生まれつき敏感な子ども「HSP」とは? 繊細で疲れやすく創造性豊かな人たち

■光や音、匂い、そのほかのさまざまな感覚に人一倍敏感
■場の空気や他の人の気持ちを読みとることが得意
■人より深く考え、呑み込みが早いと言われる
■感受性が強すぎるせいで刺激に圧倒されて疲れ果てることがある
■子どものころから空想の友だちなど不思議な体験をしてきた

なたはこのような、人一倍強い感受性の持ち主ですか? あるいは、もしかすると、あなたのお子さんがこのリストに当てはまるでしょうか。

もしそうなら、あなたやお子さんはHSP (Highly Sensitive Person)、つまり「人一倍敏感な人」や、HSC (Highly Sensitive Child)、つまり「人一倍敏感な子ども」と呼ばれる生まれつきの感受性の強さを持っているのかもしれません。

生まれつきの感受性の強さは、優れた才能につながることがあります。HSPの人は人の心をつかむコミュニケーション力に長けていますし、優れた芸術家や科学者の中には、HSPの繊細な感性を生かして成功した人が少なくないとも言われています。

しかし一方で、優れた感受性の強さのために、人混みやイベントで疲れやすかったり、学校で強いストレスを感じて不登校になったり、果ては慢性疲労症候群解離性障害といった心身の問題を抱えることもあります。

HSPとはいったいどんな性質なのでしょうか。しばしば混同されるアスペルガー症候群の感覚過敏とはどこが違うのでしょうか。やはり感受性が強いADHDとの間にはどんな関わりがあるのでしょうか。どんなリスクまた可能性を持っているのでしょうか。

HSPという概念を提唱したエレイン・N・アーロン博士ひといちばい敏感な子や、そのほかの関連する資料から、HSPについてわかりうることを広範囲にまとめてみました。

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HSPとは何か?

HSP(人一倍敏感な人)、HSC(人一倍敏感な子)は、心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱された概念です。

アーロン博士が1996年に書いたHSPについての本、ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (SB文庫)(原題は、「The Highly Sensitive Person」)は英語で出版された後、オランダ語、日本語、中国語、ギリシャ語、ポーランド語に翻訳されるベストセラーになりました。

アーロン博士はこれまで、「内向的」「怖がり」「引っ込み思案」などとネガティブに語られがちだった敏感な人についての研究に一石を投じ、それらの人は、本当は感受性豊かで創造的、そして子どもの15~20%を占める個性の一つなのだ、ということを明らかにしました。

その研究により、感受性の強さとは、おもに育て方によって決まる後天性のものではなく、持って生まれた先天性のもの、その人固有の遺伝的性質であり、才能ともなることがわかりました。

その一方で、HSPの70%は慎重で内向的であるのに対し、残りの30%は外向的であることがわかりました。繊細な人イコール内向的な人ではなかったのです。

HSPの生まれつきの敏感さとは違って、内向型や外向型、さらには臆病さや神経質は、後天的性質だと言われています。(p35)

興味深いことに、世の中の一般的な見方とは異なり、内気さや繊細さが必ずしも短所ではない、ということに目ざとく気づいた人は、はるか昔にも存在していました。

スポーツ心理学を研究している高妻容一教授によると、意外に思えるかもしれませんが、戦国時代の名将として知られている伊達政宗も、内気で敏感な気質だったそうです。

しかし幼少期の政宗を指導した片倉小十郎は、政宗の繊細さや感受性の強さを長所と考え、その才能をいち早く見抜いたと言われています。戦国時代のような実力社会でさえ、感受性の強さは武器になり得るのです。

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アーロン博士は、自身がHSPであり、子どももHSCであることから、人一倍敏感な人の性質や、そのような子どもの育て方について、とても深い洞察と研究を世に送り出してきました。

今回おもに参考にしたひといちばい敏感な子は2002年に書かれた10年以上前のアーロン博士の本の邦訳です。日本語版に寄せて、2015年2月に書かれた最新の学術的解説が追加されているので、この記事では主にその部分を参考にしました。

HSPの4つの特徴

HSPについては、世間ちまたでは、様々な形で紹介されていますが、本来の定義からそれた情報も少なくありません。誤解されがちですが、普通より感覚が過敏であれば すなわちHSPである、というわけではないのです。

HSPという概念を提唱したエレイン・アーロン博士は、ひといちばい敏感な子の中で、HSPには、特徴的な4つの性質が必ず存在すると述べています。

最近、私はこの根底にある性質には「4つの面がある」と説明しています。つまり、人一倍敏感な人にはこの四つの面が全て存在するということです。

4つのうち1つでも当てはまらないなら、おそらくここで取り上げる「人一倍敏感」な性質ではないと思います。(p425)

