ソマティック・エクスペリエンス(SE)を知る10ステップ―「凍りつき」を溶かすトラウマセラピー


子どもが逆境やトラウマを経験すると、闘争・逃走反応を起こすか「凍りつき」状態となり、体の感覚が鈍る。

…最も効果的な方法の一つに、身体感覚に注意を向ける「ソマティック・エクスペリエンス」というセラピーがある。(p258)

どものころに経験した逆境的体験が、生物学的な変化を脳や身体にもたらし、思春期以降、さまざまな精神的・身体的な病気を発症させていく。近年、トラウマは単なる「こころの病」ではなく、全身疾患であることが明らかにされつつあります。

ACE研究が明らかにした「小児期逆境後症候群」ーなぜ子ども時代の体験が脳の炎症や慢性疾患を引き起こすのか
17000人以上のデータから子ども時代の逆境体験と成人後の体調不良の関連性を導き出した画期的なACE研究の取り組みをもとに、幼少期の経験がわたしたちの一生にわたり、心身の健康にどん

そのことを説明した本、小児期トラウマがもたらす病 ACEの実態と対策 (フェニックスシリーズ)には幾つかの有望な治療法が紹介されていますが、そのひとつは「ソマティック・エクスペリエンス」(SE)でした。

ソマティック・エクスペリエンスとは、字義通りには「身体の経験」という意味です。ここ日本ではまだあまり知られていませんが、ヴァン・デア・コークらトラウマ研究の第一人者たちから注目され、アメリカ航空宇宙局(NASA)でも活用されているようです。

ソマティック・エクスペリエンスは、従来のカウンセリングを主体としたセラピーとはまったく異なるアプローチで「こころ」ではなく「からだ」に働きかけます。

この記事で紹介するように、もともと原因不明の慢性疲労症候群や線維筋痛症、胃腸障害、パニック障害のような症状をきっかけに考案された治療法であり、特に子ども時代の逆境体験によって、慢性的に「凍りつき」に陥っている人に効果があると考えられます。

「凍りつき」とは、どのような生物学的現象なのでしょうか。トラウマ性の身体症状にはどんなものがあるでしょうか。ソマティック・エクスペリエンスはどのようにして身体に働きかけるのでしょうか。

この記事では、ソマティック・エクスペリエンス(SE)の理論を構築したピーター・ラヴィーンの本をはじめ、さまざまな文献を参考に、SEを理解するための10のステップをまとめてみました。

スポンサーリンク

これはどんな本?

今回参考にした本は多数ありますが、おもに以下の三冊を中心としています。

身体はトラウマを記録するーー脳・心・体のつながりと回復のための手法は、現代のトラウマ研究の第一人者ともいえる、ベッセル・ヴァン・デア・コークによる、非常に評価の高い一冊です。

とくに子ども時代に経験したトラウマは、従来のPTSDとはまったく異なる「発達性トラウマ障害」(DTD)という複雑な身体的・精神的な症状を引き起こし、治療するには身体的な経験が必要である、ということが様々な角度から書かれています。

身体に刻まれた「発達性トラウマ」―幾多の診断名に覆い隠された真実を暴く
世界的なトラウマ研究の第一人者ベッセル・ヴァン・デア・コークによる「身体はトラウマを記録する」から、著者の人柄にも思いを馳せつつ、いかにして「発達性トラウマ」が発見されたのかという