アスペルガー障害は発達障害の一つで、自閉症や広汎性発達障害とともに、自閉症スペクトラム障害と呼ばれます。
…幼少期に想像上の友だちがいたという例も多く、空想の世界に浸っていました。(p82)
そう述べるのは、解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)の著書柴山雅俊先生です。
このブログでは、想像上の友だち(イマジナリーフレンド/イマジナリーコンパニオン)について、いろいろな情報を扱ってきました。想像上の友だちという現象は、解離というメカニズムと深く関わっていると考えられています。
アスペルガー症候群は自閉スペクトラム症という発達障害の一種ですが、解離とどのような関わりがあるのでしょうか。なぜ想像上の友だち(イマジナリーフレンド)を持つのでしょうか。イマジナリーフレンドには、どのような例があるのでしょうか。
この本の内容の一部をまとめてみたいと思います。
目次 ( 各項目までジャンプできます)
解離とは何か
解離とは、心を守る働きを持つ人間の脳に備わる能力のことです。
解離は、本来一人であるはずの自分が、分離してしまう状態をいいます。現実にいる自分と、見ている自分とか分離したり、何が現実で何が空想かわからなくなってしまったり、自分以外の気配を感じたりします。
といっても、何も特別なものではなくて、わたしたちが普段から経験しているいろいろなことに関係しています。
たとえば、
■鏡を見るのがなんとなく怖い
■後ろにだれかいるような気がして、ハッと振り返る
■思い出を心に浮かべると自分の姿が見える
■空想に没頭してしまう
■夢の中で自分の姿を後ろから見ている
■デジャヴがある
そうした普通のことも健常なレベルの解離の一種です。しかしそれが、非常に頻繁にあり、生活の支障をきたすほどになり、さらには記憶喪失や、現実感のなさや、多重人格などが出てくると病気の域に入るのです。
解離性障害は特殊な脳のトラブルではなく、病気と健常の境目もはっきりしていないものだと柴山先生は述べます。
下の項目は、上に行くほど健常な解離で、下に行くほど病的な解離です。 (p57,72)
■想像力が豊か
■頭の中に映像が見える
■客観的な視点をもつことがある
■人形やぬいぐるみを擬人化する
■霊を見たことがある
■デジャヴがある
■体外離脱体験がある
■想像上の友人がいる
~解離性障害の境目~
■転換症状(体の不調)
■解離性健忘(記憶が抜け落ちる)
■解離性遁走(いつの間にか知らないところにいる)
■解離性同一性障害(多重人格)
↓ (下に行くほど重症)
こうした解離の症状が起こる背景には、いくつかの原因があります。ここでは簡単に3つの原因を取り上げておきましょう。
小さいときから想像力のある子だった
まず一つ目は、空想傾向のある子どもだったということです。空想傾向(fantasy-pronenes)とは、ウィルソンとバーバーが催眠感受性の研究で発見した、想像にのめりこんでしまう性質を持つ人たちのことで、人口の4%に見られます。
想像上の友だちと遊ぶ。その友だちは実在するかのように、目で見て、声を聞くことができる。
空想上の物語があり、長期間にわたり物語が展開しつづけ、映像を映画のように見ている。人物設定やストーリーは具体的かつ詳細。(p60)
そうした想像力のため、子どものころから不思議な体験をしていて、文章や絵画、演劇などの才能があるそうです。
子どもが想像上の友人を持つのは、ごく普通のありふれた現象ですが、その実在を信じていたり、幻覚性が強かったり、大人になるまで残ったりする場合は、もともとの空想傾向の強さが疑われます。
心に深い傷を受けたことがある
二つ目は虐待、親の不仲・離婚、性的外傷体験、居場所のなさ、いじめ、交通事故などのPTSDです。特に両親の不仲は解離性障害の55%、いじめも55%、性的外傷体験は45%に見られるそうです。(p62)
近年では、記憶に残っていないような、生後半年から1歳半ごろまでの、ごく幼いころの養育環境が混乱していた場合、それが愛着トラウマとして解離を引き起こす素因になるとも言われています。
そうした幼少期の経験の結果、成長してから何らかの耐え難い苦痛に遭遇したとき、自分自身から切り離して解離させることで対処するようになると考えられます。
