子どもの慢性疲労症候群の15~30%は難治性―「教育と医学」CCFS特集の感想

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日発売された 教育と医学 2016年 6月号 [雑誌]の中の特集2「疲れやすい子:小児慢性疲労症候群」を読んでみました。

特集はp58-83にわたって組まれており、CFS研究者の三池先生、倉恒先生、水野先生が執筆されています。

長年CFS研究に携わってこられた専門家たちによる異なる角度からの解説や、CCFSの治療やに関するデータなど、CCFSの深刻さを理解するのに役立つ内容でした。

詳しくはぜひ本書を読んでいただきたいと思いますが、全体の概要および、個人的に印象に残った部分を少しメモしておきます。

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全体の概要

最初に、それぞれの先生の執筆部分について、ごくおおまかに概観しておきます。

三池先生による「小児慢性疲労症候群とは」

まず三池輝久先生の執筆部分では、約30年にわたり、日本のCCFS研究の第一人者として活動してこられたご経験に基づく、CCFSのついてのわかりやすい説明がまとめられています。

CCFSの主な原因とみられる概日リズムの異常や、それを引き起こす原因、なぜそこから慢性的で重い疲労感が生じるのか、というこメカニズムが丁寧な説明でまとめられています。

後ほど改めて触れますが、CCFS患者の予後に関する深刻な現状も綴られていて、いかに重大な疾患であるか理解する助けになります。

そして、そのような重大な疾患を招かないための取り組みとして、各地の学校と協力して進めている「眠育」すなわち睡眠教育・指導のプログラムが紹介されています。

子どもの慢性疲労症候群(CCFS)とは (1)どんな病気か?
子どもの慢性疲労症候群(CCFS)とは何でしょうか、どんな独特の問題があるのでしょうか。子どもたちの不登校は果たして“心の問題”や“家庭の問題”なのでしょうか。「学校を捨ててみよう

三池先生の取り組みはちょうどニュースになっていました。

くらしナビ・子育て・親子:睡眠不足 脳の発達に影響 - 毎日新聞 はてなブックマーク - くらしナビ・子育て・親子:睡眠不足 脳の発達に影響 - 毎日新聞

倉恒弘彦先生による「疲れやすさと慢性疲労症候群(CFS)」

続く倉恒先生の執筆部分では、主にアメリカを中心として進展し、日本でもさまざまな取り組みがなされてきた慢性疲労症候群(CFS)のこれまでの研究が概説されています。

最近の話題として、イギリスを中心に用いられてきた「筋痛性脳脊髄炎」(ME)という名称の是非や、2015年2月、米国医学研究所が提唱した「全身性労作不耐疾患」(SEID)という新たな疾患概念に対する意見も語られています。

そして近年の研究として、詳しい検査によって、CFS患者の脳のミクログリアに活性化が発見され、その原因として脳に神経炎症が発見されたという国内の研究が詳しく取り上げられています。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と脳内炎症の関連が解明される
CFSに脳内炎症が広く関わっていることがわかったそうです。

CFSの疲れやすさの原因は諸説あるものの、エネルギーの生産が追いついていない可能性、および簡単な作業でも脳の神経細胞の働きの効率化が妨げられ疲弊しやすくなっている可能性、という二つの説が挙げられています。

そのほか、客観的なバイオマーカーとしてミトコンドリアDNAや炎症に関わる成分Xに関して特許を申請中であることや、一般のPET検査施設で脳の炎症の有無を診断できる方法を開発中であるといった興味深い話も触れられていました。

水野敬先生の「疫学や脳科学からみる小児慢性疲労症候群」

最後の水野先生の執筆部分では、疲れやすさを訴える子どもたちに関する追跡研究(コホート研究)など、様々な医学的データがひもとかれています。

まず小児慢性疲労症候群の原因を調べたところ、遺伝的要因より環境的要因のほうが強いという報告から、だれでも小児慢性疲労症候群になりうるという危険が警告されています。

