どんな辛い状況でも良いことを見つける超楽観主義者になるためのポジティブ心理学


Aさん
「この悪い状況は永久に続きそうだ」
「これではすべてが台なしになってしまう」
「私の力ではどうすることもできない」

Bさん
「この悪い状況はすぐに消えてなくなるだろう」
「自分で何とかできるだろう」
「こんな状況は今だけだろう」

れは、まったく同じ状況、つまり重い病気や不幸な出来事に直面した二人の人の、相反する反応です。あなたはどちらの考え方をしているでしょうか。

Aさんの考え方は、悲観主義、あるいは学習性無力感と呼ばれるものです。対してBさんの考え方は楽観主義、または学習性楽観と呼ばれます。

興味深いことに、ポジティブ心理学によると、悲観主義は病気を重くし、楽観主義は回復を助けるという研究が幾つも積み重なっているそうです。そして、「学習性」楽観という言葉の通り、この楽観主義を意識して身につける方法も研究されています。

楽観主義を身につけるにはどうすればいいのでしょうか。うわべだけのポジティブシンキングではなく、実践的なクリティカルシンキングを習慣にするには、どんな訓練が役立つのでしょうか。今すぐ役立つ「ロサダ比」とは何でしょうか。

ポジティブ心理学の挑戦 “幸福"から“持続的幸福"へという本を紹介したいと思います。

 

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これはどんな本?

この本は、ポジティブ心理学の創始者、また第一人者の、マーティン・セリグマン博士によるものです。ポジティブ心理学とは、建設的な感情が健康や社会にどのような影響を及ぼすかを調べる学問です。

意外に思えるかもしれませんが、セリグマン博士は、もともとポジティブな人ではありません。博士は自分のことを「生まれながらの悲観論者」だと述べています。(p98)

ネガティブの塊のような人で、いつも不機嫌なのを娘から指摘されたことをきっかけに、ポジティブ心理学が生まれたのだといいます。(p125)

それほどネガティブな人が、自分を変えるために実践してきた手法だからこそ、この本に載せられているアドバイスには価値があります。

学習性無力感―孤独、病気、死につながる

セリグマン博士は、ポジティブ心理学を研究する前に、悲観主義について研究していました。彼は1960年代に「学習性無力感」という現象を発見した研究者3人のうち1人でした。(p333)

「学習性無力感」とは、どれだけ手をつくしても悪い状況を変えられないとわかったとき、人は何も行動しなくなる、という現象のことです。つまりあきらめてしまうのです。

たとえば、騒音が鳴り響いている部屋に被験者を入れて、目の前のボタンを押せば鳴り止むのを教えます。ところがいざボタンを押してみると、まったく鳴り止みません。何度か押してみますが、それでもだめだとわかると、もうボタンを押すのをやめてしまうのです。

これは、わたしたちの日常生活でも生じる心理学的現象です。

たとえば、慢性的な病気のもとにいる人は、何をやっても症状がよくならないと、健康のための努力を一切やめてしまうかもしれません。夫婦の問題を抱える人は、何をやっても関係を改善できないと、だんまり戦術を決め込み、努力を放棄するかもしれません。

これらの人たちは、最初から悲観的なわけではなかったかもしれません。しかし、自分が何をしても状況は変わらないのだ、ということを「学習」してしまい、無力感を抱くようになったのです。

特に、幼いころに虐待されたり、慢性的なトラウマにさらされたりした人たちは学習性無力感に陥りやすく、そのせいでさらに災いを身に招く負のスパイラルにとらわれがちです。

なぜ子ども虐待のサバイバーは世界でひとりぼっちに感じるのか―言語も文化も異なる異邦人として考える
子ども虐待のサバイバーたちが、だれからも理解されず、「人類から切り離されて、宇宙でひとりぼっちのように感じる」理由について、異文化のもとで育った異邦人として捉える観点から考察します

この「学習性無力感」の状態にある人は、最初に取り上げたように、問題に対して、次のように考えます。

「これは永久に続きそうだ」「これではすべてが台なしになってしまう」「私の力ではどうすることもできない」といつも考える人たちは、実験室ですぐ無力になる。

彼らは敗北から立ち直らず、職場に自分の結婚生活上の問題を持ち込む。私たちはそのような人たちを悲観主義者と呼ぶ。

こうしたあきらめを抱いてしまうと、人は病気になり、死に至ることさえもある、ということを多くの研究が示しているそうです。

たとえば、心臓発作を起こして生き残った人たちに関する研究では、8年半後、楽観的な人16人のうち5人が二度目の発作で死んでいたのに対し、悲観的な人は16人のうち15人までが亡くなっていました。(p344)