たとえ感覚が過敏な人であっても、その4つの性質のうちの1つでも当てはまらないならHSPではなく、その人の過敏さは別の問題から来ていることになります。

それでは、その4つの性質とは何なのでしょうか。アーロン博士は、それら4つの頭文字をとって「DOES」と呼んでいます。一つずつ見ていきましょう。(p425-432)

D 「深く処理する」

一つ目の性質は、「深く処理する」(Depth of processing)ことです。簡単に言えば、「一を聞いて十を知る」という性質のことです。

HSPの人たちは、単に敏感に反応するわけではありません。ちょっとした刺激や情報から、他の人以上に深く感じたり、深く考えたりします。無意識にであれ、意識的にであれ、物事を徹底的に処理し、理解していきます。

そのような意味では、HSPの敏感さとは「過敏性」ではなく「感受性の強さ」だと言えるでしょう。

この「深く処理する」という性質は、年齢以上に大人びた受け答えをしたり、初めて経験する場所や人の前で行動するまでに時間がかかったりという行動にも現れます。

これは、場の空気を読み取って行動する能力に優れているということです。自分の考えだけで直情径行に行動したりせず、その場の状況や相手の気持ちを深く読み取り、それに合わせて行動することができます。

HSPの人は、異文化や異なる社会背景の人の気持ちや行動を理解し、共感する能力に長けています。

ビアンカ・アセヴェドによる研究によると、HSPの人は非HSPの人より、脳内の島皮質と呼ばれる場所が活発に働いていたそうです。この場所は内面の感情や、外部の感覚刺激を読み取って統合する意識の座と言われています。(p426)

(※HSPの脳科学な研究について詳しくは、ビアンカ・アセヴェドらによるThe highly sensitive brain: an fMRI study of sensory processing sensitivity and response to others' emotions(英文)で解説されています)

O 「過剰に刺激を受けやすい」

二つ目の特徴は、「過剰に刺激を受けやすい」(being easily Overstimulated)ことです。

HSPの人は、自分の内外で起こっていることに人一倍よく気がつき、処理し、配慮するので、精神的にかなりの負担がかかり、疲れやすく感じます。

変化に敏感で、普通よりも多くの新しい経験が得られるぶん、多くのことを読み取りすぎて疲れ果ててしまうこともしばしばです。

強い明るさ、大きな音、手触り肌触り、匂い、暑さ寒さなどからも、普通以上のストレスを受けたり、疲れや痛みも通常より強く感じてしまうかもしれません。

すでに触れたHSPの人で強く働いている島皮質は、そうした感覚を感じ取る感受性の源です。他の人と同じ刺激を受けても、感受性が強いせいでより強く刺激を受けてしまうのです。

人の多いパーティーや雑踏、大きな音の映画館や遊園地など、刺激の量が多い場所はことさら苦手です。他の多くの人にとっては日常よりも目一杯刺激を開けて楽しめる場所かもしれませんが、普段から人並み以上に刺激を感じ取っているHSPにとっては刺激が多すぎる場所なのです。

このような刺激を過剰に受けすぎる性質は、特に子どもの不登校の原因と一つとされる慢性疲労症候群(CFS)と密接に関係していると思われます。おそらくは、学校という集団行動において、普通の子以上に刺激を受けすぎてしまうのでしょう。

子どもの慢性疲労症候群(CCFS)とHSPは、遺伝子レベルで要因が重なっている可能性があり、その点については後ほど改めて取り上げます。

また、過剰に刺激を受けすぎるという性質は、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などで知られる自閉スペクトラム症(ASD)の子どもにもよく見られる特性ですが、HSPと自閉症は別のものです。この点についても、次の見出しで詳しく取り上げます。

E 「感情反応が強く、共感力が高い」

三番目の特徴は「全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い」(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular)ことです。他の人の気持ちに同調する力の強さのことです。

ここまで考えてきたとおり、HSPの敏感さは、単に感覚刺激が強い過敏さではなく、深く処理する感受性の強さでした。そしてその中には、場の空気を読み取る力も含まれていました。それは共感力の強さです。

HSPの子どもは人の心を読み取る能力に長けていて、まわりの人の顔色を読んで、自分を合わせることが得意です。親の望むこと、友達や先生の望むことをよく読み取って、適切な配慮や気配りをすることができます。

