気づかれにくい「女性のADHD」の10の特徴&治療に役立つポイント集


女性は男性に比べてADHDに気づかれにくく、本人が「ミスの多さ」や「同性に嫌われること」、「スケジュール管理の難しさ」などに悩んでいても、なかなか診断が得られません。

治療を受ければよくなるのに見過ごされるケースが多いのです。(p1)

れは、2015年に発売された女性のADHD (健康ライブラリーイラスト版)のまえがきにある言葉です。

近年、ADHD(注意欠如・多動症)の存在はよく知られるようになってきましたが、やんちゃな男の子のイメージが強く、女の子のADHDについてはほとんど知られていません。

実はADHDは男の子と女の子では性差(ジェンダー・ディファレンス)があり、男性と女性で症状の現れ方が違うのだそうです。

一般にADHDは女性よりも男性のほうが3~5倍多いといわれていますが、実際には、ADHDの女性は見過ごされているだけではないかと言われています。(p44)

ADHDの存在を見過ごされたまま大人になると、そそっかしさやスケジュール管理の苦手さを自分の欠点だと思い込んで、自信を失ったり、二次的にうつになったりすることも少なくないようです。

この記事では、ADHDの専門家による複数の本を参考に、女性のADHDにはどんな特徴があるのか、よく混同されやすいアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)との違いは何か、治療には役立つポイントは何かまとめてみました。

スポンサーリンク

これはどんな本?

この記事をまとめるにあたり、おもに参考にした本は以下の三冊です。

女性のADHD (健康ライブラリーイラスト版)は2015年12月に発行された宮尾益知先生による、全編にわたり女性のADHDが解説された、イラストも豊富な読みやすい本です。出展を書いていない引用文はこの本からのものです。

発達障害に気づかない大人たち (祥伝社新書 190)はご自身も不注意優勢型ADHDである星野仁彦先生による大人の発達障害の解説書で、女性のADHDが数ページにわたり解説されています。

図解 よくわかる大人のADHDは榊原洋一先生による大人のADHDの図解本で、こちらも女性のADHDの苦労を説明しているセクションがあります。

女性のADHDの10の特徴

まずは、女性のADHDに見られやすい10の特徴を見てみましょう。

もちろん、ADHDの女性だからといって、これら10の特徴がすべて見られるとは限りませんし、男性でも同じような特徴を示す人もいます。

あくまでも、傾向として女性のほうに現れやすい特徴だ、と考えていただければと思います。

また、これらの特徴は多かれ少なかれ普通の人にもみられます。ADHDと診断されて治療の対象になるのは、あまりにこうした傾向が強く出すぎて、生活が立ち行かない人たちです。

1.多動・衝動は目立たない「不注意優勢型」が多い

ADHDの男の子は「落ち着きのない子」「乱暴な子」などと叱られてしまいがちですが、女の子では、多動性や衝動性がそこまで強く現われることは多くありません。

乱暴というほど激しい言動はみられず、「元気な子」「移り気な子」などと思われている子が多いでしょう。

女性はADHDに気づかれにくいのです。(p25)

ADHDの子どもというと、多くの人は、授業中に立ち上がったり、すぐ手を出したりする、手に負えないわんぱくな子どもをイメージしがちです。

しかし、ADHDの男の子と、ADHDの女の子では、表に現われる症状がいくらか異なる傾向があります。

ADHDの基本的な症状は「不注意」「衝動性」「多動性」の3つだと言われています。

このうち、人によって、どの特徴が目立つかは違いがあり、多くの人たちがADHDと聞いて思い浮かべる、手に負えないわんぱくな子どもは、「衝動性」と「多動性」の強いタイプです。

このタイプは男の子に多く「多動性・衝動性優位型」、あるいは通称「ジャイアン型」として知られています。ドラえもんに登場するジャイアンのように乱暴な問題児が多いからです。

