朝起きできない昼夜逆転「概日リズム睡眠障害」を治すには


■どんなに努力しても夜眠れず、朝起きられない…。
■学校や職場の時間に合わせられない…。
■10時間近く眠っているのに疲労感が強い…。
■そんな自分を努力不足だと感じて責めてしまう…。

しあなたが、そんな根深い睡眠障害に悩んでいるとしたら、さまざまな改善のための努力を払ってはうまくいかないことを経験してきたのではないでしょうか。ふつう、昼夜逆転や、朝起きられない症状は個人の努力でどうにかなる問題と思われがちです。

ところが、この睡眠障害について、専門書にはこのように書かれているのです。

この状態の過眠(10時間睡眠)の多くは、睡眠相後退型で、睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome:DSPS)と呼ばれる難治性の睡眠障害であり、日常生活を不可能にする究極の睡眠障害である。(p27)

睡眠相後退症候群とは概日リズム睡眠障害のタイプの一つで、思春期に発症することが多く、不登校や引きこもりの主原因として注目されている病気です。

「難治性」、「日常生活を不可能にする究極の睡眠障害」。これこそが、この難しい睡眠障害と闘ってきた人たちの本心を代弁する言葉ではないでしょうか。

この記事では、この睡眠障害、概日リズム睡眠障害の「睡眠相後退症候群」(DSPS)について、このブログで過去に取り上げた内容をまとめます。その原因から治療法まで、集められる限りの情報を網羅しようと思います。

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第一章 睡眠相後退症候群(DSPS)とは

睡眠相後退症候群(DSPS)とは、概日リズム睡眠障害、あるいは、睡眠覚醒スケジュール障害と呼ばれる病気の一種です。1981年にモンテフィオーレ医療センターのWeitzmanらによって提唱されました。

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するによると、睡眠相後退症候群には以下のような特徴があります。

(1)夕方から夜にかけて目がさえ、夜12時前には眠れず、入眠が夜2時以降になるため、昼夜逆転傾向になる
(2)一度寝つくと中途覚醒はほとんどなく、10時間あるいはそれ以上長く眠る
(3)社会の活動開始時間に起床できない。自然に目が覚めるのは昼頃となり、遅刻・欠席・欠勤状態となる
(4)長時間睡眠にもかかわらず睡眠質低下に伴う日中の眠気、頭痛、倦怠感、食欲不振の増加が見られる
(5)学業・仕事に集中できない
(6)慢性化し、学業・仕事を続けることができない
(7)うつ状態が現れる
(8)日本だけでなく世界的な問題で不登校や引きこもりの主原因である
(9)治療が極めて困難である (p28)

国立精神神経センターによると、睡眠相後退症候群は、一般人口での有病率は約0.4〜1.7%、慢性不眠のある方の7〜10%が該当すると推定されています。

睡眠相後退症候群は主に思春期に発症します。修学やキャリア形成の大切な時期に登校や出勤ができず、休学や退職を余儀なくされることも少なくなく、大変深刻な転帰を辿ることが多い疾患だと言われています。

そのような経緯から、睡眠相後退症候群は不登校の子どもに関する研究でよく知られており、不登校の子どもの80%が昼夜逆転傾向の過眠型睡眠障害を示すそうです。

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するは、「“DSPSそのものが不登校と考えてもよい”といってもよいかもしれない」とさえ書かれています。

6つある概日リズム睡眠障害の1つ

概日リズム睡眠障害は全部で6種類存在し、睡眠相後退症候群はその中の一つです。睡眠障害のトピックス:睡眠・覚醒リズム障害について - 日本医科大学を参考すると、以下のようなリストになります。

1. 時差症候群…いわゆる時差ボケ
2.交代勤務性睡眠障害…シフトワーク勤務による睡眠障害
3.不規則型睡眠・覚醒パターン…子どものときから睡眠相が確立していない人、脳機能異常の人に見られる
4.睡眠相後退症候群…若者に多い。睡眠相が後ろにずれる
5.睡眠相前進症候群…老人に多い。睡眠相が前にずれる
6.非24時間型睡眠・覚醒症候群…若者に多い。睡眠相がずれていく

このうち非24時間型については、別の記事でまとめてありますので、そちらをご覧ください。

睡眠リズムがどんどんずれていく非24時間型睡眠覚醒症候群(non-24)の原因と治療法まとめ
同じ時刻に眠ることができず、睡眠時間帯が毎日遅れてゆく。時差ぼけ症状に苦しみ、社会生活に大きな支障が生じる。そしてときには慢性疲労症候群(CFS)と診断される。数ある睡眠障害の中で

第二章 睡眠相後退症候群の症状

睡眠相後退症候群は単なる夜型人間や、不眠症とは異なります。日常生活がまっとうに送れなくなるような、さまざまな症状が出てきます。それらを具体的にみてみましょう。

非回復性睡眠(NRS)

睡眠相後退症候群(DSPS)の患者の多くは、極めて質の悪い睡眠を抱えています。目が覚めると同時に疲労感を訴え、だるく、体を動かす意欲もわかず、疲労がまったく回復していません。それどころか、「疲れるために寝たような感じ」と表現する人もいます。

このような、疲労が回復しない睡眠のことを「非回復性睡眠」(NRS)といいます。「NRSの患者は若年層に多く、身体のあちこちで炎症反応が亢進している」ことがわかっており、NRSを抱える男性は死亡率が悪化するというデータもあります。