本を読むときには物語の登場人物に深く感情移入し、相手が人間でなくても、動物やロボットや物にさえ、強い感情移入を示します。ときには、物語の内容や、テレビのストーリーに深く共感して、涙もろくなってしまうこともあります。

後で触れますが、このような他人への関心や共感性の強さは、子ども時代に空想の友だち現象(イマジナリーフレンド)として現れることもあります。

ヤージャ・ヤゲロヴィッチの研究によると、HSPの人では良い経験にも悪い経験にも人一倍強く反応する脳活動が、思考や感情をつかさどる脳の高度な部分で見られたとのことです。(p430)

S 「ささいな刺激を察知する」

最後の四つ目は、「ささいな刺激を察知する」(being aware of Subtle Stimuli)ことです。小さな音、かすかな匂い、ちょっとした変化など、細かいことによく気がつきます。

こうしたささいな刺激を感知する細やかさは、各感覚の受容体が敏感だから、というわけではなく、それらから入ってきた情報を受け取る感受性が強いからだと考えられます。アーロン博士はこう説明しています。

中には感覚器が特に発達している人もいますが、大半は、感覚器の反応が大きいのではなく、思考や感情のレベルが高いためにささいなことに気づくのです。(p432)

そのようなわけで、HSPの人は、どれか特定の感覚だけが過敏である、というわけではなく、さまざまな種類の刺激に対して繊細な反応を示すのです。

環境の変化や、物の配置が変わったことに目ざとかったり、自然の風景や動物とのふれあい、芸術作品などから強い影響を受けたり、親や友達のちょっとした声のトーンや態度の変化から、何かあったのだと察知したりします。

ただし、刺激が過剰すぎる状態では、かえって普通の人以上に気づくのが難しくなることもあります。これはおそらく、感覚の過剰さから脳を守るために、意識がぼーっとしたり上の空になったりする解離が生じるからでしょう。

このように、HSPの人は、「深く処理する」「過剰に刺激を受けやすい」「感情の反応が強く、特に共感力が高い 」「ささいな刺激を感知する」という4つの特徴が見られます。これらは内外の刺激に対する感受性の強さを物語っています。

アーロン博士が述べていたとおり、感覚の過敏性があっても、これら4つの特性のうち、一つでも当てはまらない部分があるなら、その人はHSPではありません。

感覚の過敏性があり、これら4つのうち幾つかは当てはまるものの、すべてを満たさない人の代表例は、途中でも名前が出た自閉スペクトラム症(ASD)の人たちでしょう。

HSPの感受性の強さと、ASDの感覚過敏が別のものであるといえるのはどうしてでしょうか。

アスペルガーの感覚過敏とは別のもの

はじめに、HSPの性質は、ネット上の多くの記事などで誤って説明されていることがあると述べましたが、特に区別があいまいになっているのは、自閉スペクトラム症(ASD)の過敏性との関係です。

自閉スペクトラム症とは、これまで広汎性発達障害(PDD)やアスペルガー症候群(AS)として知られていた、さまざまな程度の自閉症を一括りにした概念です。

自閉スペクトラム症の人たちは、しばしば場の空気が読めず、社会的なコミュニケーションが難しいとされますが、そのほかにも様々な感覚過敏を抱えていることが少なくありません。

たとえば、スキー場などの明るさが強い場所や、電車や救急車などの激しい音のせいで感覚刺激が過剰になりすぎてパニックになってしまう人もいます。自閉スペクトラム症の当事者研究によると、そのような過剰な刺激は「感覚飽和」と呼ばれています。

自閉スペクトラム症の独特な視覚世界を体験できるヘッドマウントディスプレイを大阪大学が開発
自閉スペクトラム症の視覚世界を体験できる装置が開発されたそうです。

このような感覚過敏の面だけを取り出すと、一見、自閉スペクトラム症は、人一倍敏感な人、つまりHSPであるかのように思えますが、実際にはそうではありません。

むしろアーロン博士は、自閉スペクトラム症とHSPをはっきり区別していて、正反対のものであるとしています。

HSCは、自閉症やアスペルガーとも違います (p65)

HSPは共感力がとても強い

すでに4つの特徴の中で説明したとおり、HSPの人たちは、場の空気や他の人たちの気持ちに敏感です。親や友達や先生の気持ちを先回りして読み取り、適切に配慮する能力に長けています。

HSPの人たちは、感情移入して相手に配慮できるので、しばしばサービス業などコミュニケーションを要する職種に就きますが、そうした社交的な能力は、自閉スペクトラム症の人には見られません。

