自閉症は脳の過成長、ADHDは脳の成熟の遅れー脳画像研究による発達の違い

閉症とADHDそれぞれの脳の発達の傾向に関する研究が報道されていました。

以前から言われていたことですが、自閉症は早期に生じる脳の過成長が、一方ADHDは脳の発達の遅れが関係しているようです。

Nature ハイライト:早期脳過成長から自閉症スペクトラム障害を予測できる | Nature | Nature Research

ADHD、脳の大きさにわずかな差 大規模研究で確認 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News 

自閉症で脳のサイズが大きくなるのは、「シナプスの刈り込み」という脳の機能の最適化が十分に行われないことが一因だと考えられています。これは変化に柔軟に適応していくことの苦手さと関係している可能性があります。

またADHDでサイズが小さいことが確認された部位には、PTSDなどトラウマへの脆弱性と関係している部位が含まれていて、ストレス耐性の低さないしは過敏さを示唆しているのかもしれません。

この記事では、それぞれのニュースをもとに、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の脳の特徴について考察してみたいと思います。

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心は複数の自己からなる「内的家族システム」(IFS)である―分離脳研究が明かした愛着障害の正体

ありがたいことに、分離脳研究から多くのことが学べた。

手術で二つの半球を分離すると二つの心をもつひとりの人間になるという最初の定義づけに始まり、長い道のりを経た今日では、決定を行動に移すことのできるようになる複数の心を私たちの誰もが実際にもっているという、直観に反するような見解に到達した。(p402-403)

たしたちの脳は、ただひとつの自己ではなく、「複数の心」、複数の異なる自己から成り立っている。

そんなことを書くと、まるでドラマやマンガに出てくる現実離れした話だ、と感じるかもしれません。たいていの人にとって、自分はひとつであり、心の中に複数の自分がいる、などと言い出す人は突拍子もなく思えます。

ところが、冒頭の本、右脳と左脳を見つけた男 - 認知神経科学の父、脳と人生を語る -の著者、マイケル・S・ガザニガは、認知神経科学の研究を通して、「複数の心を私たちの誰もが実際にもっているという、直観に反するような見解」に至りました。

その後、多くの研究を通して、わたしたちが単一の自己を持っていると感じるのは、巧妙な錯覚であることがわかってきました。実際には、人の脳は、異なる複数の心から成る社会のようなもの、「内的家族システム」(IFS:Internal family systems)であることが明らかにされつつあります。

そして、わたしたちが経験する、さまざまな精神的な葛藤、抑うつ、衝動、依存症などの背景には、この内的家族システムの不和が関係していることがわかってきました。

わたしたちの心が複数の自己から成り立っているといえるのはどうしてでしょうか。それは愛着障害や、解離性同一性障害、イマジナリーコンパニオン(空想の友だち)などの現象とどのように関係しているのでしょうか。

自分が無意識のうちに、内的家族システムの問題を抱えているとしたら、どのようにしてそれに気づき、問題を解決することができるのでしょうか。

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友田明美先生のTED「愛着―親と子のためのガイド」視聴メモ

どものの愛着障害や虐待の専門家である、福井大学の友田明美先生によるTEDが昨2016年末に公開されていました。長さは14分半ほどで、日本語で話されています。

以下は動画の解説文の日本語訳です。

友田明美さんは、虐待を受けた子供の小児科医であり、虐待された子供の脳機能への影響を研究する研究者です。

乳児の脳は、愛着の影響を強く受けています。したがって、乳幼児の愛着の絆が子供に与えられない場合、子供は十分な構造、認識、理解、安全性、相互協調が困難になります。

彼女は虐待を受けている子供と介護者の両方を救うために、愛情のこもったアイデアを共有しています。

友田明美は、虐待を受けた子供のために働く小児科医です。彼女は、小児期の困難な経験が脳に与える影響の研究者でもあります。

彼女は研修医だったとき、3歳の虐待を受けた少女の死に直面しました。この経験から、彼女は虐待された子供の脳機能への影響を研究するために米国に行きました。

彼女は自分の治療結果だけでなく、社会への虐待の事実を明らかにするために、自分の研究成果を活用してきました。彼女の意見では、子供だけでなく世話する人も救われなければならない。それはこの問題を解決へ導きます。

このような観点から、彼女は様々な専門家と協力して研究範囲を広げています。福井大学病院の小児心身医学科長として、子供の心の問題を解決し、心の発達をサポートするために努力しています。

続いて、動画の内容のメモを書いておきます。

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鏡が怖い,映っているのが自分とは思えない―解離性障害は「脳の地図」の喪失だった

が怖い…。

あなたは日常生活の中で、そのように感じることがありますか?