いくら寝ても疲れが取れない「非回復性睡眠」(NRS)―身体のあちこちで炎症反応

10時間以上の過眠

睡眠相後退症候群(DSPS)の患者は、平均10時間以上寝ることが多くあります。なかなか寝つけませんが、いったん眠ると昼近くまで目が覚めず、中途覚醒もありません。

午前2時から6時になるまで、どれだけ努力しても眠ることができず、一度眠ったら、どんなに起きようとしても起きれません。10時間もの間ぐったりと眠り続けます。起きるのは午後0時から4時頃になり、極端な場合は起きたら日が暮れていることでしょう。

10時間以上寝ると希死念慮が強くなる
10時間以上寝る人は自殺念慮が強いそうです。

モーニング・ストーム

もしも、睡眠相後退症候群の人が、朝方に起こされるならどのような反応が見られるでしょうか。日本医科大学付属多摩永山病院神経科の山寺 博史先生は、睡眠障害のトピックス:睡眠・覚醒リズム障害について - 日本医科大学の中でこう書いています。

入眠時間や覚醒時間が一定の時間遅れて社会生活に支障をきたす睡眠・覚醒リズムを睡眠相遅延症候群という。

具体的には,午前4時頃にならないと入眠できず午後0時頃に覚醒し、途中周りの人がどんなに起こそうとしても覚醒しなく、たとえそれに対して反応してもあとで記憶がなく、時にはあたかも反抗するかの如く物を投げるなど暴力行為を呈することがある。

これを morning storm ともよび、もうろう状態に近い意識障害の状態である。

朝無理やり起こされると、青白い顔で、立ち上がることもできないという人もいれば、ここに書かれているように暴力行為に及ぶ人もいます。不登校の子どもでは、親が朝起こそうとしたことすら覚えていなかったりします。いずれしても、朦朧とした意識障害の状態であり、とても目覚められる状態ではありません。

性格が変わる

睡眠相後退症候群になると性格が変わります。それまで他人への悪口や不満など口にするような人ではなかったのに、クラスメイトや同僚、先生や上司への悪口や不満を口にするようになることがあります。

気分がふさぎこみ、うつ病に似た抑うつ状態になりますが、抗うつ薬の効果はありません。

後の部分で考えますが、睡眠相後退症候群の一因は慢性的な睡眠不足にあります。国立精神神経センターの研究によれば、慢性的な睡眠不足は、抑うつと深く関係しています。

睡眠不足がたった5日続くだけでも、脳の左扁桃体という部分の活動が増大するようになります。抑制する別の部分がうまく連動せず、効果的に調節できなくなります。するとポジティブは抑制でき、ネガティブだけが抑えられない特徴的な感情の状態になるといいます。

特に、睡眠不足が強いほど左扁桃体の機能が低下し、不安・抑うつ傾向がより強まることが分かったそうです。睡眠不足が慢性化して、睡眠相後退症候群になった人の場合は、特に危険であることが窺えます。

自分でも気づいていない睡眠不足が抑うつと不安を強めるという研究―子どもの不登校は本当に心の問題?
子どもの睡眠不足が慢性疲労症候群につながるのはなぜか、なぜ不登校、心の問題とみなされてしまうのか、という点を考えます。

自分ではどうにもできない

睡眠相後退症候群の最も悲劇的な面は、「早寝早起き」は自分の努力でなんとかなる、と思われているところです。

そのため、睡眠相後退症候群の患者は、自責の念にかられて、あるいは家族や周囲の人に叱咤激励されて、なんとか朝起きようとするのですが、決してうまくいきません。結果として、自分はダメな人間なんだ、意志力が弱いのだ、と考えるようになります。

しかし睡眠相後退症候群とはそもそもそういう病気であり、すでに触れたように難治性疾患なのです。不登校外来―眠育から不登校病態を理解するにはこう書かれています。

何とか朝の活動時間に起床しようとしていることもあるが、このような場合は微熱、あちこちの痛み、不定愁訴等の訴えが多く、エネルギーが枯渇した状態に気合を入れ、鞭打って、何とか社会生活を持続させようとする、健気で涙ぐましい、実りのない戦いを続けている人たちである。(p28)

検査で見られる異常

睡眠相後退症候群の患者は、さまざまな検査でも異常が見られ、睡眠の質が悪いことが示唆されています。不登校外来―眠育から不登校病態を理解するや、専門家の見解を参考にまとめてみましょう。(p27)

1.睡眠中の脳温(深部体温)の上昇がみられる
…通常眠るときには深部体温が下がりますが、DSPSの患者はそうなりません。睡眠中にエネルギーが大量に消費されている可能性が示唆されています。メラトニン研究の最近の進歩によれば、DSPSの人の深部体温が最も下がり、眠りが深くなるのは、睡眠時間の中ほど、つまり本来朝起きるべき時間であるそうです。

2.レム睡眠出現が遅い
…睡眠リズムに問題があり、成長ホルモンの分泌に異常が出ている可能性があります。

3.睡眠中の自律神経機能が圧倒的に交感神経優位
…体を休ませるための自律神経である副交感神経の働きが弱く、健康な人に比べると3分の2程度の働きしかできていないことがわかっています。そのために眠りが浅く、長時間寝ることでカバーしようとして過眠が出ているのかもしれません。