ずっといい子だった
最後に、気質的な要因として、ずっといい子を演じてきた、という点があります。いつも相手に合わせようとして、空気を読むようにしてきました。
「相手を怒らせないように」「嫌われないように」してきた結果、自分の本音と建前が分離してしまうのです。(p68)
なぜアスペルガーは解離しやすいのか
これら解離性障害の主な特徴と、解離に至る原因を調べると、なぜアスペルガーをはじめ、自閉スペクトラム症という発達障害を持つ人が解離しやすいのか、ということが見えてきます。
アスペルガーの人が解離しやすいのは、単一の原因によるのではなく、複数の理由に基づいています。(p82-83)
(1)理解されない
一つ目はコミュニケーションの問題です。
アスペルガー症候群の人は、コミュニケーションをとることが苦手で、仲間関係をうまく作れません。
親の言うことを理解できない、という理由で虐待されたり、友だちとうまく付き合えない、という理由でいじめに遭ったりします。
家でも学校でも安心できる居場所がない、という状況に追い込まれ、心に深い傷を負います。その結果、心を解離させて、ストレスをやり過ごすようになるかもしれません。
また、空気が読めないことの代償として、わからないからこそ過剰に気を使い、人の顔色を伺うようになってしまう場合もあります。
▼「空気を読みすぎる」過剰同調性
アスペルガー症候群は「空気を読めない」とされていますが、そのためにかえって気を使いすぎる過剰同調性に陥ることがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
(2)記憶があふれる
二つ目は、アスペルガーの独特の脳機能によるものです。
アスペルガーは情報の整理が苦手で、五感から入ってきた情報が過剰にあふれてしまいがちです。本来なら必要最低限の情報が取捨選択されるのですが、アスペルガーの脳は加工されない情報で満たされます。
その結果として、見たものをそのまま記憶できたり、独特の感性を持っていたりすることも多いのですが、反面、記憶の容量がいっぱいになりやすいようです。
そうすると、これ以上容量を圧迫されるわけにはいかないので、自分から記憶を切り離して対処するようになります。これが健忘やフラッシュバック(タイムスリップ現象)となって当人を苦しめることがあります。
(3)対象に没頭する
三つ目は、こだわりや熱中するものがあるという性格です。
蛍光灯に見入るなど、光や音、ものなど、自分の興味のあることに我を忘れて没頭しがちです。自分と周りの世界との境界があいまいなので、すぐのめりこんでしまいます。
すると、空想の世界に入り込んでしまったり、現実感がない離人症が現れたりします。現実世界に居場所がなく、孤独であることも、空想への没入を加速させます。
ぼくと数字のふしぎな世界によれば、イマジナリーフレンドを持っていたことを自伝で書いているダニエル・タメットは、子どものころから物語の世界に没頭する傾向があったそうです。
「ナルニア国」は、ぼくの大好きな場所になり、その冬ぼくは幾度となくそこ訪れた。物語を読み直すたび、何ヶ月にもわたって、すばらしい世界とその描写の中に住んでいられる気がした。(p25)
このように、アスペルガー症候群の人は、前述のようなトラウマ経験がない場合でも、脳のもともとの機能のせいで自然と解離しやすい傾向を持っていると言われています。詳しくはこちらをご覧ください。
アスペルガーの空想の友だち
こうした解離しやすさの結果、アスペルガー症候群では、時おり空想の友だち現象が思春期や青年期になってもみられることがあるようです。
こちらの精神科医の方のブログには、広汎性発達障害の解離による空想癖の一例が載せられています。
解離が起こったとどう認識するか?|kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)
広汎性発達障害などの人たちで、あまりにも空想するため、その時間、いったい何をしていたか思い出せない人がいる。
