空気を読みすぎて疲れ果てる人たち「過剰同調性」とは何か


嫌われないように相手に合わせる。相手が喋っている内容から、その人の考え方を読み取って、それをもとにしてその人が好むようなことをいう。嫌われるのも、怒らせるのも、議論になるのも怖い。(p139)

つまり家族の雰囲気や学校という場での緊張感、雰囲気、空気などを読んで、トラブルにならないように自己犠牲的に周囲に合わせようとする。

以上のような特徴を「過剰同調性」と名づける。(p83)

今、「空気がよめない」人、いわゆるKYという問題がよく取り上げられます。場にそぐわないことを話したり、おこなったりして、ひんしゅくを買う人たちです。

しかし一方で、子どものときから、周囲に合わせすぎ、気を使いすぎて、「空気を読みすぎる」人たちもいます。

その傾向は「過剰同調性」と呼ばれ、ストレスの多い子ども時代を過ごした人にみられるそうです。中には、解離性障害や解離性同一性障害(多重人格)につながる素因となってしまう人さえいます。

自分を押し殺した「いい子」「いい人」は、慢性疲労症候群線維筋痛症など、さまざまな難病と関わっている可能性もあります。また意外にも、真逆とも思えるアスペルガー症候群とも関連している場合があります。

解離の構造―私の変容と“むすび”の治療論という本や、他の書籍から、空気を読みすぎる「過剰同調性」とは何か、ということについて調べてみました。

▼追記:
この記事を書いて以降、さまざまなサイトで過剰同調性についてまとめられ、過剰適応の同義語のように独り歩きしはじめていますが、あくまで冒頭で引用したとおり解離の専門家による用語であることにご留意ください。

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これはどんな本?

この本は、解離性障害の専門家、柴山雅俊先生による、解離についての専門的な本です。

同著者による、解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理 (ちくま新書)は一般の人向けにわかりやすく書かれているのに対し、この本は、さまざまな医療と哲学の専門知識をふんだんに盛り込んだ、専門家向けの本といえます。

解離性障害の特有の症状(幻聴、幻覚、体感異常、変容、夢など)が、患者の主観から表現されていて、その中で、解離の素因を説明してある部分に「過剰同調性」という言葉が出ています。

空気を読みすぎる人たち

冒頭で紹介した本には、空気を読みすぎる人たち、つまり「過剰同調性」には、以下のような特徴がみられるようです。

■ひたすら相手の表情と状況を読んで機嫌を損ねないようにする
■家庭や学校という場の雰囲気を読んで、自己犠牲的に周囲に合わせてきた
■親からみて「いい子」だったといわれることが多い
■相手の責任を追求したり、攻撃的態度に出たりすることは少ない
■自分の欲望、主張、意見より、相手の意向を尊重する
■悪いことが起こると、周りを責めるのではなく、自分を責める
■人に対して怯えがある。虐待やいじめが原因のことも

こうした過剰同調性に陥った人たちは、常に、「相手から嫌われるのではないか」「相手に見捨てられるのではないか」「仲間はずれにされるのではないか」といった不安や不信と隣り合わせで生きています。

その背景には子どものころの無力感があります。虐待やいじめに遭って、抵抗できず、ひたすら相手に合わせるしか逃れ道がなかったこと、あるいは両親が不仲だったり、病気の兄弟がいたりしたために、家庭内が緊張に包まれていたことなどが原因です。

さらには、親の精神疾患やアルコール依存症があったために、常に親の顔色をうかがいながら過ごさなければならなかったのかもしれません。この点は以前に取り上げた「毒になる親」と通ずるものがあります。

10種類の「毒になる親」から人生を取り戻すためにできること
スーザン・フォワードのベストセラー「毒になる親」にもとづき、子どもを精神的に虐げる、気づかれにくい10のタイプの親について書いています。また、その親の支配から逃れる方法についても簡

子どものころは、自分の存在を揺るがす問題に直面したとしても、そこから逃れるという選択肢はありません。自分の存在を受け入れてくれない相手に、無理に取り入って、過剰に相手にあわせるしか生き延びるすべがなかったのです。

子どものころ身につけた「D型の愛着パターン」

過剰同調性を持つ人たちは、一般と異なる愛着スタイルを持っていることがよくあります。愛着スタイルとは何でしょうか。

イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィは、幼いころの養育者との結びつきを「愛着」(アタッチメント)と表現し、幼いころ、特に生後半年から1歳半ないしは3歳ごろまでの養育者との関わり方のパターンが、その後の人生における人間関係のひな形となるという考えを提唱しました。

たとえば、その時期にバランスのとれた愛情を注がれたなら、安定した自尊心を持つ大人に成長しやすくなりますが、親からあまり関心を示されないで育つと感情表現に乏しく人間関係を回避する傾向が、逆に過剰に構われて育つと見捨てられ不安が強くなる傾向があります。

長引く病気の陰にある「愛着障害 子ども時代を引きずる人々」
愛着理論によると、子どものころの養育環境は、遺伝子と同じほど強い影響を持ち、障害にわたって人生に関与するとされています。愛着の傷は生きにくさやさまざまなストレスをもたらす反面、創造