4.ホルモン分泌のリズムがおかしい
…夜に眠りのホルモンであるメラトニンが出ないために眠くならず、朝に抗ストレスホルモンのコルチゾールが出ないために起きられないことがわかっています。このコルチゾールは、後に述べますが副腎の疲労とも関係しています。

5.脳波の異常
…睡眠中に、気づかないレベルの中途覚醒が100回、200回と頻発している人が多いことがわかってきたそうです。健康な人の場合は10回程度しか起こりません。脳の働きになんらかの異常が生じていると考えられています。

体内時計の異常は現在のところ、こうした深部体温のリズム、ホルモンの分泌リズムなどを調べるしかなく、気軽に検査することはできません。しかし、もっと皮膚や毛髪や血液を用いた簡便な検査方法が続々と開発されており、数年以内に実用化される可能性もあります。

体内時計の周期を皮膚で測定できるように。24時間30分より長いと夜型に
生まれつきの夜型・朝型や概日リズム睡眠障害が検査でわかるそうです。
よくある誤解
睡眠相後退症候群はもっと軽いほかの症状と誤解されることがあります。

1  時差ボケではない
よくある誤解として、睡眠相後退症候群を含めた概日リズム睡眠障害は、単なる「時差ボケ」(時差症候群)と比較されることがあります。

確かに両者にはメカニズム的に似ているところがあり、睡眠相後退症候群も時差ボケも同じ概日リズム睡眠障害の一種です。しかしその深刻さは桁違いです。

両者の違いについて、フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害には、以下のような違いが挙げられています。

睡眠時間
…時差ボケは短い。睡眠相後退症候群は長い(10時間以上)

一日の体温・ホルモンのリズム
…時差ボケはすぐ現地時間に調整される。睡眠相後退症候群は乱れていて治らない

朝起きできない昼夜逆転「概日リズム睡眠障害」を治すには
どうしても昼夜逆転が治らない。朝起きられず学校や会社に行けない。そんな症状は概日リズム睡眠障害の睡眠相後退症候群(DSPS)かもしれません。この記事では発症メカニズムから治療法まで

 2  思春期の夜型生活ではない
これもよく誤解される点ですが、睡眠相後退症候群は、単なる思春期の夜型生活ではありません。

生物時計の研究の専門家、ラッセル・フォスターによると、思春期には体内時計が約2時間遅れます。この状態は女子では19.5歳まで、男子では21歳まで続きます。ホルモンの影響が関係しているとされています。

思春期の子どもは、夜型になり、朝起きるのが苦手になるため、いくつかの学校では授業の開始を朝10時に遅らせるという取り組みが始まっているそうです。

時間生物学によると学校の始業は10時にすべきかもしれない
ラッセル・フォスターによると思春期の体内時計は2時間遅れているそうです。
起立性調節障害との関わり
睡眠相後退症候群は、思春期の子どもに発症しやすく、朝起きられず、不登校の原因になるという点では、起立性調節障害(OD)と関連している部分があります。

起立性調節障害とは、自律神経が乱れて、朝起きられなくなったり、立ちくらみが生じたりする思春期特有の病気です。

朝起きられず、夜眠れない、という症状はケースバイケースで、起立性調節障害が原因となって朝起きられなくなっている場合もあれば、逆に睡眠相後退症候群のため自律神経のバランスがくずれている場合もあります。

どちらの病名で治療するのがふさわしいかは、それぞれの病気の解説を見て、調べてみる必要があります。

朝起きられず学校に行けない子の「起立性調節障害(OD)」とは? よくある誤解と正しい対処法
朝、起きられない。目覚めても顔色が悪くぼーっとしている。起き上がろうとするとフラフラする。日中はだるいが、夕方からは元気になる。思春期の子供に発症しやすい疾患、起立性調節障害(OD

 

第三章 睡眠相後退症候群の原因

睡眠相後退症候群は、ある日突然、どこからともなく発症するのではありません。睡眠相後退症候群は、人間の体に備わる、体内時計(生体時計、生物時計)の故障によって生じます。

この体内時計の中枢は、脳の視床下部の視交叉上核という場所に存在しています。その部分は、中枢時計と呼ばれていて、体の各部の細胞に存在する抹消時計をコントロールしています。

中枢時計はコントロールタワーの役割を担っているだけあって、基本的に頑強で、あまり混乱することがないことが知られています。たとえば、外国に旅行して時差ボケになったとしても、すぐに現地時間に合わせることができます。

ところが、睡眠相後退症候群を含めた概日リズム睡眠障害の患者は、時差ボケのように自然に治るということはありません。頑強なはずの体内時計が故障してしまっているのです。

これは、体内時計の中枢が存在する、脳の視床下部に強いストレスがかかったためであると考えられています。どんなストレスが体内時計を故障させるのでしょうか。

体内時計を狂わせるストレス

生体時計を狂わせるストレスとして多く見られる共通原因とされるものが3つあります。この3つはたいてい長期間続いており、それだけ脳機能に強い負担をかけています。

1.夜型生活による睡眠不足
…家族の生活習慣、インターネット、多忙などによるめ夜ふかしで、十分な睡眠を取らないこと

2.過労
…休養を無視した情報過多社会での緊張を伴う頑張り。塾や部活、習い事などを含む

3.抑圧された感情
協調性重視のもとで、自己抑制を強いて、周囲の人々の顔色を見ながら生活する

これら3つの基板となるストレスのもとで脳に負担がかかっているときに、次の7つの追加ストレスがかかったことをきっかけに、概日リズム睡眠障害を発症するケースが多いようです。こちらの7つはあくまで「引き金」であり、「原因」ではありません。

