が書いておられる「溜め込み障害」(Hoarding Disorder)についての一文です。

発達障害かどうかにかかわらず、部屋が散らかって片付けられないことに悩んでいる人は多いでしょう。本人よりも家族が頭を抱えることが多いかもしれません。

片付けられないことそれ自体は、病気や障害というほどではありませんが、ときどきメディアで報道されるゴミ屋敷のような、明らかに健康に支障を来たし、近隣の迷惑にもなるような状態は、医療の対象になるれっきとした病気です。

冒頭の説明が示すとおり、部屋が散らかるといっても、その原因には大きく分けて、どうやら2通りのタイプがあるようです。

きれい好きな人から見れば、概して同じに思えるかもしれませんが、かたやADHD(注意欠如多動症)に多い「片付けられない」と、かたやアスペルガー(自閉スペクトラム症:ASD)に多い「捨てられない」は、じつは別物なのです。

このエントリでは、「片付けられない」と「捨てられない」はどう違うのか。なぜそうなってしまうのか、という点を考えましょう。

そして、さらに視覚はよみがえる 三次元のクオリア (筑摩選書)などの本を参考に、両眼視機能視覚性ワーキングメモリといった見る力が、発達障害のさまざまな個性が形作られていく上で、意外なほど大きな役割を果たしているということを分析してみたいと思います。

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