頭痛で学校に行けない子どもの脳脊髄液減少症―よく似た起立性調節障害(OD)と区別するポイントとは?


元気であったわが子が、ある日を境として頭痛を訴えるようになった。次第に、めまいや疲れなども訴えるようになった。朝が起きづらく、無気力に見える。微熱があることもあり、家の中でダラダラ横になってばかりで学校を休みがちとなった。

複数の病院、診療科で診察・検査を受けたが、「異常なし」、あるいは「風邪」「片頭痛」「頚部捻挫」「自律神経失調症」「起立性調節障害」「うつ病」「身体表現性障害」等の診断を受けた。

しかし、病院の治療・薬は効かない。比較的体調の良い時期もあるが長続きしない。病気にかかりやすくて虚弱体質になってしまった。(p91)

れは、小児・若年者の起立性頭痛と脳脊髄液減少症に載せられている、子どもの「脳脊髄液減少症」の特徴です。

子どもの不登校の原因として、最近よく知られるようになった病気に、「起立性調節障害」(OD)という思春期特有の自律神経の異常があります。

起立性調節障害(OD)の主訴は立ち上がったときの血圧異常による頭痛や疲れですが、それと似たような症状を示す重篤な病気として、「脳脊髄液減少症」が関与しているケースがあることがわかってきました。

脳脊髄液減少症は、脳脊髄液が漏れ出したり、減少したりして、頭痛やたちくらみ、疲労感、めまいなどが生じる病気です。子どもの脳脊髄液減少症は、大人の場合と違った特徴もあります。

この記事では幾つかの専門家による解説資料を参考に、子どもの脳脊髄液減少症の特徴や、起立性調節障害など、よく似た病気と区別するポイントについてまとめました。

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これはどんな本?

この記事では冒頭で紹介した、小児・若年者の起立性頭痛と脳脊髄液減少症を参考にしています。

この本は、明舞中央病院の中川紀充先生、山王病院脳神経外科の高橋浩一先生、こばやし小児科の小林修一先生、東札幌脳神経クリニックの高橋明弘先生ら、子どもの脳脊髄液減少症の専門家たちによる詳しい解説書です。

また「なまけ病」と言われて~脳脊髄液減少症~ (書籍扱いコミックス)は、脳脊髄液減少症の患者とその家族が直面する困難を描いたマンガで、子どもの患者のエピソードも出てきます。

熊本県 荒尾市民病院の不破 功先生も、小児および若年者の脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群): 脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群) というPDFファイルを公開されていました。

子どもの脳脊髄液減少症の特徴

小児・若年者の起立性頭痛と脳脊髄液減少症によると、子どもの脳脊髄液減少症には、臨床的な観点からすると、次のような特色がみられるといいます。(p91)

1.起立性頭痛の訴え
2.症状は天候に左右されやすい
3.水分摂取が症状緩和に有効なことが多い
4.起立性調節障害の特徴とされる午後以降の症状軽減はほとんどない
5.頭痛の発症日が比較的明瞭(慢性経過例では、発症時期が特定できなくなっている場合もある)
6.外傷を契機に発症した(外傷のない症例も多い)
7.頭部CT・MRI(造影を含む)では正常所見とされる場合も多い

これらの特徴を参考にしつつ、ここからはさまざまな具体的な症状を取り上げましょう。

起立性頭痛

まず、ほとんどの場合、頭痛が主訴であり、体の姿勢によって変化する、つまり身を起こすと悪化するという特徴があるため、「起立性頭痛」と呼ばれています。

しかし、子どもの場合、姿勢によって頭痛などの症状が変化することに気づいていない場合も多く、単なる偏頭痛や、緊張性頭痛とみなされていることも多いようです。

それらの起立性頭痛の患者の多くは、外傷など何か特別なイベントが先行したわけでもなく、ある日を境に始まった連日性持続性頭痛という訴えだけで、頭痛が起立性に増悪するということを自ら訴えないばかりか、逆に起立性頭痛を否定する場合さえある。

なぜそのようなことが起きるのかというと、LUP testのように極端な条件下では、頭痛の体位性変化が自覚できても、日常生活では臥位になってから短い時間では頭痛が軽減しなかったり、睡眠中も頭痛が続いたりする患者が珍しくないことや、体を起こしてから頭痛が増悪するまでに時間がかかって、体を起こしたことと、頭痛が悪化したことの因果関係を自覚できない場合が往々にしてあるからである。

したがって日常生活では頭痛の起立性要素に気づかないため、LUP testを行わない通常の診察では、当然ながら起立性頭痛とは判断されず、知らないうちに見逃されてきたのではないかと考えられるのである。(p10)

脳脊髄液減少症の頭痛や各症状は姿勢によって症状が変化するといっても、子どもが姿勢と体調の関係に自分で気づくのは難しく、起立性頭痛が見逃されてしまうこともあります。