1.重圧となる責任添加 (キャプテン・代表に選ばれるなど)
2.家庭環境 (両親の離婚、家族の重い病気など)
3.人間関係のトラブル (いじめなど)
4.交通事故・自然災害への遭遇
5.移転(転校)
6.食事の時間がばらばら
7.発熱を伴う感染症での消耗

こうしたストレスがかかることで、脳の興奮性があがり、不安や緊張が持続することになります。すると、眠りの質が低下し、脳の視床下部の休養が不十分になります。

やがて、さまざまな自律神経症状などの不定愁訴が、体のアラーム、警告として生じ、体調不良に悩まされます。同時に視床下部が疲れ果てているため、コントロールが利かなくなり、概日リズム睡眠障害が現れるのです。

では次に、睡眠相後退症候群の具体的な発症パターンを見てみましょう。

睡眠不足症候群(BIISS)がすべての原因だった!

睡眠相後退症候群をはじめとした概日リズム睡眠障害の共通原因の一番目は、前述のように「夜型生活による睡眠不足」でした。

たかが睡眠不足、と思うかもしれませんが、睡眠不足は正式名を睡眠不足症候群(behaviorally induced insufficient sleep syndrome;BIISS)といい、30年ほど前に国際睡眠障害分類に追加されたれっきとした睡眠異常なのです。

この症候群の特徴的な症状は

1.しばしば日中に居眠りする
2.集中力低下に伴う、成績・業績の悪化
3.対人関係の悪化(キレやすく被害者意識が強くなる)
4.交通事故に遭遇しやすくなる
5.頭痛・腹痛をはじめとした自律神経関係の不定愁訴が出現

というものです。今でこそ、睡眠不足症候群は社会全体に蔓延するようになりましたが、一昔前は異常なものとして認識されていたということです。2007年の睡眠不足症候群に関する調査によると、日本人の成人の30%弱が睡眠時間が6時間以下で、4人に1人が、睡眠不足を実感していました。

睡眠不足症候群が睡眠相後退症候群に悪化する

睡眠不足症候群はどのようにして、睡眠相後退症候群を引き起こすのでしょうか。

睡眠不足状態の脳は、はじめのうちは、興奮して普通以上に活発に働き、起きている間もエネルギーを作り、必死で脳の機能を守り続けます。そのため、一時的には、学校の成績や会社の業績が上がることもあります。

しかし睡眠欠乏状態が長く続くと話は変わってきます。それまで量産されてきミトコンドリアのエネルギー生産がストップし、チトクローム酵素が減少してきます。脱共益タンパクと呼ばれる物質が、エネルギー生産を低下させ、代わりに熱が産生させるのです。

すると、とても奇妙なことが起こります。今まで長い間、一日に数時間しか寝なかったのが、突然、10時間以上寝ないと起きられなくなります。なんとか頑張って学校や会社に出かけていたのが、どうしても朝起き上がることができない、という事態が生じます。

やっと起きられるのは昼頃であり、極めて強い倦怠感で、ずっとごろごろする以外に何もできず、意欲は消失し、日常生活が不可能になるのです。これは次のように例えられています。

それまで、両手で鉄棒にぶら下がって鉄棒の上に上がろうとしていた子どもたちが次第に耐えきれず、片方の腕だけになり、指一本になり、ついには転落した状態に似ている。

指一本でもぶら下がっている状態と、鉄棒から落ちてしまった状態では、“天と地”程の差である。指一本でもつかまっている間に助け上げなければならないのである。

落ちた状態から再び鉄棒に飛びつく力を蓄えるためには、数年という長い年月を要することになる。

この状態の過眠(10時間睡眠)の多くは、睡眠相後退型で、睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome:DSPS)と呼ばれる難治性の睡眠障害であり、日常生活を不可能にする究極の睡眠障害である。(p27)

遺伝的素因

体内時計の謎に迫る ~体を守る生体のリズム~という本によると、睡眠相後退症候群の中には、遺伝子異常が関わっているものがあることがわかってきました。時計遺伝子per3の47番目のバリン残基がグリシン残基に置き換わっている遺伝子多型が見られるそうです。

とはいえ、国立精神神経センターによる調査では、遺伝的素因より環境要因が大きい可能性も示唆されています。

睡眠相後退型182名・非24時間型67名の概日リズム睡眠障害の患者と、健常者925名を対象に、7種類の時計遺伝子多型を調べたところ、非24時間型患者には時計遺伝子PER3遺伝子多型rs228697のマイナーアリルGが有意に多いことが分かったそうです

しかし睡眠相後退型の患者は、健常者とあまり変わらない数値でした。このことからすると、非24時間型は遺伝的素因が強いのに対し、睡眠相後退症候群の患者は、環境要因によるストレスが中心となって、体内時計が混乱しているのかもしれません。

非24時間型睡眠覚醒症候群(フリーラン型)に関係する遺伝子PER3が見つかる
時計遺伝子PER3の違いが概日リズム睡眠障害の発症や夜型指向性に関連していることが明らかになったそうです。

生まれつきの発達障害

さらに、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)や、ADHD(注意欠如多動症)などの、生まれつきの脳の発達障害は、睡眠リズムが乱れやすいリスクになると言われています。

睡眠異常と発達障害の関係は実に根深いと言われており、乳幼児のころの睡眠障害が発達障害傾向を悪化させるという見解もあります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