ある男性は、ある若い美しい女性の冒険あるいは、成功をいつも空想していた。本人は、異性ではあるものの、その女性に自分を擦り合わせているようにも見えたが、一度もそれについて僕は言及していないし、議論もしていなかった。
…(中略)
その美しい女性の空想をする男性だが、一時、薬物療法を継続したり、中止したりだったが、社会的成功を収め、その空想上の美しい女性は消失した。薬も全く服用しなくて大丈夫になった。
この結果は、なんとなく理解できる。
彼にとって、もはやその女性は必要ではなくなったのである。
アスペルガー特有の視覚的思考、つまり鮮明な視覚的イメージを思い浮かべられるといった特性なども、空想をより豊かなものにして、より詳細に具体的に想像するよう動かすかもしれません。
先ほど出てきたアスペルガー症候群の有名人で、自伝も書いているダニエル・タメットは、自身のイマジナリーフレンドについて、ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)の中でこう回想しています。
アスペルガー症候群の人たちは友だちをつくりたいと心から思っているが、それがとても難しいとわかっている。
ひとりぼっちだというひりひりする感覚を心の奥で感じていて、それがぼくにはとても辛かった。
友だちがいない代わりに、ぼくは校庭の樹木のあいだを歩くときにいっしょにいてくれる友だちを想像でつくった。(p97)
いま思うと、アンは、ぼくの孤独と不安とが人の姿となって現れたものだったのだ。
自分の限界を知り、そこから脱したいというぼくの心がつくりだしたものだった。
彼女を手放すことで、ぼくはこの広い世界に自分の場所を探し、そこで生きる覚悟を決めたのだ。(p99)
タメットの場合、孤独がきっかけで、一時的にイマジナリーフレンドを持つようになったことがわかります。彼のイマジナリーフレンドは、はっきりと目に見えるほど現実感のあるものであり、単なる空想ではなく、明らかに解離が働いていたといえます、
しかしダニエル・タメットは解離性障害ではありませんから、アスペルガーは解離しやすい一つの要因となるとはいえ、病的なレベルに進むとは限りません。
自閉症はイマジナリーフレンドを持たない?
ここまでは、アスペルガー症候群の人のイマジナリーフレンドを見てきました。しかし、哲学する赤ちゃん (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)によると、イマジナリーフレンドは心の理論と関係していて、自閉症の子どもは空想の友だちを持たないという意見もあります。
自閉症の子には空想の友だちがいないし、そもそもごっこ遊びをしません。ごっこ遊びとは何かということからして、わからないようです。
…自閉症の子どもは他人の心の因果関係についての理論を組み立てるのに大変な苦労をしますし、いろいろな空想をして遊ぶこともありません。(p91)
また、おさなごころを科学する: 進化する幼児観によると、イマジナリーフレンドを持つ子どもは、誤信念課題(サリーとアンの課題)が得意な傾向があるそうです。これはアスペルガーの子どもが苦手とするものです。
空想の友だちという現象は、他の人の心の働きを想像できる「心の理論」と関係していて、「心の理論」が弱いとされるアスペルガーなどの自閉症ではイマジナリーフレンドを持たないのではないか、というわけです。
しかし、これは正確ではありません。
近年の研究では、アスペルガー症候群の人たちは心の理論を持たないのではなく、一般の人たちとは異なる心の理論を持っているだけであろことがわかってきています。
その証拠に、自閉症の人たちは自分と同じ自閉症の人や、動物が相手であれば、適切に感情を汲み取り、互いに共感し合うことができます。
心の理論が異なれば、それによって創られた空想の友達の性質もまた変わってきます。それで、アスペルガー症候群の人が持つイマジナリーフレンドは、幼児のイマジナリーフレンドと異なっている可能性があります。
先ほどのダニエル・タメットが持った空想の友だちのアンは、身長180cmのおばあさんであることもさることながら、話す内容は子どもの空想の友だちにしては異例な深遠な哲学的話題だったそうで、一般のイマジナリーフレンドとの大きな違いが感じられます。