それに対して、女の子の場合は、多動や衝動が目立ちにくく、「不注意」が強いタイプが多いと言われています。

このタイプは「不注意優勢型」、あるいは通称「のび太型」と呼ばれています。のび太くんのように、心根は優しく穏やかですが、うっかり者でミスが多く、落ち着きがありません。

もちろん、女の子にも「多動性・衝動性優位型」(ジャイアン型)はいますし、男の子にも「不注意優勢型」(のび太型)はいます。さらにどちらも合わせ持つ「混合型」も存在していて、人によって症状の現れ方はさまざまです。

しかしどちらかといえば、女の子の場合は「不注意優勢型」(のび太型)が多く、男の子のようにトラブルを起こしたり、非行に走ったり、問題児となったりすることが少ないので、見逃されやすいのです。

ただし、「不注意優勢型」だからといって「多動性」「衝動性」がないわけではありません。むしろこれから考えていくように、目立たない形で、多動性と衝動性に悩まされています。

■ADHDの3つのタイプ
ADHDには「多動性・衝動性優位型」(ジャイアン型)、「不注意優勢型」(のび太型)、「混合型」の3つのタイプがある

■「不注意優勢型」(のび太型)
問題児になりやすい男の子のADHDと違って、女の子は不注意優勢型が多く、トラブルを起こさないため気づかれにくい

2.元気いっぱい。でも、ぼんやりしやすい

Aさんはよくも悪くも元気いっぱいな子どもでした。

絵画など趣味が多く、おしゃべりで活動的で、彼女の予定はいつも埋まっていました。(p11)

ADHDの特徴のひとつは、元気いっぱいでエネルギッシュなところです。

ADHDの女の子は、暴れたり人をたたいたすることはなありませんが、「元気な子」「移り気な子」と思われていることがよくあります。

好きなことには全力投球、遊ぶのも大好きです。趣味がとても多く、次から次に新しいことを始めます。

しかし、いつでも元気いっぱいかというとそうではなく、興味のない授業などでは、ふっと意識が遠のいて、いつの間にか別のことを考えていることもしばしば。

「不注意優勢型」(のび太型)のADHDは、興味のない場面では、いつの間にか注意がそれて、空想にふけりやすく、「デイ・ドリーマー」(昼間から夢を見る人)と呼ばれています。

いつの間にか別のことを考えてしまっていると、マンガさながらに先生に突然差されて我に返ったり、重要な指示を聞き逃して、あとでパニックになったりします。

また、基本的に身体を動かすのが好きなことは多いですが、運動がうまいとは限りません。

みんなと足並みをそろえるチームプレイや全身を使った動き、空間把握などが苦手で、どんくさい子もいます。これは、ADHDにしばしば合併する「発達性協調運動障害」(DCD)の症状です。

体を動かすのが得意でなく、見かけ上は落ち着いていておとなしく見える場合もありますが、これから考えるように、いつも何かやっていて、頭の中がエネルギッシュなことがあります。

「不器用な子どもたち」発達性協調運動障害(DCD)とは何か―NHKによる子どもの睡眠と発達医療センターの取材
■エネルギッシュ
ADHDの女の子はエネルギッシュなことが多い。色んなことに興味が移る。好きなことは全力投球。見かけ上は落ち着いていて思考が多動なことも。

■デイ・ドリーマー
興味のないことは上の空。いつの間にか空想にふけってしまう

■発達性協調運動障害(DCD)
DCDが併存する場合は、運動が苦手でどんくさい人も

3.「おっちょこちょい」「うっかり者」が代名詞

Aさんは子どもの頃からケアレスミスをすることが多く、家族や友達に「うっかりしている」と言われていました。

テストの解答を1問ずつずらして書いてしまい、0点をとったこともあります。(p10)