子どもの睡眠と発達医療センター、睡眠障害で入院する子どもの2/3が自閉スペクトラム症
睡眠障害で入院する子どもの2/3が発達障害、1/4が糖尿病予備群だそうです。

なぜADHDの人は寝つきが悪いのか―夜疲れていても眠れない概日リズム睡眠障害になるわけ
ADHD(注意欠如多動症)の人は、疲れているのに夜寝つけない、ついつい夜更かししてしまうなどの睡眠リズム異常を抱えやすいといわれています。その原因が意志の弱さではなく、脳の前頭葉な
日本人は子どもも大人も世界一睡眠不足!
1960年から1961年のNHKの調査によると、日本人の成人の平均睡眠時間は約8時間13分でした。入眠時間は夜9-10時、起床時間は5-6時と言われています。そのころ、概日リズム睡眠障害や睡眠相後退症候群が、社会問題になることはありませんでした。

ところが、その後、社会は大きく様変わりしました。情報過多社会が到来し、24時間ずっと仕事が行われることも増えました。インターネットや通信技術の発達は、眠る時間を犠牲にした経済活動を発展させました。

日本人の平均睡眠時間は、子どもとねむり 乳幼児編―良質の睡眠が発達障害を予防するという本によると、1995年の調査では7時間32分になっていました。(p15)

最近の睡眠時間の国別ランキング - 最も寝ていない国は?という記事によると、経済協力開発機構(OECD)の2010年の調査では平均睡眠時間は平日7時間14分でした。日本人の睡眠時間は、1年に1分の速度で短縮していると言われています。

こうした睡眠不足は、大人に影響を及ぼすだけでなく、大人の夜型社会に付き合わされる子供にも影響を与えます。日本の子どもの睡眠時間は世界一短く、例えばニュージーランドの子どもと比べると、毎晩2時間も睡眠が短いのです。

2013年の調査によると、学生の睡眠時間は、中学1年生が7時間34分、高校1年では6時間46分、高校3年生では6時間7分だったそうです。中学、高校生では、少なくとも8時間前後の睡眠が必要だとする研究もあるので、学生が慢性的な睡眠不足にあることが窺えます。

脳の発達期にこれほど睡眠時間が短いと、いろいろな脳機能の問題が生じやすくなると言われています。うつや発達障害の増加は睡眠不足に陥っている先進国(日本や韓国)で顕著なので、社会全体の睡眠不足と密接に関連していると考える専門家もいます。

発達障害や慢性疲労症候群と関わる「子どもの夜ふかし脳への脅威」
昨日発刊された三池輝久先生の新刊「子どもの夜ふかし 脳への脅威 」を読みました。慢性的な睡眠不足と発達障害、慢性疲労症候群はどのようにかかわっているのでしょうか。

 

たった一週間の睡眠不足が遺伝子を狂わせる
イギリスのサリー大学の研究チームによると、たった一週間、6時間以下の睡眠で過ごし、最後に一日徹夜しただけで炎症や免疫系、代謝、ストレス反応に関連する711の遺伝子の活動が影響を受けました。これはヒトの遺伝子数約2万3000個の3.1%にあたります。

結果として遺伝子レベルで概日リズム(サーカディアンリズム)が不規則になったり、遺伝子の約24時間周期の振動の幅が収縮したりしました。さらに40時間の徹夜では、十分に眠っていた人たちの7倍の影響を受けたそうです。

わずか1週間、睡眠を規制しただけで、遺伝子活動に影響があるとなると、慢性的睡眠不足の人のダメージは計り知れない。

実際に新しい細胞や組織を補充し、置き換えることができなければ、変性疾患につながる。

とまで言われています。このような結果として現れる一つの難治性疾患が睡眠相後退症候群だということもできるでしょう。

たった1週間の睡眠不足が711個の遺伝子を狂わせる―英国サリー大学の研究結果
たった一週間の睡眠不足であっても、遺伝子に悪影響を及ぼし得るという研究結果が発表されていました。

 

第四章 睡眠相後退症候群の治療法

 睡眠相後退症候群の場合は、普通の睡眠障害(不眠など)とは異なる治療が必要です。この記事の情報は専門家による資料を参考にしていますが、個々の人の病態は異なるので、必ず主治医の判断に従うようにしてください。

通常の睡眠薬は効かない―正しい薬物療法

生物時計はなぜリズムを刻むのかによると、睡眠相後退症候群の専門家、ウィリアム・デメントはこう述べています。

就寝のタイミングを前進させようとして早くベッドに入ったり、友人や家族に朝起こしてもらったり、リラクセーション法や睡眠薬を用いたりしてみても、効果は長続きしない。通常の容量の睡眠薬を用いても、入眠効果はほとんどあるいはまったくないことが多い。(p271)

 概日リズム睡眠障害の専門家、内山真先生も、睡眠障害の対応と治療ガイドラインの中で、DSPSは、一般のベンゾジアゼピン系睡眠薬がほとんど効かないとも述べています。

ベンゾジアゼピン系の薬は、長期間服用していると、視床の働きが鈍くなり、眼瞼けいれんアルツハイマー病などのリスクがあることが知られています。依存や強い副作用のリスクもあり、減薬するための手順などを記した「アシュトンマニュアル」の日本語が公開されているほどです。

