解離性障害をもっとよく知る11のポイント―発達障害や愛着障害,身体症状との関係など


記憶が失われる、自分が自分でないように思える、現実感がなくなる、さまざまな幻聴が聞こえ、視界に黒い影が見える、だれかの気配を感じる、自分の中に他人がいる、 次々に別の人格が出てくる…。

うした症状は「解離性障害」として知られています。有名な記憶喪失(解離性健忘)や、多重人格(解離性同一性障害)も、この「解離性障害」と呼ばれる病気の一つです。

解離性障害はしばしば子ども虐待や性犯罪のようなおぞましい事件の被害者が発症する極めて異常な病気だと説明されることがあります。確かに悲惨なトラウマ経験の結果、解離性障害になる人もいます。

しかし、実際には、解離性障害の原因はもっとさまざまであり、目立ったトラウマ体験がない、ごく普通と思える家庭の子どもが発症することもあります。またADHDやアスペルガー症候群といった発達障害が関係していることもあります。

解離はまた、精神的な症状だと思われがちですが、多種多様な身体症状を伴うからだの病理と捉えられるようになってきています。

さらに、意外に思えるかもしれませんが、解離性障害は決して異常な病気ではなく、たとえさまざまな解離症状があっても、病気とはみなされず、ごく普通に暮らしている場合もあります。

頻繁な離人感や、空想の友だち現象、さらには複数の人格が自分のうちに存在するという強い解離症状があっても、それをうまくコントロールして社会に適応している「マイノリティ」な人たちもいるのです。

この記事ではこころのりんしょうa・la・carte 第28巻2号〈特集〉解離性障害という本やその他の資料から、解離性障害の原因や実態をもっとよく知るのに役立つ11のポイントをまとめてみました。

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これはどんな本?

今回おもに参考にしたこころのりんしょうa・la・carte 第28巻2号〈特集〉解離性障害は、解離性障害の専門家たちが、解離をさまざまな観点から網羅的に説明した共著です。

第一部は、「解離性障害Q&A」と題して、総勢30人以上もの専門家が、解離性障害をめぐるよくある50の疑問に、1問につき1ページずつ割いて詳しく答えています。

第二部は、有名な医師たちによる座談会からはじまり、専門的な論文が幾つか掲載されています。

基本的には一般向けではなく専門家の本ですが、特に「解離性障害Q&A」の部分は少し知識のある人なら、役立つ情報が多いのではないかと思います。

解離性障害について知っておきたい11の特徴

これから解離性障害の原因や実態を理解するのに役立つ11の話題を考えますが、もちろん、解離性障害の原因は人それぞれです。

複数の要因が複雑に絡み合っていることもしばしばですし、途中でも触れますが、素人判断による診断や治療はたいへん危険です。

このブログを含め、ネット上の情報は、あくまで参考程度にとどめて、治療においては専門家の指導を仰ぐようになさってください。

1.虐待ばかりが原因とは限らない

解離性障害や解離性同一性障害(DID)というと、とかく身体的・性的虐待を受けた子どもが発症するなどの凄惨なイメージがつきまといます。

確かにそうした残酷な子ども時代を過ごしたために解離性障害を発症する人は少なくありません。

しかし、柴山雅俊先生は、虐待より目立たない慢性的なストレスが解離性障害につながるケースがあることを語っています。

私自身は、家族の内や外における居場所のなさがもう少し焦点を当てられてもいいようにに思う。

両親の不和、家族成員間の対立、葛藤のため、つねに自分がその緩衝役を強いられ、いわば身代り、犠牲者としての役割を強いられてきた症例。

転校を繰り返し、そのためイジメの対象となった症例。

多くの症例が「安心していられる居場所」をこの世に得ることができずに、過度の緊張を強いられていたと訴える。(p112)

柴山先生が重視するのは、虐待などの壮絶な体験よりも、むしろ「安心していられる居場所」の欠如です。

虐待などの深刻な外傷を受けた場合でも、解離性障害の引き金となるのは、虐待そのものではなく、その苦痛や恥を一人で抱え込まなくてはならない状況です。

深刻な虐待を受けても、愛情深い家族や友人が支え、安心できる居場所となって保護し包み込んでくれるなら、徐々にであれ傷を癒やすことができ、解離性障害のような深刻な問題を発症せずにすむかもしれません。

一方で、外からは、それほど悪くは見えない家庭で育ったとしても、両親の不和や家庭内の緊張などのせいで「安心していられる居場所」がどこにもなく、常に板挟みになって自分を犠牲にしてきたような子どもは、深刻な解離性障害を発症するかもしれません。

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 解離性障害とは、子どものころに、ひとりではとても抱えきれないようなストレスを抱え、まわりのだれも、家族や友人も助けになってくれないような状況で、たったひとりで生き延びなければならなかったときに生じる防衛反応なのです。

どこにも逃げ場がない、安心できる居場所がない、という状況は、「逃避不能ショック」と呼ばれたり、「公開羞恥刑」(公衆の面前で恥をかかされる刑罰)に例えられたりします。

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