また、火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)によると、動物管理学者のテンプル・グランディンは、ダニエル・タメットと同じく、世の中で成功したアスペルガー症候群の人物として有名ですが、彼女もまた空想の友だちを持っていたと述べています。
テンプルは学校で友達に強く憧れ、(二、三年、彼女は空想のなかで友達をつくっていた)友達になると徹底的に忠実だったが、彼女の話しぶりや行動には他人を遠ざけるなにかがあり、友達は彼女の知性を尊敬はしても、仲間として完全に受けいれてはくれなかった。(p368)
彼女が空想の友だちを持った経緯もまた、ダニエル・タメットとよく似ています。どちらも、学童期に入り、学校に行き始めてから、孤独の気持ちゆえに空想の友だちを作り出しています。
これは、通常子どもに見られる空想の友だちと大きく異なる特徴です。一般的に空想の友だち現象は、まだ幼児期のころに生じることが多いからです。
じつは、以前に取り上げたように、イマジナリーフレンドが最も頻繁に観察されるピークは、2歳半から3歳半の時期と、9歳半から10歳半にかけての時期の2回だとされてます。
自閉症の子どもはイマジナリーフレンドを持たないという意見は発達心理学者によるもので、幼児を大人が観察したデータに基づくものです。
それに対し、アスペルガーはイマジナリーフレンドを持ちやすいという意見は精神科医によるもので、精神科を受診する大人の聞き取りから導き出された結論です。
この精神科で散見される、大人になってからも記憶している、あるいは大人になっても存在しているイマジナリーフレンドの多くは、遅い時期のイマジナリーフレンドであると思われます。早い時期のイマジナリーフレンドは幼児健忘症で忘れていることが多いからです。
ダニエル・タメットの場合もテンプル・グランディンの場合も、イマジナリーフレンドを持ったと回想しているのは学生の時期に関してであり、後者の遅い時期にピークを迎えるイマジナリーフレンドであると考えられます。
この早い時期と遅い時期のイマジナリーフレンドは区別すべきであるとする専門家もいることから、アスペルガーの人は、幼児の時期はイマジナリーフレンドを持たないものの、学生になってから持ちやすい、ということなのかもしれません。
早い時期のイマジナリーフレンドが非常に発生率の高い普遍的な現象なのに対し、遅い時期のイマジナリーフレンドは、比較的少数である、という点もこれを裏付けています。
早い時期のほうは社会の多数派である定型発達者に関係しており、遅い時期のほうは社会の少数派で、特に学生の時期に孤独を味わいやすい発達障害者に関係しているという推測がなりたつからです。
アスペルガー症候群などの発達障害の人たちの持つイマジナリーフレンドが、通常のイマジナリーフレンドよりも出現時期が遅いのは、心の理論をはじめ、社会的能力の発達が遅れるせいでもあるでしょう。
先ほどの火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)では、テンプル・グランディンについてこう書かれています。
八歳のとき、テンプルはふつうの子供なら幼児期にみられるはずのごっこ遊びができるようになった。だが、機能の低い自閉症児にはこれがまったくできない。(p367)
この記述からわかるように、自閉症の中でも高機能なタイプとされるアスペルガー症候群の場合は、たとえ遅れるとしても心の理論が発達していき、ごっこ遊びもできるようになるのです。
確かに幼児期にはまだ未発達なので、アスペルガー症候群を含め自閉症の幼児はイマジナリーフレンドを持たないように見えるのでしょうか。
しかし、もっと長い目で見て、学童期ごろになると、ちょうど学校で孤独を感じやすい時期に合わせて、アスペルガー症候群でもイマジナリーフレンドを持つケースがある、ということがわかります。
もちろん遅い時期のイマジナリーフレンドのすべてが発達障害と関係しているというつもりはまったくありません。その時期に孤独を経験する原因はほかにもたくさんあります。あくまで、一つの要因としてアスペルガーが関わっている場合がある、という意味に過ぎません。
▼アスペルガーにはアスペルガーのIFがある