ベンゾジアゼピン系の薬の効果が薄いからといって服用量を増やしたり、漫然と服用し続けたりすることは、概日リズム睡眠障害の患者にとって危険かもしれません。

一方で、概日リズム睡眠障害には、その病態に沿った薬物療法が行われているそうです。

(1)メラトニン
メラトニンは、今でこそよく知られているサプリメントですが、もともとは子どもの不登校を解決すべく、メラトニン研究会を中心に日本で使われ始めたという歴史があります

日本臨牀 2007年 06月号 [雑誌]には、こう書かれています。

比較的、早期発症で軽症の場合、メラトニン治療が奏功する。(p1131)

概日リズム睡眠障害の治療にメラトニンを使う場合は、希望する就寝時刻の1-2時間以上前に服用します。(後述の粂先生の資料では4-6時間前となっています)。「いつも寝ている時刻」ではなく、「希望する就寝時刻」であることに注意してください。

「メラトニン研究の最近の進歩」は不登校から始まった―夜更かし朝寝坊を治療するポイント
小児慢性疲労症候群(CCFS)の治療を受けていると、必ず名前を効くことになる薬(サプリメント)のひとつがメラトニンです。書籍「メラトニン研究の最近の進歩」から、メラトニンの歴史や効

また、最近、概日リズムを整える新しい薬として、メラトニン受容体作動薬ロゼレムが発売されました。メラトニンの受容体を刺激して、メラトニンの効果を高めることにより、体内時計に働きかける薬です。こちらも効果はそれほど強くありませんが、睡眠リズムを改善する助けになるかもしれません。

睡眠のリズムを整える新しいタイプの薬「メラトニン受容体作動薬」ロゼレムとは?
体内時計のリズムを治療するメラトニン受容体作動薬ロゼレムについての記事が掲載されました。

(2)高血圧の薬クロニジン

高血圧の薬であるカタプレス(クロニジン)はα2アドレナリン受容体作動薬で、脳の興奮を鎮める作用があります。不登校の子どもの概日リズム睡眠障害では効果を挙げている薬で、ほかにも、被虐待児の脳の興奮をとって眠りにつかせる時などにも使われているようです。

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するのp87には、こうあります。

入眠に関してはできればメラトニンと降圧薬(クロニジン)を試み、血圧の問題がある場合、あるいは効果が得られない場合に睡眠薬を用いる。

また、クロニジンで入眠を確保できたら、次に中途覚醒を防ぐために、アレルギーの薬である抗ヒスタミン薬を用います。

睡眠持続にはできるだけ抗ヒスタミン薬を使用するが、効果が得られなければ睡眠薬を用いる。中途覚醒のリズムはなかなか解決できないこともあり、さらなる薬剤の模索が必要なこともある。

さらに、クロニジンと似ている高血圧の薬インデラル(プロプラノロール)は、交感神経β受容体遮断薬と呼ばれる薬で、交感神経を抑制し、脳の興奮を抑える作用があります。

プロプラノロール(β遮断薬:1-2錠)は脈拍数が多く喘息の既往がない例(喘息をもつ症例では使用できない)には睡眠質を向上させる意味で有効性が高いように思われる。

そのほか少量の抗精神病薬が睡眠質を向上させることがあるそうです。

また、ハロペリドールやリスペリドンの少量を睡眠前に用いると睡眠質が向上するとの報告がある。筆者らもしばしば用いているが、ある程度の効果が期待できる。使用量はいずれも0.5-1mg程度である。

いずれにしても、一般に言われる睡眠薬とは異なる薬が用いられていることがわかります。概日リズム睡眠障害は、単なる不眠や精神疾患の専門家ではなく、それ相応の経験をもった臨床医のもとで治療を受けるのがふさわしいと思われます。

最近、マウスの脳内の体内時計の一部機能を止めて、時差ぼけを解消させることに京都大薬学研究科の岡村均教授と山口賀章助教らのグループが成功したというニュースもありました。概日リズム睡眠障害を改善させる薬物療法が、今後こうした研究から開発される可能性があります。

早起きしてはいけない―正しい時間治療

日本臨牀 2007年 06月号 [雑誌]には、こう警告されています。

無理をして社会のリズムに合わせようとすると、逆に大きく睡眠のリズムを乱すこともあり、このように社会に適応できない状態が続くと、二次的に抑うつ状態となることもある。(p1131)

不登校外来―眠育から不登校病態を理解するにもこうあります。

生体リズムの回復を試みるとき、多くは朝起きできない子どもたちを無理にでも早起きさせる傾向が強い。早く目を覚ますことで早寝につなげたい意図としては理解できなくもないが、無理に朝起きを強制することは絶対にやってはいけないこととして理解していただきたい。繰り返すが、一般常識化している“早朝に起こすこと”は“禁忌”である。(p85)

なぜ早起きしてはいけないのでしょうか。概日リズム睡眠障害の専門家粂和彦先生は、良い睡眠リズムの整え方(v 1.1)~睡眠相後退症候群の治療法という資料の中でこう述べています。

脳の時計は、朝の光で早まる。夜の光で、遅れる。しかし、この「朝」「夜」は、その人の脳の中の時計にとっての「朝」「夜」であり、現実の「朝」「夜」のことではない。

たとえば、脳の時計が5時間ずれている人の場合には、普通の人にとっては朝である午前7時が、深夜の午前2時に対応するので、無理して午前6時に起きると、ますます夜型がひどくなる。つまり、「早起きしてはいけない」。 ある一定以上、夜型が進んでしまうと、早起きすることが逆効果になってしまい、どんどん悪循環に陥る。

