【Q&A】実はあなたにも身近な「解離」とは何なのかを知るまとめ・参考資料集

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のブログでは「解離」という現象についてさまざまな観点から扱ってきました。

「解離」というと、自分には関係ない特殊な現象だと考えている人が多いのではないかと思いますが、決してそうではありません。

「解離」はトラウマ被害者だけに関わる現象ではなく、わたしたち人間、それどころかほとんどの動物が経験する、とても普遍的な生物学的現象です。

トラウマ経験に限らず、ストレスの多い環境のせいであれ、はたまた身体的疾患や交通事故の後遺症のせいであれ、感覚刺激が過剰になる人はだれでも「解離」を頻繁に経験しています。

解離という概念を知らなければ説明しようがない現象はとても多くあります。特に発達障害やアダルトチルドレンの当事者が解離という概念について知らずにいるのはもったいないと思います。

この記事では、ブログで扱ってきた「解離」についての話題を、Q&A形式に整理して、参考資料をまとめました。より詳しい記事に飛べるリンク集にもなっています。

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カウンセリングではトラウマを治療できないのはなぜか―物語ではなく経験が必要な理由

セラピストは、話すことにはトラウマを解決する力があると考え、その力に絶対的な信頼を置いている。…残念ながら、事はそれほど単純ではない。(p379)

私たちの研究における最も重要な発見は、次の事実かもしれない。

1893年のブロイアーとフロイトの主張とは裏腹に、トラウマを、それと結びついた感情のいっさいとともに思い出しても、必ずしもトラウマは解消しないのだ。

私たちの研究は、言語が行動の代わりになりうるという考え方を支持しなかった。(p321)

代のトラウマ研究の第一人者である、ベッセル・ヴァン・デア・コークが、身体はトラウマを記録するーー脳・心・体のつながりと回復のための手法の中で書いているこの説明は、いささか衝撃的かもしれません。

専門家も当事者も含め、これまで多くの人は、トラウマとは「心の傷」であり、傾聴によるカウンセリングや、認知行動療法のような、対話を軸とした治療が役立つと教えられてきました。

確かにカウンセリングを受けると、いくらか気分が楽になるかもしれません。しかし会話を中心としたセラピーには限界があり、ときには症状を悪化させることもあります。

この記事では、なぜ言葉を用いたセラピーではトラウマ症状をうまく治療できず、「トラウマ記憶を物語に変える」という手法では不十分なのか、近年の脳科学の発見に照らして考えたいと思います。

そして、行動や経験を重視する身体志向のセラピーになぜ効果があるのかを、意外な観点から考察してみました。

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ソマティック・エクスペリエンス(SE)を知る10ステップ―「凍りつき」を溶かすトラウマセラピー

子どもが逆境やトラウマを経験すると、闘争・逃走反応を起こすか「凍りつき」状態となり、体の感覚が鈍る。

…最も効果的な方法の一つに、身体感覚に注意を向ける「ソマティック・エクスペリエンス」というセラピーがある。(p258)

どものころに経験した逆境的体験が、生物学的な変化を脳や身体にもたらし、思春期以降、さまざまな精神的・身体的な病気を発症させていく。近年、トラウマは単なる「こころの病」ではなく、全身疾患であることが明らかにされつつあります。

ACE研究が明らかにした「小児期逆境後症候群」ーなぜ子ども時代の体験が脳の炎症や慢性疾患を引き起こすのか
17000人以上のデータから子ども時代の逆境体験と成人後の体調不良の関連性を導き出した画期的なACE研究の取り組みをもとに、幼少期の経験がわたしたちの一生にわたり、心身の健康にどん

そのことを説明した本、小児期トラウマがもたらす病 ACEの実態と対策 (フェニックスシリーズ)には幾つかの有望な治療法が紹介されていますが、そのひとつは「ソマティック・エクスペリエンス」(SE)でした。

ソマティック・エクスペリエンスとは、字義通りには「身体の経験」という意味です。ここ日本ではまだあまり知られていませんが、ヴァン・デア・コークらトラウマ研究の第一人者たちから注目され、アメリカ航空宇宙局(NASA)でも活用されているようです。