アスペルガー症候群の人のイマジナリーフレンドについて、より詳しい考察は、こちらの記事の第四章をご覧ください。
いろいろな想像上の友だち
この本には、そのほかの想像上の友だちについて、いろいろな事例が書かれています。アスペルガー症候群ではなく、解離性障害の事例ですが、いろいろなパターンがあることがわかります。
どれも、イマジナリーフレンドが自分から話しかけてくるという自発性を伴っているものです。自発性のあるイマジナリーフレンドは、病気との境目にいる場合があります。
■おなかのあたりにいる女の子
私の体の中には、小さな女の子がいます。いつもはおなかのあたりにいて、ときどき頭の中にも来ます。気が強くていじわるで、私のすることにブツブツ文句を言うのです。
機嫌が良いときは二人でおしゃべりすることもありますが、なにをするにも見られているので、落ち着かない気分です。(p17)
だれかに見られている感じ、という気配過敏を伴う一例です。また体感異常(セネストパチー)もあるのかもしれません。
■頭の中にいる女の子
私は、私の中にいる女の子とおしゃべりをします。頭の中からその子の声がしてきて、話を聞いてくれたり、アドバイスをしてくれたりするのです。今度、遊びに行こうと誘ったりもします。
もう一人の子は「いっしょに死のう」とか「あっちに行けば楽になれるよ」と耳元で言うだけで、私の話は聞いてくれません。(p23)
この例では幻聴が顕著です。統合失調症の幻聴と違うのは、その声がだれのものかわかっているのと、幻聴であることを心得ていて、妄想を信じたりはしていないことです。
■顔のよく見えない誰か
体の中の、ちょうどおなかのあたりに誰かいます。30~40センチほどの大きさで、黒くて顔はよく見えません。
子どもの頃からずっとそこにいて、ぼくが疲れたときに限ってうるさく話しかけてきたり、悪口を言ったりします。(p37)
この例は一つ目と似ています。子供の頃から自分の体の中に何者かの気配を感じ、おびえたり、困惑したりしながらも、長年その存在と付き合っているというのはしばしばあることだそうです。
■いつも遊んでいた子
当時、幼稚園では一人も友だちがいなくて、いつもその子といっしょに遊んでいました。
ある日、急にいなくなったので、お母さんや幼稚園の先生に聞いても、そんな子はいないと言われました。意味がわかりませんでした。(p61)
最後に挙げるこの例は、まったく普通の経験です。想像力が豊かな子どもの経験するイマジナリーフレンドで成長とともに消えていきます。
このように、イマジナリーフレンドはさまざまな形態をとります。比較的健康なものでは、当人が話しかけるときだけに会話ができ、当人の良き相談相手、遊び相手になるものがほとんどです。
しかし、病的な域に踏み込むと、自発的にところかまわず話しかけてきて、中傷や非難を口にしたり、自殺をそそのかしたりするようです。
想像上の友だちはどうなるか
このような想像上の友だちが、時間とともにどのように変化するのかはわかりません。
一つのデータとして、解離性障害の30%に想像上の友だちがいたことがわかっているので、あるものはPTSDなどをきっかけに解離性障害に発展するのかもしれません。(p61)
解離性障害の患者は、20代なかばの人がピークで、30代、40代もいるものの、もっと上の年代になると減っていくそうです。ある程度の年齢になると、現実に向き合わざるを得なくなるようです。(p98)
そのような意味では、年配になるにつれて、イマジナリーフレンドは消えてしまうものなのかもしれません。実際のところ、青年期のイマジナリーフレンドの研究はありますが、老年期の研究はなされていないため、正確な点は不明です。
少なくともわかっているのは、この記事で考えてきたように、ある種の創造的な性格を持ち、居場所のなさを経験し、外傷体験に直面した人は、想像上の友だちという不思議な現象を経験しやすい、ということです。
そして、その要因のひとつにアスペルガー症候群という自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)も関係しているということなのです。
当ブログのイマジナリーフレンドに関する記事一覧はカテゴリ空想の友だち研究からどうぞ。