そのため、睡眠相を自分でずらすためには、一週間に一時間ずつしか不可能であると述べています。具体的には次のように実践します。

(1)必要な睡眠時間を調べる
まず、 3日間~14日程度、学校も会社も完全に休み、眠れる時間に眠って、起きられる時間に起き、睡眠記録をつける。それによって、何も努力していないときの自分の睡眠リズムを知る。本当に必要な睡眠時間がどれだけかがデータとして出てくる。

(2)一週間に一時間ずつ早める
さきほどのデータでわかった必要な睡眠時間を確保しながら、一週間に一時間ずつ、睡眠時間を早める。寝る直前の時間帯は「睡眠禁止帯」と呼ばれ、入眠できないので、寝る時間は早められない。起きる時間を早めるしかないが、1時間以上以上起きる時間を早めると、睡眠不足になってしまい、概日リズム睡眠障害が悪化する。

(3)早起きしてはいけない
1週間で1時間早めることができ、生活が安定していれば、次の週にさらに一時間早める。目標時刻よりも3時間以上早く起きてしまうと、脳の中の時計が、かえって遅れてしまう。その
ため、時々、学校や会社に行きながら体内時計を直すのは不可能である。また、無理をして徹夜するのは、絶対にやってはいけない。

もちろん、夜はスマホやパソコンを見ない、朝起きたら光に当たり、運動する。ブルーライトカットの対策をする、といった点も重要です。

詳しくは、以下の資料をご自分でお読みください。

良い睡眠リズムの整え方(v 1.1)~睡眠相後退症候群の治療法~ │粂 和彦のサイト:K-net.org はてなブックマーク - 粂 和彦のサイト:K-net.org

高照度光療法と和温療法

特殊な入院施設で行われている治療法としては、高照度光療法と和温療法があります。不登校外来―眠育から不登校病態を理解するにはこうあります。

高照度光治療は概日リズム睡眠障害による不登校状態の根本治療に迫る数少ない治療法といえるものであり、今後の発展が期待される。

…実際問題としては市販されている治療器で行える治療に限界があることはやむをえない。枕元に置いて光を見つめる行為は睡眠相後退症候群などの病態の最中では極めて困難なことであり、起きることそのものが不可能である場合が珍しくない。

…したがって眠っている間にも光が瞼を通して差し込む環境が必要である。

筆者らは後で述べる24時間コンピュータ制御により光の照度や色調を変化させた高照度光療法室で(光は強い振動体である)対応してきており、80%程度の高い改善率を得ている。(p90)

別冊「医学のあゆみ」最新・疲労の科学 日本発:抗疲労・抗過労への提言によると、この治療率の内訳はこうなっています。

百数十名の治療結果として睡眠障害への有効率はほぼ70-80%と好成績を残し、疲労の度合いに対する改善率は著効50%、有効40%とこれもこれまでの治療成績に比べて明確に有効性が高いことを証明した。しかし、再発例も少なくなく、これからの光治療のあり方もまだ検討の余地が大きい。(p127)

最近のニュースでは、高照度光療法に運動療法を加えると、より効果があるということが報告されています。

強い光を浴びながら運動すると体内時計が早く調節される。北大の本間研一教授の研究
明るい光を浴びながら運動すると、体内時計が正しく調節されるのが早くなるという研究結果がありました。

近年では、高照度光療法ができるゴーグル型のウェアラブルデバイスも製品化されています。

「高照度光療法」は自宅でも可能? 睡眠障害や小児慢性疲労症候群(CCFS)の治療法
ゴーグル型の高照度光療法器の開発が進められているというニュースに基づき、CCFSと光治療について書いています。

もう一つ、和温療法は、鹿児島大学医学部循環器内科の鄭忠和教授によって開発された治療法で、重症心不全患者が抱える、自律神経機能のアンバランスによる抹消循環不全を改善させ、睡眠などのQOLを上げた効果で知られています。

和温療法は、「室内を均等の60℃に設定した遠赤外線乾式サウナ室で全身を15分間温めて、サウナ出浴後さらに30分間の安静保温を追加して、最後に発汗に見合う水分を補給する治療法」です。

概日リズム睡眠障害の患者は、前述のように、深部体温が下がらず、体の中に熱がこもっている状態と考えられますが、和温療法により、末梢循環機能を改善させ、体温を下げて睡眠の質をよくする効果が期待されています。

低温サウナ療法(和温療法)が子どもの慢性疲労症候群(CCFS)に効果的
近年注目されている低温サウナ療法と慢性疲労症候群(CFS)や化学物質過敏症(MCS)との関わりについてまとめています。

 副腎疲労をケアする

睡眠相後退症候群の患者の中には、抗ストレスホルモンのコルチゾールの分泌リズムが変わるだけでなく、分泌量が低下している人もいるようです。その場合は、コルチゾールを生み出す臓器である、副腎が疲弊しているのかもしれません。コルチゾールが少ないと、たとえ睡眠リズムを戻しても、朝起きることはできないでしょぅ。

さまざまなストレスによって副腎が疲弊すると、慢性的な疲労感や、朝起きられない、頭にもやがかかったようですっきりしない(ブレイン・フォグ)といった症状が表れます。これらの症状は、ジェームズ・L・ウィルソン博士によって、副腎疲労(アドレナルファティーグ)と名づけられました。