ソマティック・エクスペリエンスは、従来のカウンセリングを主体としたセラピーとはまったく異なるアプローチで「こころ」ではなく「からだ」に働きかけます。

この記事で紹介するように、もともと原因不明の慢性疲労症候群や線維筋痛症、胃腸障害、パニック障害のような症状をきっかけに考案された治療法であり、特に子ども時代の逆境体験によって、慢性的に「凍りつき」に陥っている人に効果があると考えられます。

「凍りつき」とは、どのような生物学的現象なのでしょうか。トラウマ性の身体症状にはどんなものがあるでしょうか。ソマティック・エクスペリエンスはどのようにして身体に働きかけるのでしょうか。

この記事では、ソマティック・エクスペリエンス(SE)の理論を構築したピーター・ラヴィーンの本をはじめ、さまざまな文献を参考に、SEを理解するための10のステップをまとめてみました。

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なぜデジタル機器はADHD症状を引き起こすのか―脳はテクノロジーに適応する

シカゴ美術館付属美術大学の臨床部長として、学生の心のケアにあたるマイケル・ピートラスはADHD評価の専門家でもあり、テクノロジーが作業記憶(ワーキングメモリ)や情報処理の能力に影響を及ぼしているのはまちがいないと言います。

「テクノロジーとソーシャルメディアは、これらの能力に害を及ぼす恐れがある。

その結果、ADHDによく似た状態になるか、もともと患っていた注意力の欠如が目立つようになるんです」(p64)

ジタル機器の使用がADHD症状と関係している?

数年前に初めてその話を聞いたときは驚きましたが、ADHDについて調べていくうちに、様々な要因でADHD症状が引き起こされうること、デジタル機器の使用もその要因の一つだということを知りました。

「私って大人のADHD?」と思ったら注意したいことリスト―成人ADHDの約7割は違う原因かも
大人になってからADHD症状を示す人の少なくとも7割近くは、子どものころにはADHD症状がなく、従来の意味での発達障害ではないと考えられます。近年のさまざまな研究から、大人のADH

冒頭に引用した退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放すには、その根拠となる研究の数々が載せられていました。

はじめにことわっておきますが、この記事はデジタルデバイスが脳を破壊したり、発達障害を引き起こしたりする、と主張する内容の記事ではありません。デジタルデトックスの勧めでもありません。

わたしたち人類の脳は、いつの時代もテクノロジーの進歩に適応して変化してきました。現代の急激な環境の変化に対しても、やはり脳は何かしらの変化を遂げてしかるべきでしょう。

私たちは、人類が経験したことのない転換点にいます。これほどたくさんの情報にまみれた時代はありません。

スマホとタブレットが広まったことで、モバイル端末の利用時間は1日当たり平均して2時間57分、画面に向かって過ごすのは11時間にもなります。

これが健康に悪いかどうかはまだわからないものの、テクノロジーが私たちを変えつつあるのはたしかです(そして、それがいい方向へかどうかも、まだわかりません)。(p14)

この記事で考えるのは、デジタル機器に適応した脳の働きが、時として「ADHDによく似た状態になる」ということです。その変化はあくまで環境に脳が適応した結果であって、障害ではありません。

このデジタル時代に、わたしたち人類がどのように適応してきたか、そしてそれがADHDと似た状態をもたらすのはなぜなのか、調べてみることにしましょう。

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うつ病や自殺は心の弱さではない科学的理由―ウィリアム・スタイロンの闘病記から学ぶ

鬱病は偏りなく手を伸ばして来るが、かなりの信憑性で実証されているのは、芸術家的なタイプ(とくに詩人)がとりわけその病魔に弱いということだ。

そして、この病気が深刻な臨床的表われ方をすれば、犠牲者の20パーセント以上が自殺の形をとる。このようにして倒れた芸術家たちの例を現代と近代からほんのいくつか拾うだけで、悲しくもあるが、キラ星のような名簿となる。