その環境要因として三池先生は臨床の観点から慢性的な睡眠不足との関連を見出したわけですが、医学的データからもそれは裏づけられたようです。

不登校の子どもは、やる気がない怠け者とみなされやすいですが、実際には背後に慢性疲労があって、その結果やる気が低下している可能性も指摘されています。

また近年の研究から、小児慢性疲労症候群の子どもは注意をコントロールする能力が低下していたり、脳の非効率的な過活動がみられたりすることも触れられています。

小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもは脳の情報処理で過活動が生じていることが判明
小児慢性疲労症候群(CCFS)の子どもの脳機能に関する理化学研究所の研究

子どもの慢性疲労症候群の15~30%は難治性

三池先生の執筆部分で特に印象に残ったのが、CCFS患者の予後について記された部分です。

三池先生は、これまで様々な手を尽くしてCCFSの子どもを治療してきましたが、100%満足したといえる治療法はないといいます。

そして一部の患者は、引きこもり状態のままか、日常生活に大きな制限を残したまま生活しているということに触れて、こう述べています。

後者ではちょっとした頑張りの後で疲労による日常生活への支障が起こるので、自らの行動を最小限に抑えてエネルギー消費を抑えるなど、極めてストイックな生活を余儀なくされている場合もあります。

周囲からの理解を得にくい状態で、健気に生きている方たちがほとんどです。

「難治性」とは、医療に抗して五~十年以上も改善しないことですが、CCFS(不登校)の15~30%程度を見込んでおくべきでしょう。

中には、大人になっても回復せず、周囲からの理解も得にくい中で、苦労を重ねながら健気に生活している人もいると書かれています。

もちろんこれは、今まさにCCFSと闘病している患者や家族の不安を煽るためのものではありません。

CCFSの子どものうち、大多数は回復し、無事に社会に出て行くことができる、という励みになる事実を思いに留めておくのは大切です。

しかしCCFS患者の15-30%くらい、つまり、10人中2,3人ほどは、十分回復しなかったり、重い体調不良が大人になっても続いたりすることもまた確かであり、CCFSは決して甘く見てよい疾患ではない、という認識もまた重要です。

CCFSの患者は、あたかも概日リズムが赤ちゃんのころに戻ったかのような不規則さを見せるので、概日リズムの中枢が崩壊してしまっていて、完全な修復は望めない場合もあるかもしれないと書かれています。

そうでなくても、いったんCCFSが完成すると、回復までに数年から十数年を必要とするほど治療は困難を極めるので、何よりも予防の取り組みが大切だとして、「眠育」を広める重要性が説かれています。

こうした難治性の患者についてのデータは、すでにCCFSを発症してしまい、長年闘病を余儀なくされている人たちにとっては辛く感じられると思います。

医療の専門家による支援や、こうしたCCFSを解説した書籍はもちろん、様々な方法を活用することによって、少しずつであっても必要な情報を集め、体調を管理し、社会に適応していく助けを得ていくことが大切でしょう。

 近年では、以前にブログで紹介したように、小児慢性疲労症候群の元患者たちによる当事者団体も設立されています。

「おひさまの家」のサイト開設―小児睡眠障害・小児慢性疲労症候群の当事者団体
兵庫県立リハビリテーション中央病院子どもの睡眠と発達医療センターの元入院患者の方たちが立ち上げた、子どもの睡眠障害や慢性疲労症候群に関する当事者団体「おひさまの家」のサイトが開設さ

決して怠けではない深刻な病気

このブログでもずっと扱ってきたように、子どもの慢性疲労症候群は、学校嫌いの不登校や、単なる怠けや落ちこぼれとみなされてしまうことが少なくありません。

実際には医学的な問題なのに、本人のやる気のなさや努力不足のように非難されてしまい、自分のせいだという思いに苦しみながら、引きこもりになって何十年も苦闘している人も大勢いるのではないかと思います。

この教育と医学 2016年 6月号 [雑誌]の特集記事は、ほんの25ページほどですが、小児慢性疲労症候群が現実の病気であることを認識する助けになる資料であり、要点が凝縮されていると思います。

決して本人のやる気のなさのような「こころの問題」ではなく、ときには延々とその後の人生に影響を及ぼすことさえある深刻な病気であることを理解するのに役立つでしょう。

価格も740円と比較的安価なので、気になる人はぜひ買って読んでみるようお勧めします。

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