ADHDの女の子の大きな特徴は、ケアレスミスが非常に多いこと。「おっちょこちょい」「うっかり者」「そそっかしい」とみなされがちです。

不注意で人の話をよく聞いていなかったり、聞いていてもすぐ忘れたりするので、聞き間違いや書き間違い、忘れ物などのうっかりミスが多く、失敗を繰り返します。

上の文のテストの解答欄を一問ずつずらして書いてしまい0点になってしまったという話を見て、そんなバカなと思う人もいそうですが、案外その手の話は珍しくありません。

段取り良く計画的に作業するのが苦手なので、家事やテスト勉強、女の子らしいと言われる繊細な作業などが得意でないこともあります。

こうしたうっかりミスは、単に不注意なだけでなく、脳のワーキングメモリの不調が関係していると考えられています。(p28)

ワーキングメモリとは、作業記憶とも呼ばれ、ちょっとしたことを一時的に記憶しておく能力です。たとえば、先生や親の言付けや、口伝えに聞いた電話番号を、一時的に覚えておくときなどに使います。

ADHDの人は、ワーキングメモリが弱いので、さっき聞いたことを話している最中に忘れたり、部屋を移動したら頭から飛んで行ったり、あげくの果てには忘れたことにも気づかなかったりします。

家事などの段取りが求められる作業も、ワーキングメモリを駆使して複数のことを同時に進めたり、気配りしたりする必要がありますが、ADHDの人は次のことに取りかかると、さっきまでやっていたことを忘れてしまうことがよくあります。

またワーキングメモリの問題とは別に、ADHDには限局性学習症(SLD)が並存しやすく、脳の使い方が他の人とは違うために勉強についていけないこともあります。

子ども時代から、うっかりミスばかりの生活だったため、「自分はダメだ」と考えるようになり、うつになってしまう女性も少なくありません。

本当はADHDのせいなのに、そのことを知らずに大人になったので、自分の能力が足りないせいでうまくいかないのだと勘違いして落ち込んでしまうのです。

■ワーキングメモリの不調
聞いたことをすぐ忘れる。次の作業に取りかかるとさっきまでやっていたことを忘れる

■限局性学習症(SLD)
ADHDの3割から5割は、脳の使い方が独特なために学校の勉強が苦手な学習障がいを持っている

■自尊心(セルフエスティーム)をなくす
ADHDのせいで失敗しているのに、そのことを知らず、自分の能力が足りないせいだと自分を責めてしまい、うつになる人もいる

4.注意の切り替えが苦手

ただ趣味的なことには集中でき、すぐれた結果を出していました。

そのため、勉強や家事の手伝いなど、他のことで多少ミスがあっても、本人も家族もさほど気にしていませんでした。(p10)

ADHDの女の子が、家事を段取りよく行うのが苦手だったり、大事なときに上の空になって集中できなかったりするのは、注意の切り替えが苦手、という点も関係しています。

ADHD(注意欠陥・多動性障害/注意欠如・多動症)というと、注意力が「欠陥」「欠如」しているのだと考えられがちですが、本当に欠如しているのは注意力そのものではなく、注意の切り替え能力です。

ADHDの女の子は授業中など、本当は注意を集中しないといけない場面でも、興味がなければ集中モードに切り替えることが困難です。

しかし趣味など、自分の好きなものに対しては、いつの間にかのめりこんでしまい、かえってキリの良いところでやめることができません。

家事など段取り良く行う作業は、炊事、洗濯、掃除、など次々に注意を切り替えて次の作業に移らなければなりませんが、ADHDの人はそこがスムーズにいきません。

集中すべきときに集中できない、やめるべきときにやめられない、こうした注意の切り替えと集中力のオンオフが苦手なために、生活に支障を来たしてしまうのです。

注意の切り替えが苦手なことは、生活リズムにも影響を及ぼします。夜寝たいのに、全然眠るモードに切り替わらず、夜更かししてしまい、昼間は寝不足でぼーっとしてしまう「概日リズム睡眠障害」になりやすいと言われています。

なぜADHDの人は寝つきが悪いのか―夜疲れていても眠れない概日リズム睡眠障害になるわけ
ADHD(注意欠如多動症)の人は、疲れているのに夜寝つけない、ついつい夜更かししてしまうなどの睡眠リズム異常を抱えやすいといわれています。その原因が意志の弱さではなく、脳の前頭葉な