「鏡が怖い」というのは、ある程度、一般の人たちに普遍的にみられる感情です。鏡の中を覗き込めば、本当はいないはずの何かが映っている、といったシーンはホラー映画の定番ですし、ファンタジーな物語では鏡が異世界への扉になることがよくあります。

しかし、それとはまた違った形で、より根源的な恐怖を鏡に対して抱く人たちがいます。解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 (ちくま新書)という本はこう述べています。

解離の患者が「鏡を見るのが怖い」と報告するとき、おおかたその理由は二つに分けられる

一つは、「鏡を見てもそこに映っているのが自分の姿であるという実感がない」ことである。

さらに一つは、「鏡に自分以外の何か、普通は映らないものが映っているような気がする」とか「自分の背後に何かがいるのが映っていそうでとても怖い」という報告である。(p56-57)

解離性障害の人は、単に、一般の人たちが「鏡が怖い」と思う以上に、鏡に恐怖を覚えることがあります。

トラウマ研究の専門家ベッセル・ヴァン・デア・コークも、身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法の中で、幼少期にトラウマを負った子供たちに、やはり鏡に関係した不可解な症状が見られることを語っています。

彼らは反抗的であるにせよ、しがみついてきて離れないにせよ、一人として同年代の典型的な子供たちのようには、周りの世界を探検することも、楽しく遊ぶこともできないらしい。

自己感覚をほとんど発達させていない子供もいて、そんな子は、鏡に映った自分の姿を見て自分だと気づくこともできなかった。(p175)

こうした感覚はなぜ生じるのでしょうか。いくつかの本から、解離性障害における「鏡が怖い」という感覚が、単なる気持ちの問題ではなく、もっと深い脳のメカニズムに基づいていることを見てみましょう。

そしてこの不可思議な現象が、幻肢痛や体外離脱体験、さらには拒食症や慢性疼痛といった、別のさまざまな病気の仕組みとも関係していて、「身体イメージ障害」という最新の医学的概念と結びついている、ということを考えてみたいと思います。

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「解離型自閉症スペクトラム障害」の7つの特徴―究極の少数派としての居場所のなさ

精神科臨床では、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)と診断される患者のなかに解離症状を併せ持つ一群がいることは知られている。

ここではそういった病態を、「解離型自閉症スペクトラム障害(解離型ASD)と呼んでおく」。(p192)

れは、先週 発売された解離の舞台―症状構造と治療の中で、解離性障害の専門家である、柴山雅俊先生が述べている言葉です。

解離性障害は、一般に、トラウマ的な経験をきっかけに記憶が失われたり、現実感を喪失したり、人格交代が生じたりする、さまざまな困難な症状を伴うものです。

近年の研究によると、こうした解離症状を示す人たちの中に、自閉スペクトラム症(ASD)つまり、アスペルガー症候群などの発達障害の人たちが含まれていることが明らかになってきました。

たとえば、つい昨日発売されたASD当事者の天咲心良さんによる自伝的小説COCORA 自閉症を生きた少女 1 小学校編 では、子どものころの辛い経験がきっかけとなって解離性同一性障害(DID)などの解離症状に苦しめられたことが綴られています。

ASDの人たちの解離症状は、一見、一般的な解離性障害の人たちと似ているようにも見えますが、実際には同じ「解離」と言っても、定型発達者とASDの人とでは、異なった傾向があるそうです。

それゆえに、柴山雅俊先生の本では、そうした解離症状を示すASDの人たちを、通常の解離型障害とは異なる、「解離型自閉症スペクトラム障害」(解離型ASD)として区別し、別個に考察されているのです。

この記事では、この本解離の舞台―症状構造と治療を紹介するとともに、解離型ASDの人たちの7つの特徴を、ASDの人たちの具体的なエピソードも交えながら調べてみましょう。

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