悲観主義者は、抑うつに陥りやすく、仕事や学業、スポーツで低い能力しか発揮できず、人間関係には困難が多いことがわかっています。(p342)

学習性楽観―行動的、社交的、健康的

これに対し、先ほどの騒音実験など、いくつかの研究では、だいたい1/3ほどの人が「学習性無力感」に陥りませんでした。

その人たちは、学習性無力感に陥る人と比べて、悪い出来事について、まったく別の見方を持っていました。それは「学習性楽観」です。

最初に取り上げたように、楽観主義を示す人たちは、次のような見方をしています。

人生の妨げとなる出来事の原因が、一時的で、変わりやすく、局所的なものであると考える人たちが、実験室ですぐには無力にならない人たちであることを発見した。

実験室での逃避不可能な騒音や失恋に襲われたとき、この人たちはこう考える。

「すぐに消えてなくなるだろう」「自分で何とかできるだろう」「こんな状況は今だけだろう」。

彼らは挫折から素早く立ち直り、職場での失敗を自宅まで持ち帰らない。私たちはそのような人たちを楽観主義者と呼ぶ。(p341)

楽観主義を示す人は、どの研究でも、心血管疾患の死亡率が低いことが示されました。(p347)

シェルドン・コーエンの研究では、楽観主義者と悲観主義者に同じようにウイルスを注入すると、楽観主義者は風邪にかかりにくいことがわかりました。(p355)

なぜ楽観主義は、病気への免疫力を上げたり、死亡率を低くしたりするのでしょうか。3つの理由が挙げられています。(p367-371)

■楽観主義者は行動的である
楽観主義者は、「自分で何とかできる」と考えて、実際的な行動を起こす。悲観主義者は問題を「仕方ない」「神のおぼしめしだ」などと考えて行動しない。

■楽観主義者は仲間が多い
楽観主義者は友達が多い。サポートも多く受けられる。悲観主義者は孤独である。

■楽観主義者は免疫が強い
楽観主義者の血液は、免疫反応が強くTリンパ球が多かった。また悲観主義者は炎症性物質インターロイキン-6の分泌が多く、そのせいで風邪にもかかりやすかった。また楽観主義者は血液をドロドロにする肝臓のフィブリノゲン反応が小さかった。

ここでポイントといえるのは、一つ目の点です。しばしばポジティブシンキングの利点を説明する人は、問題を「まあいいか」「神さまの与えた試練だ」などと考えるよう勧めます。

危ない!「慢性疲労」 (生活人新書)の中では、ポジティブシンキングについて、

嫌なことはすぐ忘れる。何か嫌なことをやらされても、成長するために神が与えた試練だ、と自分勝手に都合よく解釈してしまうようにする習慣を身につけることが大切 (p187)

と書かれていますが、これは正しくありません。実際には、そうした人は、無力感を抱いている悲観主義者と同じなのです。

セリグマン博士によると悲観主義者は、竜巻が来たとき「神のご意志だ」と考えて行動しないのに対し、楽観主義者は、シェルターへ逃げると書かれています。

また喫煙の問題を抱える人の調査では、楽観主義者は喫煙をやめるのに成功しやすかったそうです。彼らは行動的だったのです。

楽観主義とは、うわべだけのポジティブシンキングではありません。博士はこう述べています。

私たちは、何も考えないポジティブ「シンキング」を教えているのではない。

私たちが教えているのは“クリティカルシンキング”、すなわち、行動を麻痺させてしまう分別のない最悪のシナリオと、現実的にあり得るシナリオとを区別する思考スキルである。

これは計画と行動とを可能にする思考スキルである。(p316)

うわべだけのポジティブシンキングと、真のポジティブシンキングの違いについては、過去に以下の記事で取り上げましたので、参考にしてください。

病気の人が習慣にしがちな偽りのポジティブ思考とは何か
病気の人はポジティブシンキングを身につけるようよくアドバイスされます。しかし意外にも、ポジティブに見える人ほど病気が重いというデータもあるのです。「身体が「ノー」と言うとき―抑圧さ