アドレナルファティーグを解消するためには、副腎に負担をかけないような生活習慣が必要です。しつこい疲れは副腎疲労が原因だった ストレスに勝つホルモンのつくりかた (祥伝社黄金文庫)には、たとえば以下のようなアドバイスが書かれています。

■朝はゆっくり寝る
■起き抜けにコップ一杯の塩水を飲む
■メラトニンの分泌を妨げないよう、夜はパソコンを見ず、間接照明にする
■精製された穀物や砂糖を避ける
■タンパク質、野菜、果物を豊富に摂る
■グルテンフリー、カゼインフリーの食事を試してみる
■トランス脂肪酸の油(揚げ物やマーガリン)を避ける
■ビタミンB群を補給する

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

いつも疲れ果ている人の「アドレナル・ファティーグ」(副腎疲労)とは何か―原因と対処法まとめ
いつも疲れきっていて疲れが取れない。朝起きられない。その原因はアドレナル・ファティーグ(副腎疲労)にあるかもしれません。医者も知らないアドレナル・ファティーグ―疲労ストレスは撃退で

カフェインは役に立つか?

最近の研究によると、コーヒーなどに含まれるカフェインは、単に目を冴えさせるだけでなく、体内時計の概日リズムに作用することが確認されています。

夜のコーヒーに体内時計乱す作用、米研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News はてなブックマーク - 夜のコーヒーに体内時計乱す作用、米研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

そのため、夜寝る前に飲んだりするのはご法度ですが、適切な時間に飲めば、体内時計のリセットに役立つかもしれません。

しかし、ニュースの中で専門家は、「最も効果的な利用方法を決定するには、さらなる研究を重ねる必要がある」としています。

おわりに 睡眠相後退症候群を克服する

睡眠相後退症候群をはじめとする概日リズム睡眠障害は、最初に述べたように、不登校や引きこもりの主要な原因であり、社会問題ともなっています。初期のうちに治療すれば回復しやすいようですが、慢性化してしてしまうと治療が困難です。

特に慢性疲労症候群に発展した場合は、たとえ治ったとしても、10時間以上に過眠や、疲れやすい易疲労性が、後遺症として残りやすいとも言われています。

そうならないために、概日リズムに発展する前の睡眠不足症候群(BIISS)のうちに気づいてケアすることが大切です。発症した場合も、無理やり早起きをするなど、悪化につながる要素を避け、正しい治療法に沿ったケアをすることが不可欠です。

睡眠相後退症候群は「難治性」と言われている通り、簡単に治療できるものではありませんが、不治の病ではありません。この記事の情報や、ふさわしい医療機関での治療によって、少しでも改善される人が増えることを祈っています。

付録: 参考情報

▼概日リズム睡眠障害について説明した本
不登校外来―眠育から不登校病態を理解する…不登校と概日リズム睡眠障害の関わりについて説明した子どもの睡眠と発達医療センターによる本

フクロウ症候群を克服する―不登校児の生体リズム障害…同著者による、概日リズム睡眠障害の三池輝久先生の解説書

「夜ふかし」の脳科学―子どもの心と体を壊すもの (中公新書ラクレ)…内的脱同調による子どもの不調について書かれた神山潤先生の本

睡眠障害の対応と治療ガイドライン…内山真先生による睡眠障害全般の解説書。概日リズム睡眠障害の項があります。

▼医療機関
ドクターズガイドによる概日リズム睡眠障害の推奨医師のリスト

病気ごとの関連情報 | 名医を探すドクターズガイド はてなブックマーク - 病気ごとの関連情報 | 名医を探すドクターズガイド

この記事で取り上げた子どもの睡眠と発達医療センターによる概日リズム睡眠障害の解説

子どもの睡眠と発達医療センター | 兵庫県立リハビリテーション中央病院 はてなブックマーク - 子どもの睡眠と発達医療センター | 兵庫県立リハビリテーション中央病院

文中で取り上げた山寺先生のクリニック

やまでらクリニック,三鷹,武蔵野市,心療内科,精神科,不眠症,睡眠障害,神経症,うつ病,漢方薬,認知行動療法 はてなブックマーク - やまでらクリニック,三鷹,武蔵野市,心療内科,精神科,不眠症,睡眠障害,神経症,うつ病,漢方薬,認知行動療法

文中で取り上げた国立精神神経センターの三島和夫先生による研究の解説

第5回 世界初!睡眠・覚醒リズム障害の原因を解明 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト はてなブックマーク - 第5回 世界初!睡眠・覚醒リズム障害の原因を解明 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト

▼メディアでの扱い
概日リズム睡眠障害はNHKで何度か扱われています。

【まとめ】リハビリケア新時代 脳からの挑戦3 子どもの脳からのSOS(小児慢性疲労症候群)
NHKハートネットTV 「リハビリ・ケア新時代 脳からの挑戦」。第三回は、兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センターによる、子どもの睡眠障害の治療についての
【クローズアップ現代 まとめ】「不登校12万人のかげで ~広がる子どもの睡眠障害~」
2015/01/08に放送されたNHKクローズアップ現代「不登校12万人のかげで ~広がる子どもの睡眠障害~」のまとめです。子どもの概日リズム睡眠障害に関する、兵庫県立リハビリテー

▼このブログの参考情報
睡眠相後退症候群に関するまとめ (こちらの記事と類似とした内容です)

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概日リズム睡眠障害