ひといちばい敏感な子にはこうあります。

HSCと混同される理由は、自閉症やアスペルガーの子どもたちは、感覚的な刺激に極めて敏感な点です。

でも、場の空気や相手の気持ちには敏感とはいえません。これがHSCと大きく異なるところです。(p66)

では、HSPとは、感覚の過敏性を持つ自閉傾向の人たちのうち、コミュニケーションの点ではさほど苦労がない人、つまり程度の軽い自閉症なのでしょうか。

アーロン博士は、その見方をもはっきりと否定しています。

HSCは、「自閉症スペクトラム」のうち、程度の軽いほうに属するのではないかという議論もありますが、私は違うと思います。

「自閉症スペクトラム」の程度の軽い子を表現するなら、何か癖があったり風変わりだったり、融通が利かなかったり、感情が乏しかったりということになるでしょう。

HSCを含め、疾患がない子どもは、生まれつき人と関わることを望んでいます。(p67)

アーロン博士が説明するとおり、HSPの人たちは、自閉症のうち程度の軽いものでもありません。自閉症のうち、言語コミュニケーション能力に秀でた程度の軽いもの、とされているのは、アスペルガー症候群ですが、彼らにとってコミュニケーションは決して簡単ではありません。

アスペルガー症候群は、確かにカナー型などの自閉症と比べると程度は軽い、という見方ができますが、実際には人との通常の関わりが難しく、社会で「空気が読めない」というレッテルを貼られてしまう人たちも少なくないのです。

アーロン博士は、むしろ、HSPは自閉症の軽いものであるどころか、正反対のものであると述べます。

つまり、人づきあいが不器用で、人との関わりもあまり望まない自閉傾向のある人たちとは違って、HSPの人たちは人への強い興味があり、根っからの社交性を持ち合わせているのです。

興味深いことに、大人の発達障害を専門とする昭和大学烏山病院、発達障害医療研究所の加藤進昌所長は、敏感な性質の人は、誤って「自分がASDではないか」と考えやすいと述べています。

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「人の視線が気になるとか、名前が覚えられないなどで自分がASDではないかと疑っている大人の多くは発達障害ではなく、単に周囲に過敏に反応しているだけ」と加藤所長。

ASDの人は他人に対し「逆に無関心で、他人の行動の意味がわからないことが多い」

周囲に過敏に反応する人は、コミュニケーションについて気にしすぎて、自分はアスペルガーなのではないか、と悩みがちです。

しかし、加藤先生が述べるように、本来、自閉スペクトラム症(ASD)の人たちは、人間関係を求めはするものの、他人の気持ちや考えに対してはあまり関心がなく、行動の意味を理解できないために、対人関係で苦労することが特徴なのです。

異なる立場の人を理解する力

自閉スペクトラム症の人たちがコミュニケーションを難しく感じる理由として、人の動きを真似するときに発火する脳のミラーニューロンや、それが組み込まれた脳の共感システムであるミラーシステムの働きの問題がしばしば指摘されます。

しかしHSPではその反対の結果が観察されていて、ミラーニューロンの働きが活発であることがわかっているそうです。

HSPは非HSPに比べて、ミラーニューロン系の働きも活発です。特に、自分の大切な人がうれしい、あるいは悲しい表情を浮かべるのを見た時や、知らない人がうれしい顔をした時にもこの傾向が見られます。

これは、HSPが、感情を感じ取った相手に同調すること、全般的にポジティブなことに同調した結果といえるでしょう。…子どもが残酷なことや不公平なことに動揺しやすいのも当然でしょう。(p431)

このような点でも、HSPと自閉スペクトラム症は正反対の特徴を持っているといえますが、こと共感性について言うと、HSPはもっと独特な性質を持っています。

以前の記事で取り上げたとおり、自閉症の人たちが、「共感力がない」とする見方は、近年では誤りとされています。

というのも、自閉スペクトラム症の人たちも、自分と同じ自閉スペクトラム症の人相手には共感性を示せるからです。

そして、世の中の多くの人も、自分と同じ集団、自分と同じ社会の人に対しては共感する力を持っています。ある意味で、自閉症の人も、自閉症でない人(つまり定型発達者)も、自分と同じ相手のことは理解でき、そうでない人の気持ちはわからないという点で共通しています。

アスペルガーは「共感性がない」わけではない―実は定型発達者も同じだった
アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)の人は「共感性がない」と言われていますが、実際にはそうではなく、むしろ定型発達者も共感性に乏しいという研究を紹介しています。