横になったり起き上がっりしてから数十秒かそれ以上経ってから変化することも多く、日常生活の中では関係性に気づきにくいようです。横になっても頭痛がなくなるわけではなく、単に和らぐだけの子もいます。(p15)

特に起立性頭痛が3ヶ月以上続くと、中枢性感作によって痛みに過敏になるせいか、横になった状態でも頭痛が完全になくならない例が増えてくるような印象があるそうです。(p50,83)

本人が姿勢による症状の変化を自覚していない以上、起立性頭痛を問診だけで判別するのは難しく、後で改めて説明しますがLUP testのような検査が必要だとされています。

また、脳脊髄液減少症の起立性頭痛の特徴はさまざまで、体位によって悪化することを除けば、痛む場所、痛み方、運動や天候による変化、痛みの程度などで鑑別することはできないようです。(p26)

成人の脳脊髄液減少症では、出歩けないほどの激しい頭痛が特徴だと言われることもありますが、子どもの脳脊髄液減少症では必ずしもそうではないという違いがあります。

「起立性頭痛」といっても、成人の低髄液圧急性期にみられる強度の起立性頭痛は少なく、程度はさまざまである。(p91)

ICHD-IIで記載されていたような短時間での起立性増悪の頭痛を「起立性頭痛」として考えられていたことから、多くの臨床医は、外出が困難なほどの強い頭痛と思いがちである。

しかしながら、そのような強い症状を呈する起立性頭痛は、成人における低髄液圧症の急性期例にみられるが、小児・若年者では少ない。起立性頭痛を訴える患者でも、歩いて来院する場合がほとんどである。

したがって、「歩いて来られる程度の頭痛なら、低髄液圧症(脳脊髄液減少症)ではない」と判断されることがあるが、これは正しい認識ではない。(p98)

この本の序文では、以前から言われていたような、「起立性頭痛は、起き上がってから15分以内に増悪するもの」「脳脊髄液減少症の起立性頭痛は、歩いて病院へ来られないほど痛い」といった特徴は「誤った認識」であり、必ずしも正しくないとされています。

全身倦怠感や首の痛み

起立性頭痛はほとんどの患者に特徴的だとは言っても、100%必ず頭痛があるわけではなく、すぐに疲れるといった全身倦怠感(慢性疲労)や首の痛みが中心症状の子もいます。

なお、頭痛ではなくて「首が痛い」と表現する患者や、「すぐに疲れる」や「すぐに具合が悪くなる」と全身倦怠感が中心症状の患者もいるので注意を要する。

頭痛以外の症状が中心症状でも、座位・立位の継続で出現・増悪し、臥位で軽快・消失する特徴を有するのが脳脊髄液減少症の特徴である。(p92)

首すじと両肩甲骨の間の「洋服ハンガー」のような範囲の痛みや凝りは、「inter-scpular pain」と呼ばれていて、脳脊髄液減少症や起立性調節障害に特徴的なものだそうです。(p32、61)

顔面や目の奥、顎、手足などの痛みやしびれ感も加わって、「痛みのデパート」状態の子もいるようです。その場合、若年性線維筋痛症との鑑別が必要かもしれません。

子供の体の慢性的な痛み「若年性線維筋痛症(JFM)」とは? 原因と治療法
子どもの慢性痛、若年性線維筋痛症とはどんな病気なのでしょうか。どんな治療法が可能でしょうか。東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センターの宮前 多佳子先生による「小児の線維筋痛症」

いずれにしても、こうしたさまざまな症状は、起立性頭痛と同じく、姿勢の変化や、天候の影響を受けやすいのが特徴です。

発症から時間が経過して慢性化すると、起立性頭痛の姿勢による変化がわかりにくくなり、他の様々な症状が目立ってくることもあります。(p50,92,99)

めまい、ふらつき、聴覚・視覚異常

脳脊髄液減少症では、髄液減少により脳の視神経や聴神経が引っ張られてしまうので、視覚や聴覚の異常も生じると言われています。。

聴覚症状としては、髄液圧が低下することで、メニエール病に似た難聴、耳鳴り、めまいといった、子どもには珍しい症状や、音がこもる耳閉感、音が大きく響く聴覚過敏が生じることがあります。(p27,49,96,100)

視覚症状としては、複視やかすみといった、ピント調節や両眼視機能の異常、光過敏などの認知異常といった、通常の眼科検診ではわからない問題が生じることがあります。(p100,158)

こうした症状については、高橋浩一先生のブログや、井上眼科病院の若倉雅登先生の記事でも指摘されていました。

頭痛で学校に行けない子どもの脳脊髄液減少症―よく似た起立性調節障害(OD)と区別するポイントとは?
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