ハート・クレイン、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、ヴァージニア・ウルフ、アーシル・ゴーキー、チェーザレ・パヴェーゼ、ロマン・ガリ、ヴェイチェル・リンゼイ、シルヴィア・プラス、アンリ・ド・モルテルラン、マーク・ロスコ、ジョン・ベリマン、ジャック・ロンドン、アーネスト・ヘミングウェイ、ウィリアム・インジ、ディアヌ・アルビュス、タデウシュ・ボロフスキ、パウル・ツェラン、アン・セクストン、セルゲイ・エセーニン、ウラジーミル・マヤコフスキー……とリストは続く。

…このように呪われたすぐれた創造的な男女の人物を思うとき、その幼少時代に注目しないではおれない。知られているかぎりでは、病気の種が強い根をおろすのは幼少時代なのだ。(p55-57)

れは、作家ウィリアム・スタイロンの闘病記、見える暗闇―狂気についての回想に載せられているリスト、悲しいことに自殺によって命を断った作家たちのリストです。もし日本人の名前も付け加えるとしたら、芥川龍之介や太宰治、三島由紀夫などが名を連ねることでしょう。

スタイロンは、自身がうつ病を発症したことをきっかけに、自殺した作家たちの苦悩に気づくようになりました。

そして、自殺が頻繁に心の弱さと結びつけられることに当惑し、自殺という形で命を奪われた人たちの名誉のために声を上げ、うつ病の苦しみがいかに健康な人たちの想像とかけ離れた、筆舌に尽くしがたいものかを描写しました。

この記事では、スタイロンの闘病記を紹介するとともに、自殺が心の弱さの表れではないと言えるのはなぜかを考えます。

そして、今や「精神疾患」「精神病」「心の病」といった概念は完全に時代遅れであり、うつ病もまた身体疾患とみなすべきである、という近年の科学的研究を取り上げたいと思います。

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頭や内臓の異物感,手足を虫が這うような不快感の理由ー解離の体感異常を脳科学で分析する

解離のある人は、頭や体の中の異常な感覚にひどく悩まされることがあります。このような感覚の異常を「体感異常(セネストパチー)」といいます。

…感覚の異常は、主に頭部や脳、皮膚、手足の指などに感じることが多いといえます。体の深部、内臓に異常を感じることもあります。

…触覚や皮膚感覚、体内の深部感覚に違和感や異常が現れることもあります。なにかが見えるわけではなく感覚だけなのですが、その気持ちわるさや不気味な状態に本人は苦しみ、もがいています。(p30)

感覚はさまざまです。むずむず動く感じや引っ張られる感じ、つまっている感じ、かきまぜられる感じなどで、不快な感覚に悩まされます。(p31)

離の当事者は、「体感異常」(セネストパチー)と呼ばれる、奇妙で慢性的な身体の不快感や異物感に悩まされることがあります。解離は様々な慢性疾患で起こる現象ですから、解離の診断を受けていない人にも、体感異常に悩まされている人は多いでしょう。

冒頭の解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)が物語るように、体感異常はあまりに不快で、本人にとっては切実な問題です。

にもかかわらず、医者たちから、しばしば検査で異常が出ないことを理由に、「思い込み」「気のせい」「神経質」、さらには「妄想」などとみなされてきました。

わたし自身、10代のころからひどい体感異常に悩まされてきたので、前々から記事にしたいと思ってはいましたが。最近読んだ幾つかの本のおかげで、ようやく理解がまとまり形にできました。

これまで誰にも理解されない原因不明の不快感を独りで耐え忍んできた人にこそ、この記事を読んでいただければと思います。

はっきり言えるのは、間違っているのは不勉強な医療関係者のほうであり、あなたではない、ということです。どれほど奇妙に思える感覚であっても、体感異常は脳科学から説明できる現実の感覚であり、決して妄想ではありません。

周りの人たちが何と言おうと、自分は正当な苦痛を訴えてきたのだ、という自尊心を取り戻す助けになれば幸いです。

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